27 / 89
黎明
07
しおりを挟む
「あのさ…」
「何?」
「親、で良いよ、尊」
「えっ?良いの?」
親彬は思わず提案した。
(なんて可愛いんだ。元服もまだなのだろうか?こんな幼い子が、あの妖怪相手に何をしてくれるのだろう?元服も未だだから、髪も下ろしたままなのだろうか?)
翁からは側におけと云われただけ。この未来からの客人がどんな力を持っているのかは知らない。そもそも、力ではないと聞いている。
親彬は見惚れた。黒曜石の瞳が松明の灯りを反射して、朔の暗闇でもわかるほど綺麗だ。舌ったらずな声で、名前を呼ばれるとドキドキする。しかし、男だ。親彬に上司と同じ趣味はない。上司の毒牙からは守ってやるが、自分が同じ土俵に上がるつもりはなかった。
「尊は何歳なんだ?」
「今日で十六歳です」
「十六歳?じゃあ、元服は?」
「僕のいた時代は元服とか無かったからな…。強いてゆうなら、二十歳の成人式?」
「何だそれは?…」
(随分習慣が違うんだな。とても奇妙な着物を着てる。それに、あれは何だ?背中には背負子や、籠ではない大きな物を背負っている。これは大変だな。それにしても、直視できない…)
違う意味で恥ずかしいのだ。
(誰かに見られる前に、早く冠を被せてやろう。元服してる年齢なら、髻を結っても良いだろ)
「あの…親くんは、何歳なの?」
(親くん…何か、ぐっとくるものがあるな…)
「俺は、二十四歳」
「そうなんだ」
「尊、親で良い」
「う、うん。親…へへっ」
「……っ…」
(全く…、無邪気だな)
どうやって高辻小路の屋敷まで帰るか悩む。この森の近くに牛車を停めてあるけれど、一刻も早く屋敷に連れ帰りたい。万が一、検非違使に止められたらたまらない。
翠と梔子を出し、牛車を任せた。尊は『あっ、琥珀くん…』と呟いたが手を口に添えてそれ以上何も云わなかった。翠と梔子ははしゃぎながら走り出す。朱にも驚いた様子はなかった。混乱していたならこんなに落ち着いた対面はできなかっただろう。流石、未来からこの怪異を解決するために呼ばれただけはある。
「何?」
「親、で良いよ、尊」
「えっ?良いの?」
親彬は思わず提案した。
(なんて可愛いんだ。元服もまだなのだろうか?こんな幼い子が、あの妖怪相手に何をしてくれるのだろう?元服も未だだから、髪も下ろしたままなのだろうか?)
翁からは側におけと云われただけ。この未来からの客人がどんな力を持っているのかは知らない。そもそも、力ではないと聞いている。
親彬は見惚れた。黒曜石の瞳が松明の灯りを反射して、朔の暗闇でもわかるほど綺麗だ。舌ったらずな声で、名前を呼ばれるとドキドキする。しかし、男だ。親彬に上司と同じ趣味はない。上司の毒牙からは守ってやるが、自分が同じ土俵に上がるつもりはなかった。
「尊は何歳なんだ?」
「今日で十六歳です」
「十六歳?じゃあ、元服は?」
「僕のいた時代は元服とか無かったからな…。強いてゆうなら、二十歳の成人式?」
「何だそれは?…」
(随分習慣が違うんだな。とても奇妙な着物を着てる。それに、あれは何だ?背中には背負子や、籠ではない大きな物を背負っている。これは大変だな。それにしても、直視できない…)
違う意味で恥ずかしいのだ。
(誰かに見られる前に、早く冠を被せてやろう。元服してる年齢なら、髻を結っても良いだろ)
「あの…親くんは、何歳なの?」
(親くん…何か、ぐっとくるものがあるな…)
「俺は、二十四歳」
「そうなんだ」
「尊、親で良い」
「う、うん。親…へへっ」
「……っ…」
(全く…、無邪気だな)
どうやって高辻小路の屋敷まで帰るか悩む。この森の近くに牛車を停めてあるけれど、一刻も早く屋敷に連れ帰りたい。万が一、検非違使に止められたらたまらない。
翠と梔子を出し、牛車を任せた。尊は『あっ、琥珀くん…』と呟いたが手を口に添えてそれ以上何も云わなかった。翠と梔子ははしゃぎながら走り出す。朱にも驚いた様子はなかった。混乱していたならこんなに落ち着いた対面はできなかっただろう。流石、未来からこの怪異を解決するために呼ばれただけはある。
1
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
孤独な蝶は仮面を被る
緋影 ナヅキ
BL
とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。
全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。
さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。
彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。
あの日、例の不思議な転入生が来るまでは…
ーーーーーーーーー
作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。
学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。
所々シリアス&コメディ(?)風味有り
*表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい
*多少内容を修正しました。2023/07/05
*お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25
*エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる