71 / 89
朝朗
03
しおりを挟む
☆☆☆☆☆
「親が囮になったって、一緒でしょ?それなら僕が…」
「一緒じゃないだろ?尊が襲われたら!」
「僕が襲われる?」
「そうだよ!」
「僕は…」
尊は別に構わないと思った。操を立てなければならない恋人はいない。親彬の事は好きだけど、どう頑張っても親彬の恋人にはなれないだろうと思うと、どうでも良かった。
別に、投げやりになっているわけではない。襲われたって、死ぬわけじゃない。被害者三人にも会ったけれど、身体に不調がある人はいなかった。まだ健康な心を取り戻してはいなかったけれど、時間が解決するだろう。
もう彼女ができないと思うと残念な気もするけれど、親彬を好きになった時点でノーマルな恋愛はできないかもしれない。
かと云って、おとなしく襲われるつもりはない。失敗してしまったらその時は…と云うことだ。
「僕はこちらには知り合いもいないし、もし、襲われてしまっても、誰も悲しまないよ。だから、僕…」
「ダメだ!俺が、嫌だ!」
「親?どうして?」
(そんな独占欲のようなものを見せないでよ…残酷だよ、親)
「例え誰であろうと、相手が妖怪だろうと、尊には指一本触れさせない。尊、好きだ。だから、な?そんな危ないことしないでくれ」
「えっ?今、何て云っ、た、の?」
尊の目からは涙が溢れた。それを見て、親彬はオロオロする。
「どうして、泣くんだ?た、尊?」
「うぅ…ち、親…、親が…」
「俺?俺がどうした?俺なんか云ったか?」
「うぅ……っ…うん、んっ」
「尊?尊、落ち着けって」
「う、うん…も、一回、親、もう一回、云って?」
「な、何を?」
「好きって、好きって云った!」
「お、おう」
「うぅ…ち、違うの?…やっぱり…そ、だよね…」
更に涙を流し、顔を真っ赤にして首を振る。好きの種類は様々だ。もし、今の言葉が聞き間違いでなくても、親愛の情かもしれない。少し浮いた気分も、急下降する。
「違うって、いや、違わない!ああっ、もう!好きだ!尊、尊の事が好きなんだ」
雰囲気も何もない、愛の告白。今までの親彬なら、褥の中で耳元に囁く、微かな吐息交じりの睦言だった。それが、本気の気持ちはこんなに大きな声で、まるで怒鳴るような、愛の告白。百メートル先でも聞こえるような大きな声に、尊の動きが止まる。
「ホ、ホント?」
「ああ、尊、好きだよ」
「そ、それって…」
「愛してる…尊」
「ぼ、僕も!僕も親が好き!」
「親が囮になったって、一緒でしょ?それなら僕が…」
「一緒じゃないだろ?尊が襲われたら!」
「僕が襲われる?」
「そうだよ!」
「僕は…」
尊は別に構わないと思った。操を立てなければならない恋人はいない。親彬の事は好きだけど、どう頑張っても親彬の恋人にはなれないだろうと思うと、どうでも良かった。
別に、投げやりになっているわけではない。襲われたって、死ぬわけじゃない。被害者三人にも会ったけれど、身体に不調がある人はいなかった。まだ健康な心を取り戻してはいなかったけれど、時間が解決するだろう。
もう彼女ができないと思うと残念な気もするけれど、親彬を好きになった時点でノーマルな恋愛はできないかもしれない。
かと云って、おとなしく襲われるつもりはない。失敗してしまったらその時は…と云うことだ。
「僕はこちらには知り合いもいないし、もし、襲われてしまっても、誰も悲しまないよ。だから、僕…」
「ダメだ!俺が、嫌だ!」
「親?どうして?」
(そんな独占欲のようなものを見せないでよ…残酷だよ、親)
「例え誰であろうと、相手が妖怪だろうと、尊には指一本触れさせない。尊、好きだ。だから、な?そんな危ないことしないでくれ」
「えっ?今、何て云っ、た、の?」
尊の目からは涙が溢れた。それを見て、親彬はオロオロする。
「どうして、泣くんだ?た、尊?」
「うぅ…ち、親…、親が…」
「俺?俺がどうした?俺なんか云ったか?」
「うぅ……っ…うん、んっ」
「尊?尊、落ち着けって」
「う、うん…も、一回、親、もう一回、云って?」
「な、何を?」
「好きって、好きって云った!」
「お、おう」
「うぅ…ち、違うの?…やっぱり…そ、だよね…」
更に涙を流し、顔を真っ赤にして首を振る。好きの種類は様々だ。もし、今の言葉が聞き間違いでなくても、親愛の情かもしれない。少し浮いた気分も、急下降する。
「違うって、いや、違わない!ああっ、もう!好きだ!尊、尊の事が好きなんだ」
雰囲気も何もない、愛の告白。今までの親彬なら、褥の中で耳元に囁く、微かな吐息交じりの睦言だった。それが、本気の気持ちはこんなに大きな声で、まるで怒鳴るような、愛の告白。百メートル先でも聞こえるような大きな声に、尊の動きが止まる。
「ホ、ホント?」
「ああ、尊、好きだよ」
「そ、それって…」
「愛してる…尊」
「ぼ、僕も!僕も親が好き!」
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる