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朝朗
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「何とかしないと」
「そりゃ、退治しないとダメだろ」
帝からの命である。確実に退治しなければならない。
しかし、……
「安倍さまはそれで、救われるのかな?」
「そ、それは…仕方ないじゃないか…ちゃんと、わかってるよ」
陰陽頭として、自分のしなければならないことはわかっているだろう。しかし、尊はそう云うことを云っているのではない。
「尊、安倍さまは大丈夫だ」
現代とこの時代の死生観の違いなのかもしれない。現代なら死ぬことはない病でも、あっけない死がそこにある。その他にも人攫い、刃傷沙汰、飢餓、流行病。そのどれもが現代にもあるものだけど、その頻度や情報の無さは最早諦め、いや当たり前のこととして都人の隣にある。
「問題は、どうやって〈氷の君〉をおびき出すか、だな」
「だから、それは簡単だよね?」
「尊はきっと無理だよ。出来ても…さっきも云ったけど…、それが出来ても、俺は尊が囮になるのは嫌だ」
「じゃ、じゃあ親が?…僕も、嫌だ。親が…親に何かあったら、僕…」
「ありがと、尊。…でも、俺もダメかもな…」
「どうして?」
「自分じゃわからない?尊には、浄化の気が満ちている。あの不思議な御札にもそれは溢れていたが、本体である尊は…それこそ、近づけやしないだろう」
その三日後、酉の正刻。
五条大路の安倍雅季の屋敷の前では、陰陽頭その人が陰陽生の弓削勝一と談笑していた。
そこには親密な触れ合いなどない。陰陽寮から、屋敷に帰った陰陽頭に忘れ物を届けるためにやってきたのだ。とても大切な物であるため、人伝に渡すのではなく、必ず本人に手渡すように命じられた。屋敷の中に招き入れられるものとばかり思っていたが、今から出かけるのでと外での対面となった。
大事なものならば人目は大丈夫なのかと心配したが、その大切な物は懐にスッと納められた。何事もなかったように、たわいない話を振られ、それに答る。しばらくして、この上司は出かけるのではなかったかと慌てると、大丈夫だと告げられた。よくわからないが、本人が良いと云うのなら、大丈夫だろう。
今、美貌の式神は控えていなかった。成る程、外ではいくら一般人には見えないと云っても、そうなんだと勝一は思った。それほど、陰陽寮にいる時は常に側に置いていたのだから。しかし、今は控えていないだけで、常にではない。確かに、徒で移動する時はそうではなかったが。
「そりゃ、退治しないとダメだろ」
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しかし、……
「安倍さまはそれで、救われるのかな?」
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陰陽頭として、自分のしなければならないことはわかっているだろう。しかし、尊はそう云うことを云っているのではない。
「尊、安倍さまは大丈夫だ」
現代とこの時代の死生観の違いなのかもしれない。現代なら死ぬことはない病でも、あっけない死がそこにある。その他にも人攫い、刃傷沙汰、飢餓、流行病。そのどれもが現代にもあるものだけど、その頻度や情報の無さは最早諦め、いや当たり前のこととして都人の隣にある。
「問題は、どうやって〈氷の君〉をおびき出すか、だな」
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「じゃ、じゃあ親が?…僕も、嫌だ。親が…親に何かあったら、僕…」
「ありがと、尊。…でも、俺もダメかもな…」
「どうして?」
「自分じゃわからない?尊には、浄化の気が満ちている。あの不思議な御札にもそれは溢れていたが、本体である尊は…それこそ、近づけやしないだろう」
その三日後、酉の正刻。
五条大路の安倍雅季の屋敷の前では、陰陽頭その人が陰陽生の弓削勝一と談笑していた。
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大事なものならば人目は大丈夫なのかと心配したが、その大切な物は懐にスッと納められた。何事もなかったように、たわいない話を振られ、それに答る。しばらくして、この上司は出かけるのではなかったかと慌てると、大丈夫だと告げられた。よくわからないが、本人が良いと云うのなら、大丈夫だろう。
今、美貌の式神は控えていなかった。成る程、外ではいくら一般人には見えないと云っても、そうなんだと勝一は思った。それほど、陰陽寮にいる時は常に側に置いていたのだから。しかし、今は控えていないだけで、常にではない。確かに、徒で移動する時はそうではなかったが。
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