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エピローグ

03

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今日も駅前のいつものベンチで待ち合わせ。

あれから時々遠藤くんは一緒に飲みに行こうと強引に豊についてくる。噂を流すぞと脅されてるのかと思ったけど、僕と二人きりじゃないからと豊が渋々一緒に飲みに行くことを許したらしい。

「隆は俺しか見てないからさ。さっさと諦めれば良いんだよ」
「郷ちゃん、土屋に泣かされたら俺のとこ来いよ」
「隆が泣くわけないじゃんか?もし泣いても、俺の胸で啼くからご心配なく」
「!……それ…」
「ちょっと…」

いくら個室と言っても完全に声まで遮断されるわけない。テーブルの側を通る店員はメニューを見てるだけで『ご注文ですか?』と仕事熱心に聞いてくるくらいすぐ近くに居るのに…。

「止めてよ」
「そうだぞ、土屋。郷ちゃんが嫌がってるじゃないか」
「それは、俺の台詞だ。お前は黙れ」

ダメだ。
いつまでも続きそうな言い争いのような会話に呆れる。
それでも、仕事の愚痴を言い合ったり、お酒の好みなんかは合うようで結構楽しそうに飲んでる。そんな二人を見てるとこっちまで楽しくなる。

時々僕を抱き寄せ頬や髪にキスするから困る。その度に遠藤くんは口をパクパクと動かし豊を睨んだりする。

豊はそんな遠藤くんを見て喜んでる。

そんなに心配しなくても僕の気持ちは豊のものなのに。

遠藤くんと別れ二人でマンションに帰る。
まだ、誰もここには招いていない。

二人きりのエレベーターの中でキスをする。豊が監視カメラに背を向けて僕を隠し、触れるだけのキス。
エレベーターを降りて急いで部屋に向かう。

「こんばんは」
「こんばんは。いつも仲良いね」

ちょうどお隣のお兄さんが鍵をかけて出かけるところだった。二十代後半に見えるけど、実年齢は不明だ。
いつもお洒落な服で、すらっと背が高くてかっこいい。勿論豊の方がかっこいいけどね。

「今からお出かけですか?」
「ああ、呼び出されたんだ。参るよ」

言葉とは違い、笑顔で答えるからきっとそこまで嫌じゃないんだろうな。

僕たちの部屋は一番奥の角部屋だから同じフロアーの住人はたまにすれ違ったりする。お隣さんも顔見知りだ。

「行ってらっしゃい」
「…行ってきます」

片手を少し上げて出かけて行った。話しかけるなオーラ全開の人もいるからそんな人には話しかけないけど、お隣さんはきちんと返事をしてくれるからこちらも挨拶は必ずする。







こんな当たり前の日常を豊の隣で過ごせることがとても嬉しい。

今度太田くんや麻里ちゃんを招いてウチ飲みなんかも楽しいだろうな。
二人とはたまに一緒に飲みに行く。心配だったけど、打ち明けた日のように普通に接してくれるから安心して四人で会うことができる。




豊が玄関扉を開けて僕を待っててくれる。

「早く来いよ」
「あっ、待ってよ」

満月が綺麗に輝いてる。

これから先、不安な夜もあるだろう。喧嘩もしてしまうかもしれない。

でも、そんな時でも…、キスで起こされたら不安や不満は消えるだろう。

僕が悪かった時は、ごめんなさいの気持ちを込めてキスで起こしてあげよう。きっと直ぐに仲直りできる。

「隆、月が綺麗だな」

あっ、僕と同じこと考えてた?

顔を見合わせて笑い、手を差し出すと繋いでくれた。


END
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