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第三章

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それが狙いなのか僕が友だちと話してる時ばかりを狙ってやってくる。
かっこいい子と話してる時なんか突然現れて、レーダーでも備えてるのかと疑いたくなる。

そして、めでたく…かどうかは疑問だけど…付き合ってしまうのだ。その度に相手の男の子に対して申し訳ない気持ちになる。まあ、その子は僕と喋っててラッキーって思ってくれてるみたいだから何も言えないけど。
どうしてるのか知らないけど、しばらくしたら円満離婚している。

「俺が悪かったんだ…」

なんて台詞まで言わせてしまう。凄いよ。
その従兄弟…。
嫌だ。

でも、みんなが思ってるような清楚でも大人しくもないっていくら言っても信じてくれないだろう。それどころか僕が悪者にされちゃう。『何ひがんでんだよ』って言われて終わり。
知ってるのは、千明の友だちと僕だけだろうから…。
小さい頃からおもちゃ取られたり、壊されたり色々と虐められたからあまり近寄りたくはない。でも、ちょっとでも千明の悪口を言おうものなら同情の目で見られるんだ。可哀想にって…、そりゃ僕はモテないよ。けど、女にモテても仕方ないし、男にモテることもない。

「良いよ…」

仕方ないじゃないか。

それから二人は付き合いだした。いつもなら二、三ヶ月…早かったら一週間も持たずに別れるのに卒業までその仲は壊れなかった。

遠藤くん、案外見る目ないんだな。もしかしてそこがいいの?まさかね…。そんな悪趣味…。千明の猫かぶり技術が凄すぎるのか?きっとそうだ。…そうであると信じたい。

僕は一年間散々見せつけられた。千明は僕がゲイだとは知らないはずなのに、僕が先に好きになったことも知らないはずなのに事あるごとに、見せびらかすように呼び出したりするんだ。

そして、たまには三人で出かけましょうとデートにまで付き合わせる。

倦怠期なのか?
別れてしまえよ。
得意だろ?

……そんなことは言えないけれど…。

「え~嫌だよ!」

千明に断ると遠藤くんから連絡が入る。千明は僕が遠藤くんに弱いのを知ってるのか何かと遠藤くん経由で言うことを聞かせようとする。そりゃ千明に頼まれるより遠藤くんに頼まれた方が抵抗はない。でも、嫌なものは嫌なんだ。

「郷ちゃん、用事あったのか?」

ないよ!用事なんか。
見るのが嫌なだけなんだ!……とは言えない。

「うん。ごめんね」

千明とは態度が違うのは仕方ない。だってまだ好きなんだ。三年生になった時にクラスは別れてしまっても、千明を通して去年よりも喋る機会は多くなったから忘れることが出来ないんだ。誰を好きになっても実らない恋だとわかってるから、自分の恋心を無理に消すようなことはしない。できるなら二人で…と思うけどそれは無理だとわかってる。

「仕方ないよ。また今度な。千明の友だちと四人でどっか行こ」

千明の友だちも千明と変わらず猫かぶってる。僕はいつも遊ばれるからそれはちょっと遠慮したいな。

僕は郷田から郷ちゃんへ。
千明は郷田さんから千明へ。
呼び方がそれぞれ変わったけど纏う空気は雲泥の差だ。

そんなふうに上手く断れない時もある。強引な千明に無理矢理連れ回される時はなるべく二人の仲よさげなツーショットを見ないようにするんだ。

辛い思い出…。
大学は違ったし、千明ともあまり会わないようになると遠藤くんとも自然と疎遠になる。

普通の友だちとして連絡しようかと思ったこともあるけどできなかった。僕の中の好きって気持ちがある間はしてはいけないと思ったし、辛くなるだけなのはわかっていたからそれからの二人がまだ付き合っているのか別れたのかは知らない。

四年もあれば傷は癒える。思い出だよ。
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