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第三章
01
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三年生が修学旅行から帰ってきた。
歓迎会で一年生を十人捕まえた人はいなかった。レイプもなく、未遂もなかった。…本当はあったけどね。言うと筑紫くんが心配するし、黙ってるって約束したから言えなかった。
その高倉さんが度々話しかけてくる。いつも尾崎さんと一緒だ。あの時は二人の顔をよく見てなかったけどとてもかっこいい。ワイルドな魅力で凄く人気がある。あんなことしなくても相手なんていくらでもいるだろうに…。こっそりそう聞くと「むしゃくしゃしてたんだよ…。悪かった」と謝ってくれた。
そんな高倉さんの様子はみんなの注目の的だ。昼休み筑紫くん…美都瑠と一緒に昼食を食べてる時に二人は同じテーブルに座る。美都瑠には「いつまでも余所余所しいの嫌、名前で呼んで」とお願いされた。僕も碧って呼ぶからとニッコリ微笑まれると嫌とは言えなかった。
碧空くんの隣は相変わらず桜庭さんが座ってて、他の誰も入れない。
ある時、碧空くんと牧野くんが教室でヒソヒソと話してる声が聞こえてきた。別に盗み聞きしようと思ったわけじゃないからね。教室の隅で…僕の席の近くで話してるから聞こえただけなんだ。
『姫の事、わかったのか?』
『引越ししたみたいなんだ』
『引越しか…やっと近づけたと思ったのにな…まだ、探すのか?』
『ああ…もうちょっと頑張ってみようかなと思ってる……』
後の方は聞こえなかったけど、最初の日に聞いた想いを寄せる女の子の話なのだろう。でも、桜庭さんは良いのかな?碧空くんに好きな子がいたとして学校だけの恋人ってこと?それなら高倉さんと尾崎さんの方がよっぽど誠実なように思う。そう感じるのは二人の人柄に触れるに連れてきっとあの時、強く『やめて!』と言えばやめてくれたんじゃないだろうかと思ったから。そりゃ怖い想いはしたけどさ……。
桜庭さんが可哀想。
僕は……、関係ないか……。
「ねえ、高倉さんと尾崎さんとはどこで知り合ったの?」
三年生が修学旅行から帰ってきて最初の日に二人が僕たちと同じ席で昼食を食べた時、緊張しまくりだった美都瑠が教室に入るなり聞いてきた。
「それ、俺も気になる」
牧野くん…智親くんも話に加わる。
「ほら、新歓の鬼ごっこの時、転けたって言ってたでしょ?その時にたまたま高倉さんがいて手を貸してくれたんだ」
「ふぅ~ん」
「本当かよ」
こんな嘘は直ぐに見破られてしまうだろうか?
「でもさ、あの恭さまと泰基さまだよ?」
「そうだよな」
「…さま?」
「会長の八城さまとは違う魅力で人気があるし、誰も寄せ付けないから話しかけることも出来ない」
「そうそう…去年の鬼ごっこは凄かったな」
「そうだよ!僕だって泰基さまにならあの時……」
「な、なんのこと?」
「自分を捕まえて下さいって列ができそうになった」
「それで…、生徒会がそれじゃ鬼ごっこが成立しないって二人からシールを取り上げたんだ」
「今年も、お二人には捕まえた時に一年生に渡すシールはなかったんじゃないかな」
「それで…」
むしゃくしゃしてたのはそれが原因なのかな?そんなに人気なら、きっと始まりが強引でも、襲われた子が合意ですとか言い出しそう…。僕は普通とは違う反応だったから変わった奴認定されたんだろうか?自分の魅力に靡かない数少ない貴重な存在ってことなのかな?
