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第七章

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「可愛いわね。豊、今度のデートは隆之介くんをお借りしようかしら」
「ちょ!夏樹さん、約束が違うだろう?」
「あら、そんな口の利き方してもいいのかしら?わたしを味方に付けておいた方が豊にもいいと思うのよ…ねえ?どうかしら、隆之介くん?」

そんな話を急に振られても困るよ…。豊を見るとこちらも困った顔をしている。

「あの、豊と一緒なら…」
「そう?二人でエスコートしてくれるの?それもいいわね」
「ちょっ!隆…」
「二人の方が安心するんじゃないの?お互い。ねえ?」
「はい…」

……あれ?
これは、はいと返事したらおかしかったのかな?

いや、その前に夏樹さんの顔を見た途端、店から逃げるように出て行ったこともただの友だちなら説明できない…。

「素直なのね。可愛いわ…。豊…」

二人で目配せして、豊が頷いた。

「隆之介くん。あのね、新しいマンションを建てる計画があるの。そのマンションに引越さない?」

えっ?ルームシェアに問題があるのだろうか?僕だけ引っ越して、豊と離れてしまうのか…。オーナーにダメだと言われれば受け入れるしかないのかな?

離れたくない。
恋人になった時からずっと、朝はキスで始まる。おはようと言う前にキスされるから、どんなに気掛かりなことがあっても乗り越えられた。

遊びに行けばいいか…仕方ないよな。別れるわけじゃないんだから…。段々気持ちが沈んでいく。

「わ、わかりました」

顔を上げられない。

泣いてしまいそう。
さっき泣いたから涙が直ぐそばでスタンバイしていたみたい。

でもこんなところで泣けない。
泣いてる理由は夏樹さんに知られてはいけないだろう。これ以上疑われるようなことはしてはいけない。

叔母さんなら反対する。

あっ、そうか…バレたんだ。
知っていたから、僕の動揺の意味をわかった上で落ち着いた対応だったのか…。

反対されたから…だから豊は夏樹さんに会わせたくなかったんだ。

別れるように言われたんだ。離れて暮らすのは別れる準備。

「ちょっと、夏樹さん!隆がグルグルしてる。違うから、一緒に行くんだよ?
本当、俺に言葉が足りないとか言っといて、夏樹さんも大概だよな」
「えっ?一緒?」

驚いて発した言葉と顔を勢いよく上げたから涙がポロリと溢れた。

「ああ、また泣く」

豊が涙を拭いてくれた。

「ごめんね…。意地悪した訳じゃないのよ?新しく分譲マンションを建てるから、前から豊にはどう?って聞いてたの。
そしたら、最近になって一緒に住みたい人がいるって言うじゃない。でもほら、分譲なら家賃とは違うでしょ?…ということは結婚したい人がいるのかなって思ったのよ。でも四月から会うたびに隆之介くんの話ばかりするからそうじゃないかなって…。先月会った時なんか呼び方まで変わってて、早く帰りたいって煩かったわ。
今回、デートを二ヶ月に一度って餌で隆之介くんに会わせて貰ったのは、それを確かめたかったの」

やっぱり、反対なのか…そりゃ甥には普通に結婚して欲しいものだよね。僕には無理だけど…。

でも……豊は僕と一緒にその新しいマンションに引越したいと思ってるの?
叔母さんに言っても平気ってこと?
反対されても僕と一緒に?

豊を見ると心配そうな顔で僕を見てる。

「あの…豊さえ良ければ僕は一緒に…一緒にローンを組みたいです」
「えっ?ローン?ははっ…隆…」

なんか笑われてしまった。夏樹さんも笑ってる。

「お、おかしかった?」
「いや、おかしくないよ」
「二人の気持ちはわかったわ」
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