逢魔刻に氷菓を手折り

茉莉花 香乃

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黎明

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「ところで…」
「な、何?」

(もしかして、やっぱり、さっきのリンとの会話を聞かれたのかな?)

親彬は陰陽師だ。ちょっと、変わったことがあったとしても動じることはない。しかし、小さな頃の記憶は尊を臆病にする。神社に引き取られてからは、仁以外の誰にもを見せたことはなかった。

「誰としゃべってたの?式神?」
「やっ、えっと」

云い逃れはできないと思い、そっとリュックからリンを出す。

「はじめまして、リンだよ」

リンの暖気のんきな声が響く。おずおずと親彬を見ると目を見張る。

「何だこのへんてこりんな物は?尊の式神か?」
「あっ、いや…何て云うんだろ…友だち?」
「友だち?」
「う、うん。僕が赤ちゃんだった時に、両親が買ってくれたぬいぐるみ」
「尊の時代には、玩具おもちゃは全部こんなふうにしゃべるのか?」

(あれ?不思議がってるだけ?それとも、現代ではこれが当たり前だと思ってる?いや、違うよ!)

「やっ、これは……」
「あのね、僕は尊が力を入れてくれたからしゃべれるんだよ?僕は特別なの。こんなふうにしゃべれるのは僕だけなの!」

リンである。

「そうか。そなたは特別なのだな?」
「そうだよ。へへっ、よろしくね、親彬くん」
「おお、よろしく。リン、だったかな?」

親彬は頷くリンを持ち上げ、撫でた。

「何だ、この触り心地は!」
「ふふっ、柔らかいでしょ」

リンと親彬の会話に、肩の力が抜けた。何も怖がることはなかったのだ。

それから髻を結ってもらい、親彬とお揃いの冠をかぶる。人前では絶対に脱いではいけないと口すっぱく云われた。自分一人でどうこうできないので取りたくても取れないが、昨日の赤い顔の原因がこれだったのかと思った。それから、平安衣装に着替えて、まるで貴族デビューだ。リュックから鏡を出した。約二十センチ四方のそんなに大きなものじゃない。

「これじゃ、見れないね」

でも、巻纓冠けんえいのかんはなんだかかっこいい。凄く大人になった気分だ。支度が整って親彬とご飯を食べた。思ったよりも美味しくて、尊は胸をなでおろした。

(やっぱり、食事って大事だよね。いくつか袋麺も持ってきたけど、大丈夫かも)

そんなものまでリュックに入れたとは、仁は知らない。
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