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朝朗
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縛られて逃げられないことに加え、何か異変を感じ〈氷の君〉が狼狽える。聞こえる声も心に響いていたものとは違い、耳に聞こえるようになった。
「こちらは、賀茂親彬さんです。僕の…えっと…」
(恋人って云って良いのかな?無難に同僚?上司じゅないから、それで良いかな?…だってさ、好きって云ってくれたけど、この時代の恋人に対する倫理観に付いてけないんだけど…。親彬が僕の事だけを恋人って云ってくれなきゃ…僕は、嫌だな…)
今考えるべきは、この妖怪と対峙することなのだが、つい先日、好きな人から好きだと告白されて、舞い上がってる尊はぐるぐると思考が回る。
「尊の恋人だよ」
尊が言い淀んだ続きの言葉を躊躇わずに言葉にされて、思わず頬が緩む。だから、今はそれは大事なことではない。場にそぐわない甘い雰囲気に、誰にも突っ込まれないから、にへらぁと顔が緩みそうになる。
「俺への当てつけですか?」
そこに、突っ込んできたのは、〈氷の君〉だった。
「ああ、ごめん。そんなつもりはないんだ。ところで、陽毬って呼ぶのがダメならなんて呼べば良い?」
「……良いよ」
「えっ?」
「だから、……陽毬、で、良い」
「じゃあ、やっぱりこいつは安倍さまの?」
「だって、凄く似てるでしょ?」
「ああ、そっくりだ。あの幼い顔を、成長させると…、そうだな、うん」
「何の話だ?」
「安倍さまの式神のことだよ」
「あの人の式神?確か…女の童…」
「あのね、昔のことは知らないんだ。今の式神だよ」
「今のなんて!そんなの知らない!」
「怒るなよ。見に行かなかったんだろ?」
「だって…あの人の屋敷は結界で…、大内裏にも行けなかった…」
(嘘だ。親や安倍さまにも気付かれなかったのだからどこへでも行けただろう。行きたくなかったってことなのかな?)
「だから、屋敷の前ってか?だいたい、お前はどうして屋敷の前でしゃべってただけの奴を狙うんだよ?」
「だって…悔しい」
「はあっ?」
「俺が幸せじゃなかったから、次々と相手を変えて……だから、全部仲を割いてやりたかった」
「あれは、たまたましゃべってただけだろ?挨拶しただけだ。知り合いの従者だったり、そいつの父君の知り合いで挨拶しただけだった。昨日のだって、あれ、陰陽生だ。仕事だよ」
「嘘だ!」
「こちらは、賀茂親彬さんです。僕の…えっと…」
(恋人って云って良いのかな?無難に同僚?上司じゅないから、それで良いかな?…だってさ、好きって云ってくれたけど、この時代の恋人に対する倫理観に付いてけないんだけど…。親彬が僕の事だけを恋人って云ってくれなきゃ…僕は、嫌だな…)
今考えるべきは、この妖怪と対峙することなのだが、つい先日、好きな人から好きだと告白されて、舞い上がってる尊はぐるぐると思考が回る。
「尊の恋人だよ」
尊が言い淀んだ続きの言葉を躊躇わずに言葉にされて、思わず頬が緩む。だから、今はそれは大事なことではない。場にそぐわない甘い雰囲気に、誰にも突っ込まれないから、にへらぁと顔が緩みそうになる。
「俺への当てつけですか?」
そこに、突っ込んできたのは、〈氷の君〉だった。
「ああ、ごめん。そんなつもりはないんだ。ところで、陽毬って呼ぶのがダメならなんて呼べば良い?」
「……良いよ」
「えっ?」
「だから、……陽毬、で、良い」
「じゃあ、やっぱりこいつは安倍さまの?」
「だって、凄く似てるでしょ?」
「ああ、そっくりだ。あの幼い顔を、成長させると…、そうだな、うん」
「何の話だ?」
「安倍さまの式神のことだよ」
「あの人の式神?確か…女の童…」
「あのね、昔のことは知らないんだ。今の式神だよ」
「今のなんて!そんなの知らない!」
「怒るなよ。見に行かなかったんだろ?」
「だって…あの人の屋敷は結界で…、大内裏にも行けなかった…」
(嘘だ。親や安倍さまにも気付かれなかったのだからどこへでも行けただろう。行きたくなかったってことなのかな?)
「だから、屋敷の前ってか?だいたい、お前はどうして屋敷の前でしゃべってただけの奴を狙うんだよ?」
「だって…悔しい」
「はあっ?」
「俺が幸せじゃなかったから、次々と相手を変えて……だから、全部仲を割いてやりたかった」
「あれは、たまたましゃべってただけだろ?挨拶しただけだ。知り合いの従者だったり、そいつの父君の知り合いで挨拶しただけだった。昨日のだって、あれ、陰陽生だ。仕事だよ」
「嘘だ!」
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