見ぃつけた。

茉莉花 香乃

文字の大きさ
上 下
3 / 45
第一章

03

しおりを挟む
ソファーに座ると、予想通りの座り心地の良さだ。生徒会が特別な存在であることがわかる。最上階にあることもそうだし、この部屋にある何もかもが豪華だ。

「ちょっと待ってて」

そう言って、イケメンさんは…まだ名前、聞いてない…部屋の中の一つのドアを開けた。
この部屋には五つのドアがあり、一つは僕が入ってきた廊下に繋がる扉。残り四つはこの部屋の中からしか出入りできないドアのようだ。生徒会室に入る前に見た廊下は遠くまで見えたけど入り口はここしかなかった。

カチャカチャと微かな音をさせて、お盆を持ってくるイケメンさんは何をさせてもかっこいい。

「はい、どうぞ」

僕の向かいに優雅に座り、僕の前と自分のところに青と金で装飾された綺麗なカップに淹れられた紅茶を置いた。

「ありがとうございます」
「俺の名前は大沢碧空そら。会計をしてる。会長と副会長はこの休み、出かけてて、俺が君…えっと…」

さっきまで作業していた机まで行き、僕の書類をガサガサと探す碧空くんをまじまじ見た。

急浮上した記憶は夢と現実を結びつける。

びっくりした。
あの子だ。
僕に意地悪ばかりした、僕の夢に度々登場する十歳の子。
当然だが、十六歳で再登場である。

まさか…こんなに早くに知り合いに、一番会いたくなかった人に会ってしまうなんて……。僕はなんてついてないんだろう…。

「ああ、あった。えっと…安田あおい……、碧…」

良かった。
念のためお母さんの旧姓を使ってこの学校に入学した。だから、珍しい名前でも名字が違えば大丈夫だろう。

本名は姫宮ひめみやあおい

今は黒髪のウィッグで隠れているけど、僕の髪はプラチナブロンド。濃いブラウンのカラーコンタクトの下はブルーで、クオーターである。

伊達眼鏡で顔の輪郭を誤魔化して、今僕はボサボサ頭のイケてない男子高校生。
男子校で男の子に紛れてしまえばいくらイケてなくても目立たないだろう。

母方の祖母がイギリス人で母は茶髪だけど、隔世遺伝で僕におばあちゃんの遺伝子が濃く出てしまった。小さな頃からこの見た目で虐められた。目の前に座る碧空くんにも色々意地悪された。

あの日、わんわん泣いて帰った僕に、母は『避難』することを勧めた。母の実家の近くの学校に転校して、多少の疎外感はあったけど、田舎独特のおっとりした雰囲気で高一まで問題なく過ごせた。

おじいちゃんとおばあちゃんとの三人での暮らしは穏やかで、いつまでも続くと思っていた。だけど、おばあちゃんがいきなり『元気な間にイギリスで生活したい』と言い出したのだ。嫁いでから慣れない日本の…しかも田舎の生活は大変だっただろう。

あと二年頑張ってくれたら良かったのに。

近頃急にあちこち調子が悪くなり、病院へ行く機会も増えた。今を逃せばもう行けなくなると今年に入ってからバタバタと準備をして二人でさっさと行ってしまった。

困ったのは僕だ。

一年生が終わるまでは母が来てくれてなんとかなったが、こんなとこに住むのもう嫌と帰りたがった。自分の故郷をこんなとこ呼ばわりだ。まあ、たまの休みに来るのとはわけが違う。買い物も一苦労だ。都会…ここはそんなに都会でもないけれど、の生活に慣れた身には辛いのだろう。父も帰ってきてと泣きつく。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

「じゃあ、別れるか」

万年青二三歳
BL
 三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。  期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。  ケンカップル好きへ捧げます。  ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

処理中です...