告白ゲーム

茉莉花 香乃

文字の大きさ
上 下
8 / 11
告白ゲーム

08

しおりを挟む
涙腺をコントロールできなくなった。自分から別れる決意をしてここに来たのに…。

寺本からの決別の言葉を聞いて本当は別れたくなんかないと思っている心の奥の声が、涙腺と直結しているみたいだ。みっともない涙でぐちゃぐちゃの顔を隠したいのに、寺本は許してくれない。膝の上に座る僕を覗き込む。

「僕は…一年の時から、寺本くんが、好きだったから、嘘だってわかってても、一緒に…一ヶ月だけでも、側にいたいって。……告白なんかする、つもりはなかったけど、告白されたから、…良いかなって…。…何度も後悔した。…優しくされると辛かった。…きっと、冷たくされても、辛かったと思う。演技の練習なのかと諦めてたんだ」
「さっきから言ってるけど、なんで演技?」
「だって、僕に向ける、寺本くんの優しさの、触れる身体の意味が……欲しかった。演技の練習なんだと思ったら納得できた。期待しないように、一ヶ月だけ…一ヶ月だけだからって」

顔を同じ高さにして鼻同士をコツンと当てる。

「て、寺本くん、ここ、公園…」
「じゃあ、俺の部屋行こう」
「嫌だ…」
「どうして?」
「無理だよ。ゲームの続きはできない」
「俺がこんなに、好きなのに?博也は泣いてしまうくらい終わるのが嫌なのに?」
「ちょっとのことで不安になる。告白ゲームが頭から離れない。少なくともあの四人はゲームの続きだと思ってる。寺本くんもって……考えてしまう」

寺本の腕が僕の頭を包む。

頭に直接響く声は優しかった。

「やっぱり、一旦別れよう」

ピクリと震える身体は寺本の腕が全て受け止めてくれる。こんなに密着した破局は珍しいのではないか?

ああ、これで終わる。
服が濡れてしまうのに申し訳ないと思いながらも、壊れた涙腺は涙を流し続けた。

「改めて…博也、えっと佐久間。聞いてくれる?」

いきなり名字で呼ばれてツキリと胸が痛む。
だから、嫌だって言ったのに。

……でも、優しい声が続いた。

「佐久間、好きなんだ。俺と付き合ってくれる?」



◇◇◇◇◇



「俺、フラれたから」
「「「え~」」」
「どうしたんだよ?先週は順調だって言ってたじゃないか?」
「でも、一ヶ月続いたってこと?凄いよな」
「そうだけど…お前、本命だったろ?フラれたんなら仕方ないけど」
「やっぱ、藤井にはバレてた?」
「「「えっ?本命?」」」
「そうだよ。…博也」

月曜日の放課後、一ヶ月前と同じように五人で集まって話してる。そして、僕も同じように教室前の廊下で中の様子を伺ってた。

名前を呼ばれたから教室に入る。寺本が出入り口まで迎えに来てくれて、手を繋がれて四人の前に二人で並ぶ。

これ、罰ゲームに匹敵する恥ずかしさだ。

「改めて…フラれた後にもう一回告白してオッケーもらったから」
「「「え~」」」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

まさか「好き」とは思うまい

和泉臨音
BL
仕事に忙殺され思考を停止した俺の心は何故かコンビニ店員の悪態に癒やされてしまった。彼が接客してくれる一時のおかげで激務を乗り切ることもできて、なんだかんだと気づけばお付き合いすることになり…… 態度の悪いコンビニ店員大学生(ツンギレ)×お人好しのリーマン(マイペース)の牛歩な恋の物語 *2023/11/01 本編(全44話)完結しました。以降は番外編を投稿予定です。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

視線の先

茉莉花 香乃
BL
放課後、僕はあいつに声をかけられた。 「セーラー服着た写真撮らせて?」 ……からかわれてるんだ…そう思ったけど…あいつは本気だった ハッピーエンド 他サイトにも公開しています

代わりでいいから

氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。 不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。 ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。 他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

漢方薬局「泡影堂」調剤録

珈琲屋
BL
母子家庭苦労人真面目長男(17)× 生活力0放浪癖漢方医(32)の体格差&年の差恋愛(予定)。じりじり片恋。 キヨフミには最近悩みがあった。3歳児と5歳児を抱えての家事と諸々、加えて勉強。父はとうになく、母はいっさい頼りにならず、妹は受験真っ最中だ。この先俺が生き残るには…そうだ、「泡影堂」にいこう。 高校生×漢方医の先生の話をメインに、二人に関わる人々の話を閑話で書いていく予定です。 メイン2章、閑話1章の順で進めていきます。恋愛は非常にゆっくりです。

処理中です...