見ぃつけた。

茉莉花 香乃

文字の大きさ
上 下
15 / 45
第二章

04

しおりを挟む
元の部屋に戻ると碧空くんが待ってた。怒ったようなほっとしたような複雑な顔だった。

「帰るぞ」

ぶっきらぼうにそう言って部屋を出て行く。八城さんにお辞儀をして急いであとを追った。

「変なことされなかった?」
「えっ?変なことってどんなこと?」
「……キスとか…」

ちょっと赤くなってそんなことを言う碧空くんをマジマジ見た。なんか照れてます?可愛い…。イケメンさんに可愛いって変かもだけど、照れてる顔可愛い!

「キスなんて、されてないよ」

ほっと息を吐き咳払いをして、じっと僕を見た。本当のことを言ってるとわかったのか話題を変えた。

「話って何だったんだ?」
「えっと…」

えっと…なんて言おう?
恋人の振りをしましょうと申し込まれました。
……言えない。

「これから、この学校での楽しい過ごし方?」
「何だよ、それ?」

ほんとに、何でしょう?

「これから、新入生の歓迎行事があって、俺たち忙しいからさ…。何かあっても近くにいてやれないから…。人気のないとこに絶対行かないで」

これ紺野先生にも言われた。何故みんなそんなに心配するんだろう?僕ってそんなに頼りなく見えるのかな。迷子になんてならないよ!幼稚園児じゃないんだから!そりゃこの学校は広いし、まだ行ったことない場所もある。でも大丈夫だよ!

この一週間碧空くんが僕と一緒にいたことはなかった。でも、何度も目が合ったような気がする。直ぐに逸らされるから気のせいかと思ったけど…違ったのかな?
昼の食堂で見た時、碧空くんの隣にはいつも副会長の桜庭さんがいた。そうすると煩いハイエナのように纏わり付いてた子たちは近寄れないらしく、二人の仲は凄く親密に見えた。
そこに会長がいたり他の生徒会メンバーがいる時もあったけど副会長と碧空くんはいつも隣に座り誰にも間に入れない雰囲気があった。







今日は新入生の歓迎会がある。三年生の修学旅行が直ぐ後にあるから準備が大変なんだって、と教えてくれるのは同じクラスの筑紫ちくしくん。

筑紫くんの席が僕の席の隣で何かと構ってくれる。お昼ご飯も一緒にって誘ってくれるから紺野先生に一人で大丈夫ですと宣言していたけれど、今のところ一人で食べたことはない。牧野くんとも毎日じゃないけど一緒に食べる。
相変わらず、朝と夜は寮の自室で食べてるけど、朝は牧野くんが必ず一緒に食べてくれる。今までも、朝食は食べたり食べなかったりだったんだって。僕と一緒の朝食はいつもがっつり食べてるけどね。夜は数回一緒に食べた。噂されると僕に悪い影響があったら困るからなと心配してくれる。無理して付き合ってくれなくてもいいんだけど、そんなに可哀想に見えたのかな?

会長に散々幼稚園児扱いされたけど、牧野くんにも筑紫くんにも僕は頼りないと思われているのかもしれない。



昼食の後、体育館に全校生が集まる。
今日のメインは一年生。鬼ごっこ、するんだって。鬼ごっこなんて小学生の時にしたのが最後だ。
碧空くんが鬼の時はいつも直ぐに見つかってしまい、悔しかった。

一年生が逃げて、二、三年生が捕まえる。一年生は最後まで残った人に、二、三年生は十人捕まえた人に秘密の賞品があるらしい。何年か前までは一年生の勝者には『何でも一つ願いを叶えられる』っていう賞品・・だったんだけど、『会長の恋人にして下さい』ってお願いをした人がいたそうだ。困るよね…。会長の恋人は泣くは、その一年生は虐められるは散々な結末だったから、何でも一つのお願いはなくなったんだそうだ。賞品は知らされていないけどすっごくいい物だと思う。十人捕まえたら貰えるけど、僕には無理…。

「ルールはわかった?」

壇上で説明をしていた副会長の桜庭さんがみんなに聞いている。一年生から「はーい」と素直な声が聞こえ、二、三年生からは「桜ちゃんもう一回言って~」とふざけた声が聞こえた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

闇を照らす愛

モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。 与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。 どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。 抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

処理中です...