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黎明

04

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急に空気が変わった。

結界の中。その中にもう一つ御神木を囲むように、膜があるような感覚。それがぶわりと揺れた。強い風が二人を囲むように吹く。咄嗟に目を閉じて風をやり過ごす。風が止み、ゆっくりと目を開けると、そこには見慣れた式神が立っていた。

「ルビーくん?」

たけるがこの護尊まもりのみこと神社に来る前からここにいる式神。三体いるいる式神はひとしが使役しているのではなく、この神社と共にある存在らしい。
その三体に尊は名前を付けた。ルビー、サファイア、琥珀は顔色から宝石の名前を付けただけだった。三体は、最初戸惑っていたけれど、今では受け入れてくれている。

しかし、この子は…違う?

その小鬼の胸の辺りに朱色の蝶が止まっている。ルビーには蝶が止まっていたことはない。

「はじめまして。あかと申します。わたしを見ても驚かれないとは。翁からこの時代は異形のものは、殊更に嫌悪されるだろうと云われましたのに」
「嫌悪なんかしないよ?はじめまして、賀茂尊です」

尊や仁以外の人が見れば驚くし、恐れる存在だ。いや、そもそも見ることは叶わない。

「はじめまして、賀茂仁です」

二人に向かい朱と名乗った小鬼は丁寧に腰を折りお辞儀をした。尊の腰くらいの背丈はルビーたちと同じで、見れば見るほど似ている。色も模様も違うけれど、着ている物も同じ。神主が祈祷の際に着る衣装…所謂狩衣である。

「こうしてお待ち頂いているとは…どう云うことなのでしょう……。確かに……」

ブツブツと呟き、悩みだした。

「あっ…」
「な、何?」
「なるほど…」
「えっ?」

一人で悩み、一人で解決した。この場合、一人と表現して良いのかはわからない。

「では、説明は必要ないのですね?」
「はい」
「良かったです。嫌がられれば、無理やりと思っていたのですが、それは嫌だったのです」

そして、尊と仁を見比べ、尊を見た。

「尊さまですよね?」
「はい…僕です。あなたが、僕を連れていってくれるんですね?」
「はい。準備も済んでいるようですね」
「あっ、はい」

慌ててリュックを背負った。

「良いですかな?行きますよ」
「はい。お願いします」

(いよいよだ!)

仁を見て一礼すると、仁も同じように礼をとる。頷き合い、無言で最後の別れの挨拶をした。

御神木の前に立つ。

御神木に触れる。

尊と朱を風が包む。

身体がふわりと浮いた。
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