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東雲

09

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「身体、大丈夫?」

ぐったりと横たわる尊を心配して頬を撫でる。親彬的にはもう一度…と思うところだが、今回は上司命令の行為である。一回致せばそれで任務完了になり、その先はお互いの意思だ。

親彬は命令だとか任務だとは思っていない。快楽でぐずぐずになった尊に考える余裕を与えず、なし崩し的にことに及んでは嫌われてしまう。そもそも、本来受け入れる場所ではない穴をこじ開ける行為のため、だいぶ身体が参っている。優しく抱くつもりだったが、あまりの可愛さに親彬の理性が焼き切れた。

尊は頬をほんのり赤らめて、じっと親彬を仰ぎ見る。

ちか、僕、上手だった?」

ほら、これだ。

(俺を煽るのが上手だったよ)

ふっと笑い抱きしめてやる。でも、尊の腕が親彬の背中に回らなかった。

「凄く、良かったよ」
「ホント?良かった」

どこのエロじじいだと、自分の発言に呆れつつ、回されない尊の腕に少し寂しくなる。

「土御門の宮邸からここに戻って来ないか?」

最中に考えていたことを、早速口にする。こんなにガッついて引かれないかと心配するが尊の反応は良かった。

「えっ?良いの?」

嬉しそうな第一声に、小躍りしたくなる。きっとこれが尊の本心だ。起き上がり、向かい合って座る。寒くないように親彬のうちぎを肩にかけてやると、両手で前を合わせ、尊は幸せそうに笑った。だが、急に目をそらし笑顔が消える。

「でも…」
「大丈夫だって。俺が宮さまに話するから」
「そうじゃなくて…」
「じゃあ、何が心配?」
「親に迷惑になるでしょ?」
「俺が云ってるんだ。迷惑って思うなら、最初から云わないよ」
「そ、そうだね。それに、これから何かあった時に直ぐに相談できるしね」

(いや、仕事のためじゃないんだけど…まっ、良いか)

そこでふと思う。

(男を落とすのって、どうすりゃいいの?文を出す?いやー、そもそも毎日会ってるし…)

エロ上司に相談するのだけは、嫌な親彬であった。

(取り敢えず、女はもういいや。夜に出掛けたら心証が良くないよな?)

夜が明けてきた。

女の所ならもうとっくに牛車に乗って、後朝きぬぎぬの歌を書いている頃だ。睦みあった後、こうして一緒に朝を迎えることに、親彬は新鮮な幸福を感じた。
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