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第七章

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豊はその片想いの長さが気になったみたい。

僕にしてみれば、アイドルを見て喜ぶ的な叶わないとわかっていて見てるだけの存在だった。
そこのところは上手く伝えられない。

何も心配することないといくら言っても、心配なんだと言われる。それは僕には嬉しいことで、こんなにも嫉妬してくれるって事は僕を取られたくないって思ってくれてるって事で…凄く嬉しい。

「一度、会うか?」

ずっと断ってる食事を、豊と一緒ならと三人で会う約束をした。

金曜の夕方はいつもと違う慌ただしさがある。飲みに行くサラリーマンや旅行にでも行くのかスーツケースを引いて歩く人。

豊と遠藤くんが歩いて来るのを見ていると不思議な気がした。
本当に言うのかな。仕事に差し障りは出ないだろうか?

「お待たせ。行こっか?」

遠藤くんから離れるように豊を挟んで歩く。豊は僕に予約した店はこっちだよと話しかけながらさりげなく遠藤くんから僕を遠ざける。

それは…まあ、あからさまな感じに見えたかもしれない。でも、別に身体に触れるわけでもないし、気にならない人ならスルーするくらいの避け方だったと思う。

「お前ら…」

遠藤くんが今のやり取りを気にする。

…やっぱり…今のを不審に思うなら、豊が言うように遠藤くんは僕のことが…僕と豊の関係が気になるのかな?

今日は仕事どうだった?と芝居がかって話しながら予約してある店に入る。

個室に案内され、少しのつまみとビールを注文する。席は僕の隣が豊で僕の前に遠藤くんが座る。

直ぐにビールとつまみが運ばれてくると、会話は無くぎこちない。

険悪な雰囲気になっていく。

豊は遠藤くんが何か言うのを待っている。
遠藤くんも様子を伺うように何も喋らない。

もう耐えられない。

「あ…」
「何なんだよ!?」
「何がだよ?」
「お前ら何?」
「お前こそ何だよ?」
「俺は…」
「遠藤は隆と、…どうしたいんだ?二人で会ってどうするつもり?」
「土屋に言わなくてもいいだろ?お前、郷ちゃんの保護者?」
「いや、違う」
「そうだよ!何で、お前がここに居るかがわからねぇよ」
「あのさ…」
「隆は黙ってて?」

遠藤くんに対する口調と明らかに違う優しい態度と頭を撫でる手は遠藤くんを煽っているようだ。

「お前らどう言う関係?」

ほら…。
二人のことを言うつもりでここに来たけど僕は言わなくてもすむなら言わない方が良いと思うんだ。だって豊と同じ会社だし色々と問題があるよ。

「それは後だ。遠藤は隆のことが好きなのか?」
「えっ…いや、…あの…」

今までの勢いがなくなり急に声も小さくなる。前のめりで話してたのにどかっと背もたれに背中を預けて頭を抱える。…いや、頭は抱えてないけど今にも手が行きそう…。

「わからないんだ…。高二の時、千明に告白した時から、なんかすげーモヤモヤしてて…好きだと思った。あっ、千明がな!
千明は郷ちゃんによく似てる…。卒業して、郷ちゃんに会えなくなったらなんか千明とも自然に別れてた。千明の噂は聞いてたよ。友だちからも直ぐに別れるんじゃないかって告る前から言われてた。だから、一年続いたのを自慢したりしてさ…」
「で?隆のことはその千明の代わり?」
「違う!」
「じゃあ、千明が隆の代わりだったのか?」
「……わからないんだ。久しぶりに郷ちゃんに会うと、千明と二人で会ってた時より何てか…嬉しいんだ。最初はさ…ああ、俺ってまだ千明のことが好きなのかなって思ったりもしたよ。けど、なんか違うんだ」
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