見ぃつけた。

茉莉花 香乃

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第一章

03

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ソファーに座ると、予想通りの座り心地の良さだ。生徒会が特別な存在であることがわかる。最上階にあることもそうだし、この部屋にある何もかもが豪華だ。

「ちょっと待ってて」

そう言って、イケメンさんは…まだ名前、聞いてない…部屋の中の一つのドアを開けた。
この部屋には五つのドアがあり、一つは僕が入ってきた廊下に繋がる扉。残り四つはこの部屋の中からしか出入りできないドアのようだ。生徒会室に入る前に見た廊下は遠くまで見えたけど入り口はここしかなかった。

カチャカチャと微かな音をさせて、お盆を持ってくるイケメンさんは何をさせてもかっこいい。

「はい、どうぞ」

僕の向かいに優雅に座り、僕の前と自分のところに青と金で装飾された綺麗なカップに淹れられた紅茶を置いた。

「ありがとうございます」
「俺の名前は大沢碧空そら。会計をしてる。会長と副会長はこの休み、出かけてて、俺が君…えっと…」

さっきまで作業していた机まで行き、僕の書類をガサガサと探す碧空くんをまじまじ見た。

急浮上した記憶は夢と現実を結びつける。

びっくりした。
あの子だ。
僕に意地悪ばかりした、僕の夢に度々登場する十歳の子。
当然だが、十六歳で再登場である。

まさか…こんなに早くに知り合いに、一番会いたくなかった人に会ってしまうなんて……。僕はなんてついてないんだろう…。

「ああ、あった。えっと…安田あおい……、碧…」

良かった。
念のためお母さんの旧姓を使ってこの学校に入学した。だから、珍しい名前でも名字が違えば大丈夫だろう。

本名は姫宮ひめみやあおい

今は黒髪のウィッグで隠れているけど、僕の髪はプラチナブロンド。濃いブラウンのカラーコンタクトの下はブルーで、クオーターである。

伊達眼鏡で顔の輪郭を誤魔化して、今僕はボサボサ頭のイケてない男子高校生。
男子校で男の子に紛れてしまえばいくらイケてなくても目立たないだろう。

母方の祖母がイギリス人で母は茶髪だけど、隔世遺伝で僕におばあちゃんの遺伝子が濃く出てしまった。小さな頃からこの見た目で虐められた。目の前に座る碧空くんにも色々意地悪された。

あの日、わんわん泣いて帰った僕に、母は『避難』することを勧めた。母の実家の近くの学校に転校して、多少の疎外感はあったけど、田舎独特のおっとりした雰囲気で高一まで問題なく過ごせた。

おじいちゃんとおばあちゃんとの三人での暮らしは穏やかで、いつまでも続くと思っていた。だけど、おばあちゃんがいきなり『元気な間にイギリスで生活したい』と言い出したのだ。嫁いでから慣れない日本の…しかも田舎の生活は大変だっただろう。

あと二年頑張ってくれたら良かったのに。

近頃急にあちこち調子が悪くなり、病院へ行く機会も増えた。今を逃せばもう行けなくなると今年に入ってからバタバタと準備をして二人でさっさと行ってしまった。

困ったのは僕だ。

一年生が終わるまでは母が来てくれてなんとかなったが、こんなとこに住むのもう嫌と帰りたがった。自分の故郷をこんなとこ呼ばわりだ。まあ、たまの休みに来るのとはわけが違う。買い物も一苦労だ。都会…ここはそんなに都会でもないけれど、の生活に慣れた身には辛いのだろう。父も帰ってきてと泣きつく。
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