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第一章
04
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一人暮らしは許してもらえなかった。
そこで、転校だ。
公立には行きたくなかった。
昔の知り合いに…イジメっ子に会いたくなかった。父の知り合いが理事長をしているこの学校に入ることが決まり、寮に入ることになった。
地元だけど、公立の小学校に通ってた子がここには来ていないと思ってしまったんだ。それに、全寮制のため全国から生徒が集まり、地元とかは関係ないらしい。
後で思ったことだけど、寮に入るなら別にここじゃなくても良かったのにって。もう遅いよね…。
事情を説明して、ウィッグとコンタクトと名字を変えることを認めてもらった。トップシークレットととして理事長と校長とあと数人…担任も知ってた…しか知らされなかったらしい。
快く認めてもらえて良かった。初日に知り合いに会ってしまったのは予想外だけど、僕のことは忘れてるかもしれないし、多分問題ないだろう。
だいたい虐められた方はいつまでも覚えているけど、虐めた方は忘れてるだろう。あの髪と、瞳の色があれば直ぐに思い出すかもしれないけど、案外「やあ、久しぶり」と何事もなかったように挨拶されるかもしれない。
そんなことになれば益々傷ついちゃうよね。
覚えられてるのは嫌だけど、虐めの事実をないものにされるのも悔しい。
「えっと、じゃあ安田くん…必要な書類はこれね」
封筒を渡された。
コンコンと扉をノックする音がしてひょっこりイケメンが顔を出した。どうでも良いけど、この学校にはイケメンさんしかいないのか?背も高い。
目の前の碧空くんも今入って来たイケメンも180センチはあると思う。
僕はそんなに高くない。おばあちゃんの遺伝子を濃く受け継いだけど、170センチにあと少しってところで留まったまま、未だ成長過程です。
過程です。
伸びます。
きっと伸びます。
180センチが目標なのです。
碧空くんには負けません!
「ちょ、睨むなよ」
碧空くんは苦笑いで軽くいなす。対抗意識がムクムクと芽生え思わず睨んでしまった。
ごめんなさい。
いやいや、謝らなくても良い。僕が受けた心の傷に比べたらちょっとくらい睨んだって良いじゃないか?
どうせ迫力なんかないんだから。
「遅かったな」
「これでも急いで来たんだ」
「ほら、念願の同室者だぞ?安田くん、今入って来たのがこれから一年間寮で同室の牧野智親だ。同い年だし、同じクラスだから何か困ったことがあったら聞くと良い」
「はい。ありがとうございます。あの…もうクラスってわかってるんですか?」
僕は担任が決まってたから、きっと決まってたとは思うけど、みんなももう知っているのだろうか?
「あれ、聞いてない?ここは能力別だから。高二からこの学校に入るだけあるよ」
碧空くんが真っ直ぐ僕を見て言う。ドキドキする。あの頃よりかっこ良くなって、笑顔なんか見せないで欲しい。
僕は意地悪ばかりする碧空くんが気になって仕方なかった。転校して会えなくなると、あんなに憂鬱だったのに会いたくて仕方なかった。
あの時、二人きりで教室…らしきところにいたのはきっと、僕が一緒にいたかったんだ。自分から誘うことはなくても『来いよ』と言われれば付いていく、そして意地悪されて落ち込む。
どうして付いていくのか、その時の僕は自分の行動が理解できなかったのだろう。それがあの夢だ。嫌な記憶なのにあの夢は懐かしく、あの夢を見るのは嫌いではなかった。
そこで、転校だ。
公立には行きたくなかった。
昔の知り合いに…イジメっ子に会いたくなかった。父の知り合いが理事長をしているこの学校に入ることが決まり、寮に入ることになった。
地元だけど、公立の小学校に通ってた子がここには来ていないと思ってしまったんだ。それに、全寮制のため全国から生徒が集まり、地元とかは関係ないらしい。
後で思ったことだけど、寮に入るなら別にここじゃなくても良かったのにって。もう遅いよね…。
事情を説明して、ウィッグとコンタクトと名字を変えることを認めてもらった。トップシークレットととして理事長と校長とあと数人…担任も知ってた…しか知らされなかったらしい。
快く認めてもらえて良かった。初日に知り合いに会ってしまったのは予想外だけど、僕のことは忘れてるかもしれないし、多分問題ないだろう。
だいたい虐められた方はいつまでも覚えているけど、虐めた方は忘れてるだろう。あの髪と、瞳の色があれば直ぐに思い出すかもしれないけど、案外「やあ、久しぶり」と何事もなかったように挨拶されるかもしれない。
そんなことになれば益々傷ついちゃうよね。
覚えられてるのは嫌だけど、虐めの事実をないものにされるのも悔しい。
「えっと、じゃあ安田くん…必要な書類はこれね」
封筒を渡された。
コンコンと扉をノックする音がしてひょっこりイケメンが顔を出した。どうでも良いけど、この学校にはイケメンさんしかいないのか?背も高い。
目の前の碧空くんも今入って来たイケメンも180センチはあると思う。
僕はそんなに高くない。おばあちゃんの遺伝子を濃く受け継いだけど、170センチにあと少しってところで留まったまま、未だ成長過程です。
過程です。
伸びます。
きっと伸びます。
180センチが目標なのです。
碧空くんには負けません!
「ちょ、睨むなよ」
碧空くんは苦笑いで軽くいなす。対抗意識がムクムクと芽生え思わず睨んでしまった。
ごめんなさい。
いやいや、謝らなくても良い。僕が受けた心の傷に比べたらちょっとくらい睨んだって良いじゃないか?
どうせ迫力なんかないんだから。
「遅かったな」
「これでも急いで来たんだ」
「ほら、念願の同室者だぞ?安田くん、今入って来たのがこれから一年間寮で同室の牧野智親だ。同い年だし、同じクラスだから何か困ったことがあったら聞くと良い」
「はい。ありがとうございます。あの…もうクラスってわかってるんですか?」
僕は担任が決まってたから、きっと決まってたとは思うけど、みんなももう知っているのだろうか?
「あれ、聞いてない?ここは能力別だから。高二からこの学校に入るだけあるよ」
碧空くんが真っ直ぐ僕を見て言う。ドキドキする。あの頃よりかっこ良くなって、笑顔なんか見せないで欲しい。
僕は意地悪ばかりする碧空くんが気になって仕方なかった。転校して会えなくなると、あんなに憂鬱だったのに会いたくて仕方なかった。
あの時、二人きりで教室…らしきところにいたのはきっと、僕が一緒にいたかったんだ。自分から誘うことはなくても『来いよ』と言われれば付いていく、そして意地悪されて落ち込む。
どうして付いていくのか、その時の僕は自分の行動が理解できなかったのだろう。それがあの夢だ。嫌な記憶なのにあの夢は懐かしく、あの夢を見るのは嫌いではなかった。
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