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東雲
03
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「そんなに固くならないで?」
「えっ?だって…」
親彬は尊の腰を抱いていた腕に力を込めて引き寄せ、膝の上に座らせた。チュッと音が響く。こめかみに触れる唇にピクリと尊の肩が揺れる。
「口付けも始めて?」
「うん…」
「恋人は?」
「恋人!恋人なんていないよ。……キスもまだなんて、呆れた?」
「呆れるなんてないよ。俺が何もかも、初めてってことだろ?嬉しいよ」
尊の心臓が喜びの鐘を鳴らす。
(嬉しいって云ってくれた…。僕はそれだけで満足だよ。例え、親が仕事だと思って僕に触っていても…僕は…)
「尊、コレって、キスって云うの?」
もう一度こめかみに触れる唇。
「うん…」
熱に浮かされたように親彬の精悍な顔を仰ぎ見る。
「尊、可愛い。ココに、キス、しても、良い?」
一音一音、言葉を切り、どこか心ここに在らずな尊にも理解できるように、ゆくっりと言葉を紡ぐ。その手が、『ココ』が唇であるのを教えるように親指でツツッとなぞった。
尊は頷くことで返事をした。真っ赤な顔を目の前の逞しい身体に擦り付け、腕を背中に回ししがみついた。二人きりになってから、尊は親彬の目を直視できないでいた。
「嫌じゃない?」
親彬は、そっと押し倒し覆いかぶさると、目を合わそうとしない尊の顔を覗き込む。
「嫌じゃないよ?」
そう、嫌じゃない。むしろ嬉しい。
(僕、親の事、好きなのかな?でも、これって、雛鳥が親鳥の後をついて行く、刷り込みのようなものなのかもしれない。こっちに来て、最初に会ったのが親だったから。親は迷惑…だよね)
「親は?親は僕が相手なんて、嫌でしょ?」
(僕って、ズルいよね。こんな状況で、優しい親が僕を否定する言葉なんて云うわけないのに)
「俺は光栄だよ、安倍さまが尊を抱くなんて、絶対に許せない。本当に、良かったよ。あそこで引いてくれなかったらと思うと…」
微かな独占欲のようなものを感じ尊は嬉しそうに笑った。
(僕の気持ちを高揚させるためのお為ごかしだとしても、…嬉しい)
「えっ?だって…」
親彬は尊の腰を抱いていた腕に力を込めて引き寄せ、膝の上に座らせた。チュッと音が響く。こめかみに触れる唇にピクリと尊の肩が揺れる。
「口付けも始めて?」
「うん…」
「恋人は?」
「恋人!恋人なんていないよ。……キスもまだなんて、呆れた?」
「呆れるなんてないよ。俺が何もかも、初めてってことだろ?嬉しいよ」
尊の心臓が喜びの鐘を鳴らす。
(嬉しいって云ってくれた…。僕はそれだけで満足だよ。例え、親が仕事だと思って僕に触っていても…僕は…)
「尊、コレって、キスって云うの?」
もう一度こめかみに触れる唇。
「うん…」
熱に浮かされたように親彬の精悍な顔を仰ぎ見る。
「尊、可愛い。ココに、キス、しても、良い?」
一音一音、言葉を切り、どこか心ここに在らずな尊にも理解できるように、ゆくっりと言葉を紡ぐ。その手が、『ココ』が唇であるのを教えるように親指でツツッとなぞった。
尊は頷くことで返事をした。真っ赤な顔を目の前の逞しい身体に擦り付け、腕を背中に回ししがみついた。二人きりになってから、尊は親彬の目を直視できないでいた。
「嫌じゃない?」
親彬は、そっと押し倒し覆いかぶさると、目を合わそうとしない尊の顔を覗き込む。
「嫌じゃないよ?」
そう、嫌じゃない。むしろ嬉しい。
(僕、親の事、好きなのかな?でも、これって、雛鳥が親鳥の後をついて行く、刷り込みのようなものなのかもしれない。こっちに来て、最初に会ったのが親だったから。親は迷惑…だよね)
「親は?親は僕が相手なんて、嫌でしょ?」
(僕って、ズルいよね。こんな状況で、優しい親が僕を否定する言葉なんて云うわけないのに)
「俺は光栄だよ、安倍さまが尊を抱くなんて、絶対に許せない。本当に、良かったよ。あそこで引いてくれなかったらと思うと…」
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