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黎明
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「で?どうだった?」
賀茂親彬は上司である陰陽頭、安倍雅季と陰陽寮の一室で向かい合って座っている。雅季の後ろには美貌の青年が控え、親彬の横には二匹の小鬼が戯れる。
「はい。…こら、おとなしくしろ」
翠の小鬼が梔子の小鬼にちょっかいを仕掛ける。
「はぁ…、翠、戻れ」
「らしくないな」
「面目無いです。翠は落ち着きがなくて。翁の話ですが…」
梔子色の蝶がヒラヒラと舞い降りた。梔子の頭をひと撫でして、本題を口にする。
翁とは、星読みの力がある老師である。東山に居を構え、世捨て人のような生活をしているが、何かあれば頼りにしている先輩陰陽師だ。
「次の朔の日に、未来からこの怪奇を鎮めることのできる少年が来る…。翁は『平成』とおっしゃってました」
「未来から?何故?我々では太刀打ちできないとおっしゃるのか?!」
「そうお怒りにならないでください。翁によると、その少年には力はあるらしいのですが、解決するのは力ではないとおっしゃって…。正直云って、わたしもわからないのです」
「翁はそれだけ?……いや、そうなのだろう。翁がおっしゃるんなら」
雅季はそれきり声を発せず、半刻ずっと何かを考え込んでいた。その後ろでは美貌の式神が心配そうな顔で控えていた。
その間、親彬は間が持たず一旦退出した。
「どうなってるんだよ!まったく」
親彬だって、自分たちじゃ力不足だと云われたみたいで腹立たしい。
しかし、未来の少年に興味が無いはずはない。翁はその少年について、親彬に託した。御札を数枚渡された。親彬がその御札に『平成』と念じながら力を込めると何者かの気配を感じた。その気配は強く、ドクドクと脈打つような力強さを感じる。
次の朔の日まで後十日。
宮中では新年の準備で騒がしく、自分の運命までもが動き始めたような高揚感が親彬に去来した。
ーーーーーーーーーー
このお話は、上皇さまが退位される事が発表される前に書いたお話です
現在であって、今現在でない…多少違和感を感じるかもしれませんが、よろしくお願いしますm(_ _)m
賀茂親彬は上司である陰陽頭、安倍雅季と陰陽寮の一室で向かい合って座っている。雅季の後ろには美貌の青年が控え、親彬の横には二匹の小鬼が戯れる。
「はい。…こら、おとなしくしろ」
翠の小鬼が梔子の小鬼にちょっかいを仕掛ける。
「はぁ…、翠、戻れ」
「らしくないな」
「面目無いです。翠は落ち着きがなくて。翁の話ですが…」
梔子色の蝶がヒラヒラと舞い降りた。梔子の頭をひと撫でして、本題を口にする。
翁とは、星読みの力がある老師である。東山に居を構え、世捨て人のような生活をしているが、何かあれば頼りにしている先輩陰陽師だ。
「次の朔の日に、未来からこの怪奇を鎮めることのできる少年が来る…。翁は『平成』とおっしゃってました」
「未来から?何故?我々では太刀打ちできないとおっしゃるのか?!」
「そうお怒りにならないでください。翁によると、その少年には力はあるらしいのですが、解決するのは力ではないとおっしゃって…。正直云って、わたしもわからないのです」
「翁はそれだけ?……いや、そうなのだろう。翁がおっしゃるんなら」
雅季はそれきり声を発せず、半刻ずっと何かを考え込んでいた。その後ろでは美貌の式神が心配そうな顔で控えていた。
その間、親彬は間が持たず一旦退出した。
「どうなってるんだよ!まったく」
親彬だって、自分たちじゃ力不足だと云われたみたいで腹立たしい。
しかし、未来の少年に興味が無いはずはない。翁はその少年について、親彬に託した。御札を数枚渡された。親彬がその御札に『平成』と念じながら力を込めると何者かの気配を感じた。その気配は強く、ドクドクと脈打つような力強さを感じる。
次の朔の日まで後十日。
宮中では新年の準備で騒がしく、自分の運命までもが動き始めたような高揚感が親彬に去来した。
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このお話は、上皇さまが退位される事が発表される前に書いたお話です
現在であって、今現在でない…多少違和感を感じるかもしれませんが、よろしくお願いしますm(_ _)m
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