撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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番外編ー参 藤壺の女御の疑問

04

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今日は兄上が琵琶を演奏して下さると昨日報告があった。

気分が優れないので、お断りしようかと思ったけれど、頭の中将である兄上は女房たちに大人気だから、弁の君に押し切られて来て頂くことになった。

兄上が飛香舎を訪れると弘徽殿や他に仕えている女房もいつもの対立をかなぐり捨てて、飛香舎に来たがるそうだ。
これを機会に仲良くなれれば良いのだけれど。

兄上は他の女御に『是非遊びに来て下さいね』と誘われるのだと以前お聞きしたことがある。

わたしが後宮に上がる前は『なるべく近寄らないようにしていた』とおっしゃるから、女御たちには珍しいお方なのかもしれない。

「やあ、今日は良い日和ですね」
「はい。風がさやさやと吹いて気持ち良いですね」
「今日は…桔梗と日向はいないんだね」
「はい、桔梗は六条の姫さまに会いに行ってます。日向は…何か忙しそうなのですよ」
「そう…女御さまは知らないの?」
「はい、日向は何も云っておりません」
「調べてあげようか?」
「いいえ。その様な…兄上のお手を煩わす様なことではないのです」
「わかったよ。何かあったら頼って下さいね」
「はい。ありがとうございます」

兄上は何か知っておられるのか?

もしかしたら…いや、何を考えているのだ。
いくら不安だからと云って、何もかもを信じないのはいけない。

兄上は素晴らしい琵琶の演奏で弁の君の琴と合奏したり飛香舎は華やかに暮れていく。


桔梗が参内した。

姫さまはますますお元気になられたようだ。

不羈奔放ふきほんぽうな方だから心配はしていなかったけれど、長旅や慣れない生活にお疲れが出ているかもしれない。
父上は保憲さまと最初ぎこちない様子だったそうだけれどお酒を交えて段々と打ち解けられたようで良かった。

日向は桔梗が参内するのを待っていたかのように実家へ宿下がりした。父君に用事があるとかで、やはり詳しくは云わなかった。

何故か安心するのはいけないことだろうか。

幾日かが過ぎ、胸を苦しめる噂を聞き流しそれでも昼に訪れて下さる帝を待つ。


衛門が側に控えている。

「如何されました?」
「何も…」

先ほど帝が清涼殿に戻られた。

今日も夜にこちらにいらっしゃることはない。

「今日は十五夜ですね。わたくしとお月見など如何ですか?お酒を用意させましょ…女御さま!?」
「…?…何?」

突然大きな声を出した衛門に驚く。
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