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第七章

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「あの…反対されてるんじゃないんですか?」
「そうね…時々考えるの。幸せな結婚って何かしらって。豊が幸せなら、隆之介くんが豊を幸せにしてくれるならわたしは応援するわ」

後から聞いた話だけど、夏樹さんは子どもができなかったそうだ。旦那さんの方に問題があったのだけど、それがわかるまでは酷い嫁いびりがあったそうだ。

原因がわかってからは無くなったらしいけど、姑との仲は最悪らしい。

向こうは向こうの言い分があるだろうけど、虐められた方はそうはいかない。

旦那さんは自分に負い目があるからってだけじゃなく、原因がわかる前から夏樹さんには優しくて虐めから守ってたそうだ。
二人で豊のことを自分たちの子どものように可愛がってて、よく三人で旅行にも行ってたんだって。

豊もそんなことがわかってるから夏樹さんとのデートは必ず行く。


その日は二人で夏樹さんの買い物に付き合って映画を見た後、晩御飯を一緒に食べた。

僕は邪魔じゃないのかと思ったけど、夏樹さんはあの日見てしまって誤解したように僕の腕に腕を絡ませる。

チラッと豊を見るとごめんと謝るように顔の前で手を合わせた。

夏樹さんには言えないけど、母さんと街を歩いてる感じ。母さんはこんなに若くないし、夏樹さんはお母さんって言うより親戚のお姉さんって雰囲気だけど。

自分の性について考え始めた頃から親とは距離を取った。極端なことはしてないからきっと成長の証だと思ってくれてると思う。
だからこんなふうに対等に歩いたことはない。小さい頃に手を引いてもらっていた時とは明らかに違う。

夏樹さんは僕より身長は少し低いけど、ヒールを履いているからその差はほとんどない。

別れ際に今度はローヒールで来るわねと片目を瞑る。次回も僕の腕をリクエストということか…。
まあ、嫌じゃないけどね。


四月から会う度、僕のことばかり…って、夏樹さんから聞いた時はほんと嬉しかった。僕が豊のことを意識し始めた時に、豊も僕のこと気にしてくれてたなんて…。そう言えば、些細なことにも気付いてくれてた。

僕を夏樹さんに会わせたくないって思ったのは、からかわれたら嫌だなって思っただけなんだって…。



◇◇◇◇◇



この頃時々遠藤くんからラインが届く。
メアドは変えてたみたいだけど、電話番号は変わってなくてそっちの方が便利だろうと勝手に送りつけてくる。

もう変な誤解はされたくないから、それを全て豊に見せる。遠藤くんには僕たちが付き合ってるとは言ってない。だから見せてることも言えない。
だって、友だちに別の友だちから送られてくるもの全てを見せるって変だから。

千明と遠藤くんは大学入学前に別れたそうだ。僕と会わなくなって直ぐに別れたのかな。

最後に会ったのは卒業式だった。それからも誘われたけど、一人暮らしの準備が忙しいとその全てを断った。学校で会うこともないし、実際忙しかった。

その後直ぐに別れてたのか…。千明にしては一年は長続きしたと思う。



遠藤くんがしきりに二人で飲みにと誘ってくる。

最近は待ち合わせ場所も変えている。時にはいつものスーパーの入り口だったりする。僕を遠藤くんに会わせたくないと思ってるのか、毎日すごく気にしている。


「隆…もう言ってもいい?」

二人でソファーに座り、テレビを見ている。

僕の髪を梳くのを止めて膝に乗せて向かい合って座る。

「誰に何を言うの?」
「遠藤に、俺たちが付き合ってるって」
「えっ?でも、同じ会社だよ?」
「ダメだ。耐えられない」
「何が?」
「遠藤から送られてくるの読んでると、明らかに隆に気がある。遠藤が隆の従兄弟と付き合ったのも…もしかしたら……。
隆は好きだったんだろ?二年も…。だから…」

誤魔化しきれなかった…と言うより、嘘を吐きたくなかったから遠藤くんに片想いしていたことを話した。
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