上 下
41 / 45
第七章

06

しおりを挟む
豊はその片想いの長さが気になったみたい。

僕にしてみれば、アイドルを見て喜ぶ的な叶わないとわかっていて見てるだけの存在だった。
そこのところは上手く伝えられない。

何も心配することないといくら言っても、心配なんだと言われる。それは僕には嬉しいことで、こんなにも嫉妬してくれるって事は僕を取られたくないって思ってくれてるって事で…凄く嬉しい。

「一度、会うか?」

ずっと断ってる食事を、豊と一緒ならと三人で会う約束をした。

金曜の夕方はいつもと違う慌ただしさがある。飲みに行くサラリーマンや旅行にでも行くのかスーツケースを引いて歩く人。

豊と遠藤くんが歩いて来るのを見ていると不思議な気がした。
本当に言うのかな。仕事に差し障りは出ないだろうか?

「お待たせ。行こっか?」

遠藤くんから離れるように豊を挟んで歩く。豊は僕に予約した店はこっちだよと話しかけながらさりげなく遠藤くんから僕を遠ざける。

それは…まあ、あからさまな感じに見えたかもしれない。でも、別に身体に触れるわけでもないし、気にならない人ならスルーするくらいの避け方だったと思う。

「お前ら…」

遠藤くんが今のやり取りを気にする。

…やっぱり…今のを不審に思うなら、豊が言うように遠藤くんは僕のことが…僕と豊の関係が気になるのかな?

今日は仕事どうだった?と芝居がかって話しながら予約してある店に入る。

個室に案内され、少しのつまみとビールを注文する。席は僕の隣が豊で僕の前に遠藤くんが座る。

直ぐにビールとつまみが運ばれてくると、会話は無くぎこちない。

険悪な雰囲気になっていく。

豊は遠藤くんが何か言うのを待っている。
遠藤くんも様子を伺うように何も喋らない。

もう耐えられない。

「あ…」
「何なんだよ!?」
「何がだよ?」
「お前ら何?」
「お前こそ何だよ?」
「俺は…」
「遠藤は隆と、…どうしたいんだ?二人で会ってどうするつもり?」
「土屋に言わなくてもいいだろ?お前、郷ちゃんの保護者?」
「いや、違う」
「そうだよ!何で、お前がここに居るかがわからねぇよ」
「あのさ…」
「隆は黙ってて?」

遠藤くんに対する口調と明らかに違う優しい態度と頭を撫でる手は遠藤くんを煽っているようだ。

「お前らどう言う関係?」

ほら…。
二人のことを言うつもりでここに来たけど僕は言わなくてもすむなら言わない方が良いと思うんだ。だって豊と同じ会社だし色々と問題があるよ。

「それは後だ。遠藤は隆のことが好きなのか?」
「えっ…いや、…あの…」

今までの勢いがなくなり急に声も小さくなる。前のめりで話してたのにどかっと背もたれに背中を預けて頭を抱える。…いや、頭は抱えてないけど今にも手が行きそう…。

「わからないんだ…。高二の時、千明に告白した時から、なんかすげーモヤモヤしてて…好きだと思った。あっ、千明がな!
千明は郷ちゃんによく似てる…。卒業して、郷ちゃんに会えなくなったらなんか千明とも自然に別れてた。千明の噂は聞いてたよ。友だちからも直ぐに別れるんじゃないかって告る前から言われてた。だから、一年続いたのを自慢したりしてさ…」
「で?隆のことはその千明の代わり?」
「違う!」
「じゃあ、千明が隆の代わりだったのか?」
「……わからないんだ。久しぶりに郷ちゃんに会うと、千明と二人で会ってた時より何てか…嬉しいんだ。最初はさ…ああ、俺ってまだ千明のことが好きなのかなって思ったりもしたよ。けど、なんか違うんだ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。

やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。 昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと? 前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。 *ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。 *フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。 *男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

塚野真百合
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

【クズ攻寡黙受】なにひとつ残らない

りつ
BL
恋人にもっとあからさまに求めてほしくて浮気を繰り返すクズ攻めと上手に想いを返せなかった受けの薄暗い小話です。「#別れ終わり最後最期バイバイさよならを使わずに別れを表現する」タグで書いたお話でした。少しだけ喘いでいるのでご注意ください。

噛痕に思う

阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。 ✿オメガバースもの掌編二本作。 (『ride』は2021年3月28日に追加します)

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

処理中です...