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第七章
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「行ってきます」
郁己を抱きしめキスをする。
「ふふっ、行ってらっしゃい。頑張ってね」
今日、帰ってもここに郁己は居ないけど、金曜にはまた会える。
郁己はここから電車で正味一時間半くらいの大学に通っている。
ここから通学すると言ったけど、乗り継ぎやここから駅と駅から大学までの歩きの時間を入れれば片道二時間以上かかってしまう。ここにはいつでも来て良いからと言うと、渋々大学の近くに部屋を借りた。
郁己は金曜日の夕方から月曜日の朝までここで過ごす。たまに土曜日に補講があると、ブツブツ言いながらここから通う。
月曜の朝一はゆっくりできるようにしたからと笑顔で言うから仕方ない。無理をすればここからも通えるんだ、朝から何かあっても問題は無いよと言う。
もうバイトはしていない。
勉強は会えない時にして、会いに行きたいから、って。でも、重い教材を持って来て、部屋に篭ってる時もある。
「無理してこっち来なくても良いんだぞ?」
心配して言うと怒る。
「俊一さんは俺に会いたくないわけ?」
そりゃ、会いたいに決まってる。一年も会えなかったんだ。一分でも一秒でも会って、キスして、抱きしめたいさ。そう言うと嬉しそうだ。
「俺もだよ。だからいいでしょ?」
「そうだな…。俺は郁己の感じるとこをグリグリして、感じてる郁己を見てたいな」
抱きしめ、耳元で言うと真っ赤な顔をして俯く。
「……っ……もう…」
俺が行ってもいい。隣にどんな人が住んでるか気になる。引越しの時も部屋を訪ねた時も見ることはできなかった。けど、両隣は同じ大学の一つ上の男って聞いたら、もっと頻繁に行った方が良いかなと思う。
これまでは郁己に甘えてた。
だから、これからは郁己がびっくりするくらい構って、連絡して…そうしたら、もう二度と離れることはないだろうか?
あんな寂しい時間を過ごしたくない。
大学の費用は全ておじいさんが出してくれるそうだ。
亡くなったおじいさんが郁己に渡した貯金通帳には約一千万の残高があった。約十年毎年振り込まれたお金は、お母さんが亡くなった後も入金があった。お母さんがおじいさんに託していたみたいだ。
もう確かめることはできない。生きている間に聞けば良かったと悔しがる。
きっとそれは、母方のおじいさんが虐められて姿を消す前におばあさんにこっそりと渡していたお金だったのだろう。
郁己に、このお金があったら無理してバイトしなくても良かったんじゃないかと聞いたらこのお金で大学行こうと思ってた…とけろっと言った。
しっかり者なんだ、郁己は。
それに、家に居たくなかったしねと肩を窄めた。
郁己を抱きしめキスをする。
「ふふっ、行ってらっしゃい。頑張ってね」
今日、帰ってもここに郁己は居ないけど、金曜にはまた会える。
郁己はここから電車で正味一時間半くらいの大学に通っている。
ここから通学すると言ったけど、乗り継ぎやここから駅と駅から大学までの歩きの時間を入れれば片道二時間以上かかってしまう。ここにはいつでも来て良いからと言うと、渋々大学の近くに部屋を借りた。
郁己は金曜日の夕方から月曜日の朝までここで過ごす。たまに土曜日に補講があると、ブツブツ言いながらここから通う。
月曜の朝一はゆっくりできるようにしたからと笑顔で言うから仕方ない。無理をすればここからも通えるんだ、朝から何かあっても問題は無いよと言う。
もうバイトはしていない。
勉強は会えない時にして、会いに行きたいから、って。でも、重い教材を持って来て、部屋に篭ってる時もある。
「無理してこっち来なくても良いんだぞ?」
心配して言うと怒る。
「俊一さんは俺に会いたくないわけ?」
そりゃ、会いたいに決まってる。一年も会えなかったんだ。一分でも一秒でも会って、キスして、抱きしめたいさ。そう言うと嬉しそうだ。
「俺もだよ。だからいいでしょ?」
「そうだな…。俺は郁己の感じるとこをグリグリして、感じてる郁己を見てたいな」
抱きしめ、耳元で言うと真っ赤な顔をして俯く。
「……っ……もう…」
俺が行ってもいい。隣にどんな人が住んでるか気になる。引越しの時も部屋を訪ねた時も見ることはできなかった。けど、両隣は同じ大学の一つ上の男って聞いたら、もっと頻繁に行った方が良いかなと思う。
これまでは郁己に甘えてた。
だから、これからは郁己がびっくりするくらい構って、連絡して…そうしたら、もう二度と離れることはないだろうか?
あんな寂しい時間を過ごしたくない。
大学の費用は全ておじいさんが出してくれるそうだ。
亡くなったおじいさんが郁己に渡した貯金通帳には約一千万の残高があった。約十年毎年振り込まれたお金は、お母さんが亡くなった後も入金があった。お母さんがおじいさんに託していたみたいだ。
もう確かめることはできない。生きている間に聞けば良かったと悔しがる。
きっとそれは、母方のおじいさんが虐められて姿を消す前におばあさんにこっそりと渡していたお金だったのだろう。
郁己に、このお金があったら無理してバイトしなくても良かったんじゃないかと聞いたらこのお金で大学行こうと思ってた…とけろっと言った。
しっかり者なんだ、郁己は。
それに、家に居たくなかったしねと肩を窄めた。
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