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第二章
02
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それから何日か過ぎて、また同じようなことがあった。あれは夢じゃなかったんだとその時にわかった。
この前よりも意識がしっかりしていたのでそれが土屋くんの指であることがわかった。
しばらく動いていた指は「おやすみ」の言葉と共に離れた。部屋から出て行く土屋くんに身動きが取れなかった。もう少しで、目を開けて、大きな声を出してしまいそうだった。
硬直した身体をベッドへ預け深く長く息を吐く。常夜灯で良かった。普通の照明の下では僕のビクッとした変化は気づいたかもしれない。土屋くんも緊張していたのか慌てたように部屋を出て行くから僕をちゃんと見てなかったのかもしれない。
その日から土屋くんが僕の部屋に入ってくるまで、頬に触れてくれるまで寝られなくなった。
そう、僕は待つようになった。
だって、好きなんだ。
僕から触れることが出来ないのは少しは辛いけど、好きになった人に触れられて嬉しくない訳ない。
けど、どうして男の僕をここまで気にしてくれるのか?そりゃ心配かけた。かけたけど…そもそも、そのことも心配なんかせずに、放っておくこともできたんだ。
邪魔くさい奴って突き放すこともできたはず。知らん顔してても構わなかったはずなんだ。男のほっぺなんか触って嬉しいか?わからないことだらけでどう考えていいか…胸が苦しくなるばかりだ。期待しちゃうよ。告白なんかするつもりはなくっても…もしかしたらって…。
そんなことないよと別の自分が冷静に見ている。浮かれるなって。
だんだんと大胆になってくる指は頬だけじゃなく顎のラインをすっと触れることもある。
耳から顎に移動して、もう少しで唇に触れる…ってところで躊躇うように止まって…離れた。
優しく線を描くように動く指は、ある日は鼻に触れ、耳に触れた。
声が出そうになる。
もし首筋なんかに触れられたら間違いなく声が出ちゃうよ。土屋くんに見えないようにタオルケットの下で手を握りしめて耐えてるけど、耳を触られた時はヤバかった。
幾晩かの緊張の時間を過ごし遂に土屋くんの指は唇に触れた。その指は輪郭をなぞるようにゆっくりと動き、まるで愛撫しているかのようだ。
神経を集中させて指を追う。
その触れる指は一本か二本くらいで、多分爪の方で触れて、優しく動く。掌で覆うようなことはなく指の腹で触れてもそれは、壊れ物を扱うように力は入っていない。
深呼吸するように寝る真似をする。上手く誤魔化せているんだろう。
明るいリビングから暗い僕の部屋に入るから、目が慣れるまではよく見えないだろう。常夜灯の微かな灯りでは細かなとこまで見えないのかもしれない。
どれくらいの時間触られているかはわからない。三十秒にも満たない時間だと思うけれど、僕にはもっと長く感じる。
そして…日に日に長くなるような気がする。
土屋くんが「おやすみ」の言葉を置いて部屋を後にして、一人になると今の道を辿る。頬に、顎に、鼻に、耳に唇に…同じように触れたから指の腹じゃないって思った。気にしていれば爪のツルツルとした感じもわかる。
今日も待っている。
部屋に入って来る時間は大体毎日同じ。
歯を磨く音がして、トイレに行く音がする。そして…そして「ガチャ」扉が開く。
この前よりも意識がしっかりしていたのでそれが土屋くんの指であることがわかった。
しばらく動いていた指は「おやすみ」の言葉と共に離れた。部屋から出て行く土屋くんに身動きが取れなかった。もう少しで、目を開けて、大きな声を出してしまいそうだった。
硬直した身体をベッドへ預け深く長く息を吐く。常夜灯で良かった。普通の照明の下では僕のビクッとした変化は気づいたかもしれない。土屋くんも緊張していたのか慌てたように部屋を出て行くから僕をちゃんと見てなかったのかもしれない。
その日から土屋くんが僕の部屋に入ってくるまで、頬に触れてくれるまで寝られなくなった。
そう、僕は待つようになった。
だって、好きなんだ。
僕から触れることが出来ないのは少しは辛いけど、好きになった人に触れられて嬉しくない訳ない。
けど、どうして男の僕をここまで気にしてくれるのか?そりゃ心配かけた。かけたけど…そもそも、そのことも心配なんかせずに、放っておくこともできたんだ。
邪魔くさい奴って突き放すこともできたはず。知らん顔してても構わなかったはずなんだ。男のほっぺなんか触って嬉しいか?わからないことだらけでどう考えていいか…胸が苦しくなるばかりだ。期待しちゃうよ。告白なんかするつもりはなくっても…もしかしたらって…。
そんなことないよと別の自分が冷静に見ている。浮かれるなって。
だんだんと大胆になってくる指は頬だけじゃなく顎のラインをすっと触れることもある。
耳から顎に移動して、もう少しで唇に触れる…ってところで躊躇うように止まって…離れた。
優しく線を描くように動く指は、ある日は鼻に触れ、耳に触れた。
声が出そうになる。
もし首筋なんかに触れられたら間違いなく声が出ちゃうよ。土屋くんに見えないようにタオルケットの下で手を握りしめて耐えてるけど、耳を触られた時はヤバかった。
幾晩かの緊張の時間を過ごし遂に土屋くんの指は唇に触れた。その指は輪郭をなぞるようにゆっくりと動き、まるで愛撫しているかのようだ。
神経を集中させて指を追う。
その触れる指は一本か二本くらいで、多分爪の方で触れて、優しく動く。掌で覆うようなことはなく指の腹で触れてもそれは、壊れ物を扱うように力は入っていない。
深呼吸するように寝る真似をする。上手く誤魔化せているんだろう。
明るいリビングから暗い僕の部屋に入るから、目が慣れるまではよく見えないだろう。常夜灯の微かな灯りでは細かなとこまで見えないのかもしれない。
どれくらいの時間触られているかはわからない。三十秒にも満たない時間だと思うけれど、僕にはもっと長く感じる。
そして…日に日に長くなるような気がする。
土屋くんが「おやすみ」の言葉を置いて部屋を後にして、一人になると今の道を辿る。頬に、顎に、鼻に、耳に唇に…同じように触れたから指の腹じゃないって思った。気にしていれば爪のツルツルとした感じもわかる。
今日も待っている。
部屋に入って来る時間は大体毎日同じ。
歯を磨く音がして、トイレに行く音がする。そして…そして「ガチャ」扉が開く。
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