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第一章
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社会人一年生の僕は正直慣れない生活に身体は休めたいけど、穏やかなルームシェアを続けたくて土屋くんに慣れるまでなるべく顔を合わせないことにした。
そのうち嫌な面とか見えて…性格が悪いとか、態度が悪いとか、食べ方が汚いとか、言葉遣いが変とかいろいろね…嫌いって言うか好きじゃないって言うか、普通の友だちとして落ち着くまで遠ざけてたのに…。
だいたい今までそうだった。
『あっ、良いな』って思っても性格が最悪だったりしてさ、そうなれば友だちにもなれない。
だからただの同居人を目指したわけだけどね。
朝に会う土屋くんは嫌なところは一つもなくて好きになりそうでヤバいんだよ。
最初のうちは土屋くんも僕が遅くなるのは仕事とか付き合いとか思ってたと思うんだ。
「大変だな。もっと早く帰ってきて休まないと、身体壊すぞ」って心配してくれてた。
なんだか心配して貰って、申し訳ない気持ちになった。だって自分の意志でしてることなんだ。嫌いで避けてる訳じゃないからそこまで後ろめたい気持ちはないけど、避けてることを知ってしまったら土屋くんは嫌になるかもしれない。
二ヶ月くらいたった頃かな…。
最初はファミレスで長時間粘ったり、コンビニで立ち読みしたり近くのスーパーで買い物したりいろいろしたけど、最近は近所の公園で時間を潰してた。
駅からスーパーに寄って、マンションに帰る途中の道をちょっとだけ逸れたとこにあるあまり大きくない公園。街灯も少なく夜になると誰も近寄らない公園は誰にも気兼ねなく過ごせるのでちょうどよかった。
パンとかお弁当を買ってきてそこで、食べたりスマホを見たりして過ごす。
だいぶ暖かくなってきたからそんなに苦痛でもなかったから一人の時間を楽しんでたのに…。
「郷田!」
突然後ろから肩を揺すられた。
「うわっ…」
遊具を囲ってある棒状の柵に座っていたから前のめりに崩れ落ちそうになった。
足を前に出し踏ん張ったからこけることはなかったけど…びっくりした。
「土屋……。ど、どうしたの慌てて?」
何かあったのだろうか?
一度家に帰って着替えたのだろう、スーツではなくTシャツにパーカー、細身の黒のジーンズは憎らしいくらいに似合っててかっこいい。シャワーはまだ浴びてないのか、髪は纏っていていつもの通勤スタイルだった。
僕と違って背が高く、目の前に立たれると目線は喉元でいつも見上げる僕に「郷田、上目遣いは止めろ」と言われても仕方ないだろ?切れ長でいつもはちょっと細い目を見開いて驚いてるのか怒ってるのかいつもと違う表情にどんな顔でもかっこいいんだなと暖気に思ってしまった。
「どうしたって…お前…とにかく、帰ろ」
手を引かれて動揺した。
思わず振り払うと、「悪い…」と苦笑いが漏れた。
無言で部屋へと帰る。
シャワー浴びてこいよと促されて、素直に従った。
なんだか怖いんだよ今日の土屋くんは。
いつも爽やか笑顔で『おはよう』なんて言われて心臓跳ねさせてたけど、今は心臓潰されそうなくらい苦しい。
そうなんだ。
こんなに避けたのに好きになってしまった。
だって嫌いになる要素が一つもなかったんだ。僕が朝ちょっと起きるのが遅くなった時のさりげない起こし方。食べ方もスマートで、話も面白い。ちょっと口煩いくらいに構われたって嫌な感じは全然なかった。むしろ喜んで受け入れてたんだ。
好きになった人からの威圧的な視線は辛い。
そのうち嫌な面とか見えて…性格が悪いとか、態度が悪いとか、食べ方が汚いとか、言葉遣いが変とかいろいろね…嫌いって言うか好きじゃないって言うか、普通の友だちとして落ち着くまで遠ざけてたのに…。
だいたい今までそうだった。
『あっ、良いな』って思っても性格が最悪だったりしてさ、そうなれば友だちにもなれない。
だからただの同居人を目指したわけだけどね。
朝に会う土屋くんは嫌なところは一つもなくて好きになりそうでヤバいんだよ。
最初のうちは土屋くんも僕が遅くなるのは仕事とか付き合いとか思ってたと思うんだ。
「大変だな。もっと早く帰ってきて休まないと、身体壊すぞ」って心配してくれてた。
なんだか心配して貰って、申し訳ない気持ちになった。だって自分の意志でしてることなんだ。嫌いで避けてる訳じゃないからそこまで後ろめたい気持ちはないけど、避けてることを知ってしまったら土屋くんは嫌になるかもしれない。
二ヶ月くらいたった頃かな…。
最初はファミレスで長時間粘ったり、コンビニで立ち読みしたり近くのスーパーで買い物したりいろいろしたけど、最近は近所の公園で時間を潰してた。
駅からスーパーに寄って、マンションに帰る途中の道をちょっとだけ逸れたとこにあるあまり大きくない公園。街灯も少なく夜になると誰も近寄らない公園は誰にも気兼ねなく過ごせるのでちょうどよかった。
パンとかお弁当を買ってきてそこで、食べたりスマホを見たりして過ごす。
だいぶ暖かくなってきたからそんなに苦痛でもなかったから一人の時間を楽しんでたのに…。
「郷田!」
突然後ろから肩を揺すられた。
「うわっ…」
遊具を囲ってある棒状の柵に座っていたから前のめりに崩れ落ちそうになった。
足を前に出し踏ん張ったからこけることはなかったけど…びっくりした。
「土屋……。ど、どうしたの慌てて?」
何かあったのだろうか?
一度家に帰って着替えたのだろう、スーツではなくTシャツにパーカー、細身の黒のジーンズは憎らしいくらいに似合っててかっこいい。シャワーはまだ浴びてないのか、髪は纏っていていつもの通勤スタイルだった。
僕と違って背が高く、目の前に立たれると目線は喉元でいつも見上げる僕に「郷田、上目遣いは止めろ」と言われても仕方ないだろ?切れ長でいつもはちょっと細い目を見開いて驚いてるのか怒ってるのかいつもと違う表情にどんな顔でもかっこいいんだなと暖気に思ってしまった。
「どうしたって…お前…とにかく、帰ろ」
手を引かれて動揺した。
思わず振り払うと、「悪い…」と苦笑いが漏れた。
無言で部屋へと帰る。
シャワー浴びてこいよと促されて、素直に従った。
なんだか怖いんだよ今日の土屋くんは。
いつも爽やか笑顔で『おはよう』なんて言われて心臓跳ねさせてたけど、今は心臓潰されそうなくらい苦しい。
そうなんだ。
こんなに避けたのに好きになってしまった。
だって嫌いになる要素が一つもなかったんだ。僕が朝ちょっと起きるのが遅くなった時のさりげない起こし方。食べ方もスマートで、話も面白い。ちょっと口煩いくらいに構われたって嫌な感じは全然なかった。むしろ喜んで受け入れてたんだ。
好きになった人からの威圧的な視線は辛い。
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