あの時は顔なんかちゃんと見なかった。美都瑠が心配して待ってると思ったから急いであの場から離れたけど…。中庭にいた時は落ち着いて対応出来ていたとは思うけど、体育館に着く頃には遅れてやってきた緊張が心臓をギュッと掴んでしまったような痛みがあった。冷や汗が出て、誤魔化すのが大変だった。もし、体育館で高倉さんと尾崎さんを見たら倒れてたかも…。
時間差でやってきた緊張具合を高倉さんに話すと、少し呆れてからお前やっぱり変わってるわと笑ってた。
歓迎会で一年生を十人捕まえた人はいなかった。レイプもなく、未遂もなかった。…本当はあったけどね。言うと筑紫くんが心配するし、黙ってるって約束したから言えなかった。
その高倉さんが度々話しかけてくる。いつも尾崎さんと一緒だ。あの時は二人の顔をよく見てなかったけどとてもかっこいい。ワイルドな魅力で凄く人気がある。あんなことしなくても相手なんていくらでもいるだろうに…。こっそりそう聞くと「むしゃくしゃしてたんだよ…。悪かった」と謝ってくれた。
そんな高倉さんの様子はみんなの注目の的だ。昼休み筑紫くん…美都瑠と一緒に昼食を食べてる時に二人は同じテーブルに座る。美都瑠には「いつまでも余所余所しいの嫌、名前で呼んで」とお願いされた。僕も碧って呼ぶからとニッコリ微笑まれると嫌とは言えなかった。
碧空くんの隣は相変わらず桜庭さんが座ってて、他の誰も入れない。
ある時、碧空くんと牧野くんが教室でヒソヒソと話してる声が聞こえてきた。別に盗み聞きしようと思ったわけじゃないからね。教室の隅で…僕の席の近くで話してるから聞こえただけなんだ。
『姫の事、わかったのか?』
『引越ししたみたいなんだ』
『引越しか…やっと近づけたと思ったのにな…まだ、探すのか?』
『ああ…もうちょっと頑張ってみようかなと思ってる……』
後の方は聞こえなかったけど、最初の日に聞いた想いを寄せる女の子の話なのだろう。でも、桜庭さんは良いのかな?碧空くんに好きな子がいたとして学校だけの恋人ってこと?それなら高倉さんと尾崎さんの方がよっぽど誠実なように思う。そう感じるのは二人の人柄に触れるに連れてきっとあの時、強く『やめて!』と言えばやめてくれたんじゃないだろうかと思ったから。そりゃ怖い想いはしたけどさ……。
桜庭さんが可哀想。
僕は……、関係ないか……。
「ねえ、高倉さんと尾崎さんとはどこで知り合ったの?」
三年生が修学旅行から帰ってきて最初の日に二人が僕たちと同じ席で昼食を食べた時、緊張しまくりだった美都瑠が教室に入るなり聞いてきた。
「それ、俺も気になる」
牧野くん…智親くんも話に加わる。
「ほら、新歓の鬼ごっこの時、転けたって言ってたでしょ?その時にたまたま高倉さんがいて手を貸してくれたんだ」
「ふぅ~ん」
「本当かよ」
こんな嘘は直ぐに見破られてしまうだろうか?
「でもさ、あの恭さまと泰基さまだよ?」
「そうだよな」
「…さま?」
「会長の八城さまとは違う魅力で人気があるし、誰も寄せ付けないから話しかけることも出来ない」
「そうそう…去年の鬼ごっこは凄かったな」
「そうだよ!僕だって泰基さまにならあの時……」
「な、なんのこと?」
「自分を捕まえて下さいって列ができそうになった」
「それで…、生徒会がそれじゃ鬼ごっこが成立しないって二人からシールを取り上げたんだ」
「今年も、お二人には捕まえた時に一年生に渡すシールはなかったんじゃないかな」
「それで…」
むしゃくしゃしてたのはそれが原因なのかな?そんなに人気なら、きっと始まりが強引でも、襲われた子が合意ですとか言い出しそう…。僕は普通とは違う反応だったから変わった奴認定されたんだろうか?自分の魅力に靡かない数少ない貴重な存在ってことなのかな?
あの時は顔なんかちゃんと見なかった。美都瑠が心配して待ってると思ったから急いであの場から離れたけど…。中庭にいた時は落ち着いて対応出来ていたとは思うけど、体育館に着く頃には遅れてやってきた緊張が心臓をギュッと掴んでしまったような痛みがあった。冷や汗が出て、誤魔化すのが大変だった。もし、体育館で高倉さんと尾崎さんを見たら倒れてたかも…。
時間差でやってきた緊張具合を高倉さんに話すと、少し呆れてからお前やっぱり変わってるわと笑ってた。
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