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第二章

04

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念のためともう一つ突っ込んだことを聞いてみた。

「彼氏とかいないよな?」
「ごほっ…」

ああ、ごめん。
直球すぎたか?

「どゆこと?」

コップを置いて、咽せながらも聞いてきた。目が、目が怖いです。

「あっ、いや…」

逆に言い淀む僕。

「もしかして!隆ちゃんに手、出したのか?豊の奴!」

立ち上がろうとするので思わず腰に縋り付く。カウンターで良かった。お座敷で向かい合って座ってたんじゃ今のは止められない。

「ち、違うから!」

太田くんが大きな声を出したので、恥ずかしい。内容が内容なだけに余計に恥ずかしいよ。周りに黙礼で謝り、太田くんの頭を叩く。ペチッと叩くとその叩いたところを自分で撫でて「痛いよ」と恨みがましく睨んでくる。強く何度も瞬きして無理やり上目遣いの視線を作っても、演技してるんだろ?可愛くないよ。それに、そんなに強く叩いてないから痛くないと思うよ。

「もう、何考えてるのさ?」
「隆ちゃんがあんなこと言うからだろう?」
「そうだけどさ…」

毎晩土屋くんが僕にすることは言わない方がいいだろうか?襲われたとかじゃないし、僕は嬉しいってか待ってるくらいだし…。

「有り得ないって、そんなこと」
「いいや。前から言ってるだろ?気をつけろって」

土屋くんに『公園なんて…襲われるぞ』って言われた時、太田くんもいつも言ってたなと思ったんだ。こいつは過保護だ。ノンケの男が男に手を出すなんてない。

…だから、どうして?って思うんだよ。暴力なら…いけないことだし理解したいとも思わないけど…気にくわない、睨まれた…様々な理由をつけて暴力を振るう人はいる。
でもおでこにキスは…ね?



「麻里ちゃんに謝っておいて」

麻里ちゃんは太田くんの彼女。
今日は三人でも良かったんだけど、相談したいことがあるからって言ったら二人の方が良いだろうって太田くんが気を使ってくれた。

「おう、あいつも隆ちゃんに会いたがってたから今度は三人で…四人にするか?豊と」
「いいよ…三人で会おう」

今この状態で、土屋くんと楽しくお酒なんか飲めないよ。朝もまともに顔が見られなくて困ってるのに…。これ以上嫌われたくないから、朝だけでもなるべく自然に、避けることなく過ごすことで精一杯だ。公園事件の時の威圧的な態度は辛かった。もうあんな土屋くんは見たくない。

「そんなに嫌うなよ」
「うん…」
「じゃな。気を付けて帰れよ」
「ああ。ありがと」

嫌いじゃないから困るんだ。なんでもないなら一緒にいられる。太田くんみたいに。

今更、この気持ちを無かったことには出来ない。消化不良だろうがなんだろうが抱えて生きていかなければならない。好きになったからと言って、誰もがその気持ちを成就出来る訳じゃない。それは男女の仲も同じはず。そんなことはよくわかってるんだ。

なんとか気持ちを切り替えて、ドキドキしながらも好きな人と共に過ごせることを喜ばなくっちゃ。土屋くんにこの気持ちを気付かれちゃダメなんだ。

それからも土屋くんの寝る前の儀式は続いている。ますます眠ることができなくなった。期待してるんだ。それ以上のことがなくても良い。
寝てるふりをして抱きついてしまおうかと思わないこともないけど、そのまま寝ぼけたふりを続ける演技力は僕にはない。
寝ぼけたふりで動いたら直ぐに離れて、慌てて出て行っちゃうんだ。だから自分からは動かない。ピクッとしてしまうのは仕方ないけど、自分でその僅かな時間を短くしたいなんて思わないよ…。
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