波紋

茉莉花 香乃

文字の大きさ
上 下
12 / 41
第三章

04

しおりを挟む
隣の部屋を見るとベッドがあった。

ドキンと心臓が跳ねた。
キスもしたことないし、男同士の準備もわからない。女の子と付き合ったこともなかった。

でも、ここで…。
そう思うと顔に熱が集まる。布団に潜り込み目を閉じた。


『あんたの母親は本当にロクでもない女だったさ。男をたぶらかして。友だちの車で事故なんかしてさ。焼身自殺なんかして大迷惑なんだよ』

「おい、郁己!起きろ」

夢を見た。ばあさんが母さんを罵倒する夢。

「そんなことない。お母さんはそんな人じゃない。お母さんが悪いんじゃない」
「郁己!」
「えっ?あっ…ここは」

あの人のベッドで寝てしまってた。凄く安心したんだ。これから…って思うとドキドキはしたけど、凄く落ち着けた。それなのに…。

「大丈夫か?」
「俺…」
「夢でも見たのか?送って行くよ」
「俺を買ってくれるんじゃなかったのかよ?」

家には帰りたくないんだ。腕を掴み抱きついた。離れたくない。温もりが欲しい。

「大人ぶったってキスもしたことないガキだろ?」
「じゃあ、教えてくれよ。貴方が…」
「俊一。俺の名前、永岡俊一」
「俊一さん…が教えてくれたら、大人になれる?」
「大人になってどうするんだ?」
「一人で稼いで、一人で生きていく」

あんな家にはいたくない。

俺の居場所なんかない。

「俺には?授業料でも払ってくれるのか?」

別に身体を売って生活したい訳じゃない。
俊一さんの温もりが欲しい。

「出世払いでいい?」
「ちゃんと学校行って勉強しろ!」

ばあさんを見返すために勉強は頑張ってるんだ。

「……誰でも…誰でも良かったんだろ?違う奴に頼め。俺に構うな。リビングに一万円置いてる。それ持って、出て行け」

誰でもいいわけない。
そんな悲しそうな顔しないで欲しい。俊一さんだから。強く抱きしめたまま顔を押し付た。

「…貴方だけだった。俺が公園にいる時、貴方だけが俺を見てくれた」
「俊一だよ」

キスしてくれた。

背中に腕を回し離れないようにする。

「俊一さん」
「郁己」

二度目のキス。俊一さんの舌が唇をなぞる。

「んっ…はぁ…」

緊張で歯を噛み締める。舌が歯に触れた。途端に離れる身体に不安になる。

「…続きは?」
「ここまでだ」

もっと触れたい。

「こんなの俺でもできるよ」
「今日は帰れ」

それって、心配してくれてるのか?
今日は…?明日は来ても良いの?そんな訳ないか…。

「誰も心配しないって言ってるだろ?」
「また、来たらいいから」
「えっ?」

良いの?
俺の心の声が届いたのかと思った。

「ここに、いつでも来たらいいから」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

フルチン魔王と雄っぱい勇者

ミクリ21
BL
フルチンの魔王と、雄っぱいが素晴らしい勇者の話。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...