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第七章

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土曜の夜、二人でソファーに座りテレビを見ている。

紅茶とクッキーをテーブルに置いて豊に抱きついたり膝枕してもらったりして過ごすのが僕のお気に入り。
でもあの、嫉妬した豊にここで襲われてから「たまには違うシチュでってのも燃えるよな」なんてキスの合間に言われれば顔を赤くしてされるままに身を任すしかできない。
恥ずかしいです。あの時は僕も……。

「隆、明日会って欲しい人がいるんだ。いい?」

真剣な顔で言われたら緊張しちゃう。

「えっ、誰?」
「えっと…やっぱり嫌だな…」

豊から会って欲しいと言ってきたのに何故嫌なのだろう?

「あのな、このマンションのオーナー」
「オーナー…あっ、挨拶ってしといた方が良かったの?ごめん。気付かなくって」

何か買って持って行った方がいいのかな?大学の時のアパートは管理会社が全ての手続きをしていて、大家には挨拶不要と言われたから入る時も出る時も何もしなかった。
そう言えば、ルームシェア始める時に大家には了解を得ていると言ってた。何で気付かなかったのか?

「いや、それはいいんだ。ただ会うだけで…問題ない」

少し様子のおかしな豊はぎこちなく笑い、憂鬱そうな顔をする。

その夜もただ僕を抱きしめ甘えるように首筋に顔を埋めて時々「はぁ~」と溜息を吐く。

「どうしたの?」って聞いても首筋に鼻を擦り付けるように、まるで『いやいや』とするようにして「何でもない」と言う。熱もないようだし、身体の調子が悪いわけでもないみたい。

甘える豊は珍しい。
いつも甘えさせてもらってるから今日は僕が頭撫で撫でして、髪にキスをして甘えさせてあげる。豊がゆっくり眠れるようにいつまでも撫でてあげた。
朝は僕がキスで起こしてあげよう。







二人でマンションの近くの洋菓子店の奥にある喫茶スペースでそのオーナーを待ってる。

なんか大袈裟な気がする。
ただ挨拶するだけでこんなところに来るものだろうか?管理事務所とかもっと事務的な感じを想像してたからなんか緊張しちゃう。

豊はよくここに来ているようで、可愛いエプロンの店員に熱い視線を送られながら慣れた様子で片手を挙げて奥に進むから嫉妬しちゃうよ。豊は大学の時からあのマンションに住んでるから四年の間に何度も来たのだろうか?

僕とケーキを買うためにもここに来たことはない。駅前から少し離れた住宅街にあるこの店は知らなかった。
豊はケーキとか甘いものは嫌いじゃないけど、店員と顔見知りになる程通うのか?サンドイッチなどの軽食もあるみたいだからランチで利用してたとか?
それか、誰か目当ての店員がいるのかな…。

「何心配してんの?隆が一番可愛いからそんな顔しないの」

耳打ちするように小声で囁いて、離れる時に少しだけ触れる唇にビクッとなった。

「なっ…っ…」

昨日の夜が嘘のように落ち着いた様子はここの店員が見惚れるだけのことはある。

心配してるってバレてたんだ…。僕の顔を見て直ぐにフォローしてくれた。でもさ、この人が僕の恋人なんですよ!かっこいいでしょ?って自慢したくなるよね。

俯いてにやけた顔を標準装備に戻していると、「こっち」と豊が誰かに声をかけた。

慌てて顔を上げると…。

「えっ…?」

嫌!
ガタッと椅子を倒して立ち上がった。

二人に見つめられて居た堪れない。
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