逢魔刻に氷菓を手折り

茉莉花 香乃

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蒼穹

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「何かあるのか?もっと西の、右京の方ならわからんでもないが、あそこは貴族が多く住んでいるんだそ?」
「そうだよね…。でも、二人とも確かにそこを通ってたよね?」
「んー、もう一度確かめるか?」
「うん」

調書を出して確認する。やはりそう書いてある。親彬が書いた簡易地図に辿った足取りも、やはりそれ以上の情報は得られない。それは前日と当日の行動を聞いただけのことで、聞いている間は疑問にも思わなかった。どの通りを通って、どこそこの屋敷に向かった。そんな記録。辿った通りではなく、どちらかと云えばどこに行ったかが重要であると思っていたくらいだ。

たまたま雅季の屋敷のある通りを通り過ぎただけ。しかし、本当に通り過ぎただけなのだろうか?

昨日も通ったけれど、特別おかしなことはなかった。きっと尊以外は気付いていない。一緒に回った親彬が疑問に思わなかったこともそうだし、雅季は毎日その屋敷に帰っているのだ。当然五条大路は毎日通る。それなのに何も感じないと云うことは気付いていないのだ。

他に手がかりはない。不思議に思うことは解決しておきたかった。別室で調べ物をしている雅季の元に親彬と一緒に行った。雅季は二人が入ってきたことに気付き、筆を置いた。

「何か手がかりでも見つけたのかね?」

今日も美貌の式神は雅季の後ろに控えている。いつもの親彬と尊の式神とは大違いの落ち着きだ。

「えっと、まだ…。あの、一つお聞きしたいことがあります」
「何だね?」

どう云えば良いか、悩む。しかし、いくら貴族社会が狭いとは云え、ただの偶然と無視することはできない。
それに、…あの気配。

「あの…、えっと…」
「尊、わたしを抱く気に…」
「真面目な話です」
「うぉっほん…、すまない…」
「今回、被害にあった三人と安倍さまはお知り合いですよね?」
「何だね?わたしが疑われているのかな?いくらわたしが男色家だとしても…」
「勿論、疑っているわけじゃないです。これは妖怪の仕業。安倍さまが妖怪であるわけない。そんなことは、陰陽寮にいる誰もが疑う余地のないことです」
「いや、すまない。そうだね…」

雅季は咳払いを一つして、気持ちを切り替えた。誰も雅季を疑うなんてことはないと、雅季自身がよくわかっていた。しかし、遅々として進まない捜査にいささかの焦りがあった。
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