逢魔刻に氷菓を手折り

蒼穹

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雅季の所から辞し、再び親彬と調書のにらめっこをしていた。しかし、さっきから親彬が尊をチラチラと見ている。

翠と梔子、玉ちゃんと福ちゃんが部屋の隅で遊んでいる。玉ちゃんと福ちゃんがトランプを出して四つの山に振り分けた。どうやらババ抜きをするらしい。しかし、なかなかゲームは始まらない。先ず、ババ抜きの基本、揃ったカードを抜くところから大騒ぎだ。肝心のジョーカーも翠の手の中で、みんなに見られている。昨日は折り紙を折っていた。平成から持ってきた綺麗な折り紙に、翠と梔子は折るどころじゃなかった。紙を透かしたり、並べたり。折り紙はおとなしく遊べるものなのに、何故かこの二体の式神にかかればどんなことでも大変な騒ぎになる。

そんな式神たちのことなど気にも掛けず、親彬は尊に質問する。

「尊、説明してくれないか？」
「安倍さまに聞いてたこと？」
「ああ、そうだ。そりゃ、二人ともが五条大路を通ってたよ？だからって、どうしてあんなに安倍さまにこだわるんだ？あそこには…」
「あ、あのね、残留思念」
「ああ、あの時云ってたのか？」

二人の心の中にいた〈氷の君〉の気配が、雅季の屋敷の近くで強く感じたことを説明した。それでもまだ納得していないようだったが、取り敢えずそのことは飲み込んだ。

「でも、五条大路を通っただけで、被害に遭うなら、もっと多くの被害者が出てもおかしくないだろ？〈氷の君〉が選り好みしてるのか？俺たちだって、通ったけど、襲われてない。あっ、俺たちは大丈夫だったな。ははっ…。まあ、俺たちのことは置いといて…、あそこに屋敷を構えてる人は、全員被害に遭っててもおかしくないだろ？なのに、住んでもいない、たまたま通ったあの二人がどうして被害に遭うんだ？それは何か理由があるのか？」
「うん。多分、通り過ぎただけじゃないと思う。それと、選り好み？…そんなのじゃないとは思うけど、それなりに選んでるかも…」
「どう云うことだ？」
「だから、それを確かめたくて、さっき聞いたんだよ」
「何をしてたかってか？」
「うん。もし……」
「もし？」
「屋敷の前で、何か二人と接触があるなら…」
「安倍さまとか？」
「うん」
「そうか…。でも刻限まで同じだとは限らないだろ？」
「ああ、それは…。何か接触があるなら、同じ時間の可能性があると思ったんだ」