おはようの挨拶はキスで

茉莉花 香乃

文字の大きさ
上 下
34 / 45
第六章

04

しおりを挟む
「えっ?鍵で開けたんだけど?」
「その鍵はどうしたんですか?盗んだんですか?警察呼びますよ?」
「ちょっ、つっちーに連絡してよ。あいつ、拗ねてさ…連絡先全部変えやがったから俺からはできないんだ。前に会社の前で待ち伏せしたら怒られたし…」
「今日は遅くなるそうです。今日のところはお引き取りください。あっ、鍵は置いていって下さいね」
「なんでだよ?鍵取られたら、俺もうここには入れないだろ?」
「あ、当たり前じゃないですか!さあ!」

手を出して受け取ろうとするも、不法侵入男は渡すつもりはないらしい。

「では、仕方ないですね」

携帯を取り出し警察に電話をかけようとしている僕に慌てた男が腕を掴む。

「つっちーに聞いてくれたらわかるから。俺、西村健介。聞いてみて?今日泊まるとこないんだ。連絡してよ」

帰ろうとしない男…西村に呆れる。どうして鍵を持っているのか?豊が渡したのだろうか?元彼なら持ってても可笑しくないけど…。
もしかしたら、以前同居していた?

豊はそんなこと言わなかったしな…。太田くんが言ってたのは、前は高校の同級生と住んでた…西村は高校の終わりから付き合ってた…。太田くんが二人の仲を友だちだと思っていても不思議はないから…。

やっぱり、僕の前の住人なのだろう。

でも何故鍵を返してもらわなかったんだろう?
嫌だな…。それでも鍵を返さないのはおかしいし…。鍵を持たれたまま帰られるのは困るので、豊に連絡した。

仕事中だったら出られないかもしれないと思ったけど、直ぐに電話に出てくれた。

『どうした?珍しいな電話かけてくるなんて』
「ごめん、仕事中に」
『ああ、今は大丈夫』
「今、帰ったら、西村って人が勝手に部屋に上がってて、鍵持ってるし、帰らないし…困ってるんだけど」
『健介が?』
「あの時の人だよね…?」
『鍵…あっ、そう言えば返してもらってなかった』
「なんか今日泊まるとこないからって、帰らないんだ」
『隆、悪い。俺もうちょっと帰れないんだ。仕事終わったら直ぐ帰るから。追い出せたら追い出しても構わない』

ため息しか出ない。

厄介なことにイライラする。

「つっちー、直ぐ帰るって言ったろ?」
「仕事がもう少しあるので直ぐには帰れないそうです。もう一度言いますが、鍵を置いて出て行って下さい」
「えー、つっちー帰るって言ったんだろ?俺に会いたいに決まってる」
「なんであなたに会いたいんですか?」

なんかこの人と話したくない。

「んー、つっちーは俺のこと好きだから」

それは前のこと。

今は僕のことが好きなはずだ。
この前も気持ちは僕のって言ってくれた。その言葉を信じたんだ。あの女の人の事はまだわからないけど、目の前のこの男はもう彼でしかないんだ。

こんな不愉快な奴の相手はしたくないから、晩御飯の準備をしようと買ってきた食材を置いて、着替えに部屋に入った。

嫌だな~。
料理を始めると、「何作るの?」と無邪気に聞いてくる。

「お前の分は無いから。食べたかったら近くのコンビニでも行って…いや、ファミレスにでも行って食べてきたら。ついでにどっかホテルでも泊まってこいよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

一夜限りで終わらない

ジャム
BL
ある会社員が会社の飲み会で酔っ払った帰りに行きずりでホテルに行ってしまった相手は温厚で優しい白熊獣人 でも、その正体は・・・

あの頃の僕らは、

のあ
BL
親友から逃げるように上京した健人は、幼馴染と親友が結婚したことを知り、大学時代の歪な関係に向き合う決意をするー。

ルームシェアは犬猿の仲で

凪玖海くみ
BL
几帳面なエリート会社員・望月涼介は同僚の結婚を機に家を失う。 新たな同居人として紹介されたのは、自由奔放なフリーター・桜庭陽太。 しかし、性格が正反対な二人の共同生活は予想通りトラブル続き⁉ 掃除、食事、ルール決め——ぶつかり合いながらも、少しずつ変化していく日常。 犬猿の仲なルームメイトが織りなす、ちょっと騒がしくて心地いい物語。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

離したくない、離して欲しくない

mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。 久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。 そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。 テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。 翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。 そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

処理中です...