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第六章
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「あの…俊一さん…ですよね?」
「えっ?」
「あぁ、ごめんなさい。片島がいつもそう呼んでたから名字覚えてなくって…」
声を掛けてきたのは郁己と同じ制服で巻き毛が可愛い男の子だった。
「君は…」
見せてもらった写真で見たことのある子だ。
名前は…
「…大野くん、だよね?」
「はい。片島のことですよね?」
「君は何か知ってるのか?教えて欲しい。郁己に何があった?」
「渡して欲しいと預かってる物があります。良かった、会えて。でも、僕、これから学校で…貴方もお仕事ですよね?夕方…お時間ありますか?」
始業まであまり時間がなかったので取り敢えず連絡先だけを交換して一旦別れた。
郁己は大野くんや他の友だちに俺の事をなんと言ってたのか?
いつも遊びに行く近所のお兄さん…。
妥当な関係だ。ネクタイを選ぶ時、売り場の店員に誰への贈り物か聞かれ兄さんと答えたと言った顔は悲し気だった。
キスをせがむ時は甘えたい時と誤魔化したい時。あの時は誤魔化したかったのか?
何を?
恋人へのプレゼントですと言わなかったから怒ると思った?郁己が俺の事を兄さんだと思ってるのが知られたから?どちらも違うような気がする。
俺も郁己へのプレゼントを選ぶ時、もし誰への贈り物かと店員に聞かれたら弟と誤魔化すだろう。その場だけの知らない人に自分の事を話す気はない。
じゃあ、本当に郁己にとって兄のような存在なのか?
それだけなのか?
だから、俺には何も言わず消えたのか?
大野くんから時間と場所の連絡があった。
俺からするのは憚られた。
学校まで行ったんだ。今更な気もするけど、郁己が俺の事を近所のお兄さんと紹介していたのならそんなに行き先を知りたがるのはおかしな話だ。
指定されたのは駅の近くのファミレス。先に店に入ってると連絡があった。案内されて席に行くと私服で、郁己も幼く見えたけど、大野くんも同じだ。中学生に見える。
「ドリンクバーでいいですか?」
ファミレスに食事以外で来たことはない。そもそもファミレス自体そんなに利用しない。
「ああ」
大野くんは慣れた様子で俺の分を頼んで、自分は既にコーラか何かを飲んでいる。コーヒーを淹れて席に戻った。
「なんか、すみません。俊一さんにファミレスって似合いませんね。店、貴方に決めて貰えばよかった」
「いや、構わないよ」
「ほんと、片島の言う通りだ。落ち着いてて、なんでも言うこと聞いてくれそう。片島やめて、僕にしません?」
「な、何を?」
「冗談ですよ」
今の感じだと、どこまで言ってるかはわからないけど俺は近所のお兄さんではなさそうだ。
「それで…郁己はどこに?」
「その前に、片島のおじいさんが亡くなったことは知っていますか?」
「えっ?」
おじいさんは郁己の生きる希望だった。まさか…郁己は!
「ああ、違います。元気です。多分元気です」
「なっ!」
多分?どう言うことだ。
「片島は貴方に言えていないことを凄く悩んでて、いつ言おうかと頭を抱えてました」
「どうして…?」
どうして直ぐに言ってくれなかったんだ。例え、葬儀に参列できなくても心の支えになってあげられたのに。
俺は支えにもなれないのか?
「えっ?」
「あぁ、ごめんなさい。片島がいつもそう呼んでたから名字覚えてなくって…」
声を掛けてきたのは郁己と同じ制服で巻き毛が可愛い男の子だった。
「君は…」
見せてもらった写真で見たことのある子だ。
名前は…
「…大野くん、だよね?」
「はい。片島のことですよね?」
「君は何か知ってるのか?教えて欲しい。郁己に何があった?」
「渡して欲しいと預かってる物があります。良かった、会えて。でも、僕、これから学校で…貴方もお仕事ですよね?夕方…お時間ありますか?」
始業まであまり時間がなかったので取り敢えず連絡先だけを交換して一旦別れた。
郁己は大野くんや他の友だちに俺の事をなんと言ってたのか?
いつも遊びに行く近所のお兄さん…。
妥当な関係だ。ネクタイを選ぶ時、売り場の店員に誰への贈り物か聞かれ兄さんと答えたと言った顔は悲し気だった。
キスをせがむ時は甘えたい時と誤魔化したい時。あの時は誤魔化したかったのか?
何を?
恋人へのプレゼントですと言わなかったから怒ると思った?郁己が俺の事を兄さんだと思ってるのが知られたから?どちらも違うような気がする。
俺も郁己へのプレゼントを選ぶ時、もし誰への贈り物かと店員に聞かれたら弟と誤魔化すだろう。その場だけの知らない人に自分の事を話す気はない。
じゃあ、本当に郁己にとって兄のような存在なのか?
それだけなのか?
だから、俺には何も言わず消えたのか?
大野くんから時間と場所の連絡があった。
俺からするのは憚られた。
学校まで行ったんだ。今更な気もするけど、郁己が俺の事を近所のお兄さんと紹介していたのならそんなに行き先を知りたがるのはおかしな話だ。
指定されたのは駅の近くのファミレス。先に店に入ってると連絡があった。案内されて席に行くと私服で、郁己も幼く見えたけど、大野くんも同じだ。中学生に見える。
「ドリンクバーでいいですか?」
ファミレスに食事以外で来たことはない。そもそもファミレス自体そんなに利用しない。
「ああ」
大野くんは慣れた様子で俺の分を頼んで、自分は既にコーラか何かを飲んでいる。コーヒーを淹れて席に戻った。
「なんか、すみません。俊一さんにファミレスって似合いませんね。店、貴方に決めて貰えばよかった」
「いや、構わないよ」
「ほんと、片島の言う通りだ。落ち着いてて、なんでも言うこと聞いてくれそう。片島やめて、僕にしません?」
「な、何を?」
「冗談ですよ」
今の感じだと、どこまで言ってるかはわからないけど俺は近所のお兄さんではなさそうだ。
「それで…郁己はどこに?」
「その前に、片島のおじいさんが亡くなったことは知っていますか?」
「えっ?」
おじいさんは郁己の生きる希望だった。まさか…郁己は!
「ああ、違います。元気です。多分元気です」
「なっ!」
多分?どう言うことだ。
「片島は貴方に言えていないことを凄く悩んでて、いつ言おうかと頭を抱えてました」
「どうして…?」
どうして直ぐに言ってくれなかったんだ。例え、葬儀に参列できなくても心の支えになってあげられたのに。
俺は支えにもなれないのか?
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