見ぃつけた。

茉莉花 香乃

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第二章

06

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気が付くと、第一校舎と第二校舎の間にある中庭の植え込みの影になってるところにいた。

見覚えのある校舎は窓が太陽の光を反射して綺麗。第一校舎の廊下の窓が所々開いて、第二校舎の教室のカーテンは全て開いて窓も開いている。今ならわかる。何かあった時声を出して助けを呼ぶためなんだ…。

さっきまで筑紫くんといた場所は体育館と第一校舎の渡り廊下だったから割と近い。あちこちに生徒がいるから遠くまで連れて行かれることはなかったみたい。

さっと場所を確認して僕が気付いたことをまだ知らない二人に悟られないように目を閉じた。

「ヤバイ、肌スベスベだぞ?」
「眼鏡取ったら顔綺麗だし、これ当たりだな」
「でもさ、二年にこんな奴いたか?」
「噂の転入生じゃねぇの?」
「ああ、寮では全然見ないから…これ、眼鏡って、顔隠してんのかな?」
「さあ?それより早くしようぜ!生徒会が見張ってるから、いつ来るかわかんねぇ」
「俺、先で良いか」

勝手なことを言ってる二人に身体を触られてて気持ち悪い。裾から手を入れられ這い回る手に吐き気がしそう。

二人の位置を確認すると一人は後ろから腕を拘束し、僕を支えるように座ってる。もう一人は今まさに僕のズボンに手をかけてベルトを外そうとしている。膝を片方立てて顔を上げさせると後ろの人に体重をかけて支えてもらい、前に蹴りを入れる。

「なっ!」

びっくりする声とバキバキと木が折れる音とどさっと後ろに倒れる音がする。支えてもらった後ろの人に肘鉄を食らわし、立ち上がる。後ろの人は顎にヒットしたみたいだ。舌噛んでないといいけどなと思いながら制服を直す。

「どうします?まだやりますか?僕、友だちが待ってるので失礼してもいいですか?」

落ちてた眼鏡を拾い掛けると乱暴にされたからか少し歪んでる。二人を見るとまさか抵抗されるとは思ってなかったのか、唖然とこちらを見る。一瞬の間の後「よくも…」と尻餅をついた前の人が立ち上がろうとする。

「止めとけ!」

後ろの人が止めた。

「こいつ、強いぞ!それにもう良いだろ?」
「強いかどうかはわかりません。喧嘩はしたことないですから。試してみます?今のはそちらの油断もありますし」
「いや、いい。良いもの、見せてもらったし…。…あのさ、ここまで連れてきてこんなこと頼めないかもだけど、黙っててくれるか?」
「それは…」
「眼鏡…それって伊達だろ?なんか秘密ある?髪も…それ…ウイッグ?」
「脅しですか?」
「まあ、そうだな。交換条件?」
「良いですよ」
「男前だな。俺、高倉きょう。こいつは尾崎泰基たいき。なにか困ったことあったら言ってこいよ。お前は…」
「ひ、あっ…安田碧です」
「?…ああ、そんな名前だったな」
「……そんな?」
「三年でも転入生の噂は回ってる」
「そうなんですか…。では」

筑紫くんが探してると悪いから急いで渡り廊下に戻ろうとすると前から牧野くんと筑紫くんがこっちに走ってくる。

「安田!大丈夫か?」
「うん、平気!」

手を振って駆け寄る。

「眼鏡が歪んでる」
「ああ、転けちゃって」

上手く誤魔化せただろうか?疑いの目を向ける牧野くんの後ろから筑紫くんが突進してきた。抱きついて今にも泣き出しそう。

「もう、探したんだよ!動かないでって言ったのに。戻ったら安田くんいないし…探してる時に智親に会って、一緒に探してもらってたんだ」
「そうなんだ。心配かけてごめんね」

その時放送が流れた。

『あと、五人です。残ってる一年生は頑張って下さい。二、三年生もさっさと捕まえて下さいね~』

矛盾することを言ってプツッと放送は切れた。

「あと少しだ。体育館の近くにいて。俺はもうちょっと見回りしてくる。本当に大丈夫なんだな?」

僕が頷くと安心したのか走って行った。筑紫くんは僕の制服の裾を掴んでる。自分が襲われたみたいに震えてる。ああ、去年のこと思い出したのかな?

「大丈夫?」
「こっちのセリフだよ」
「僕は平気って言ったでしょ?」

同じくらいの背の筑紫くんをギュッと抱きしめ背中をさする。

「ごめんね。心配かけて」
「良いんだ、無事なら」

少し堅い声で、それでも良かったと少し涙を溜めた目で見つめられた。
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