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第四章

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今日、豊とは別々に帰った。

一人で帰った日も食材を買ってきて料理をする。簡単なものから練習している。大学の時に自分の分を作ってた時は適当にしてたから、上達しなくて途中で嫌になった。
でも今は豊が食べてくれると思うと気合が違うからか、少しずつ上達してると思う。

カレーを始めて作った時は、人参が硬くて、玉ねぎがシャキシャキして、じゃがいもが歯に当たった。肉は炒めたから大丈夫だったけど、ルーを入れる前にしっかり煮込まなきゃいけなかったんだな…知らなかった。

今日は白菜と鶏肉のクリーム煮を作る。最初、白菜とベーコンのクリーム煮を教えてもらったけど、それだとボリュームがなくって他にもメインを作らないといけない。じゃあ、鶏肉にすれば良いって教えてくれたのはスーパーのパートのおばちゃんだ。

鶏肉をしっかり炒め、野菜を炒める時にバターを入れて、コンソメスープでしばらく煮込む。小麦粉を溶かした牛乳を入れれば上手にできる。
初めて作った時もまあまあの出来だった。今回で二回目。この為に百均で泡立て器を買った。小麦粉が玉にならないように気をつければ後はゆっくりと火を入れて、塩コショウして出来上がり。ここでもしっかりと野菜に火が通ったのを確認してから牛乳を入れないと失敗してしまう。
しめじや人参を入れたり、じゃがいも、ブロッコリー、れんこんなんかも入れたら美味しいって野菜売り場の人が教えてくれた。れんこんは僕にはハードルが高いような気がしたから、しめじ、人参、ブロッコリーを入れることにした。

料理を作るため材料を買ってきたけどコンソメがないのを忘れてた。コンソメがないと作れない。鶏肉も野菜も切ってしまった。

料理が得意ならここから違うものを作れるかもしれないけど、僕には無理。

だから急いでスーパーに買い物に出た。早足で歩いて片道五分くらいだから便利だよね。
コンソメを買ってマンションに帰る。エントランス前の植栽の中の『カーサ    サマーツリー』と書かれたマンション名が見えてくると、誰かが言い争う声がする。

聞きなれた声に隠れるように近づいた。

「…お前、いい加減にしろよ」
「だって、つっちー、俺泊まるとこないからさ…今日だけ、な?いいだろ?」
「ダメだ。帰れ!どうせ今の奴と喧嘩しただけだろ?」
「妬いてるの?まだ、俺のこと好きだろ?」
「お前のことなんかもう忘れた。てか、思い出したくもない。ほら!」

豊はそいつの背中を押してマンションから遠ざかる。

「じゃあな、もう来るなよ」
「またまた…」

まだ何か言ってるけど聞きたくない。

豊の元彼ってことなのかな?
その男は豊よりも少し低い背で、細い身体に茶髪の短い髪。チラリと見えた胸元にはシルバーのネックレス、指にはゴテゴテと指輪があり、チャラチャラしてる感じに見えた。

何だか豊とは接点がないように思うけど、大学の時の彼なのかな?もう別れてるんなら昔のことに嫉妬しても仕方ないよね…。

男と付き合ったことあるって言ってたし。モヤモヤするけど、キッパリと断ってるのを聞いたから『まだ、俺のこと…』って言ってたのは豊の気持ちじゃないと自分に言い聞かせた。

その先の会話を聞いていた方が安心したかもしれないけど、逃げてしまったのは僕だ。

急いで部屋へ戻ると平静を装い食事の準備をする。
それから直ぐに帰ってきた豊が何事もなかったように振る舞うから、僕も何も言えなかった。

あの場で、何も気にせずにお帰りと言っておけば良かった。
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