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幸せだった日々
03
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「一緒に食べよ?それとも、もうご飯食べた?家の人、作って待ってる?」
「食べてないし、誰も待ってないよ」
「…?一人暮し?」
「言ってなかった?母親と二人だけど、夜の仕事だから」
「そっか…。じゃあ、良いよね。睦己が来るから二人分ってもう言ってるから」
「えっ?」
ほら、と手を引かれ部屋を出た。階段から一番近いドアを開けると先ほども嗅いだ良い匂いが鼻腔をくすぐる。
「わあ、美味しそう」
「あら、嬉しいこと言ってくれるね!」
「あっ、お邪魔してます。はじめまして、安村睦己と言います」
「はい、こんばんは。こんな狭いとこだけど、ゆっくりしてってね。直輝は、またかよとしか言わないから、なんだか新鮮。いっぱい食べてね。足りなかったら言うんだよ」
最後の言葉は直輝に向けて、僕には笑顔でじゃあねと言って、仕事場である一階のお店に戻って行った。久しぶりにしっかりした夕飯を食べた。好きな人と一緒に食べると言うこととは別に、心がほんわか暖かくなった。
部活を始めた直輝と会うのは土曜と日曜の夕方から。たまに平日もお邪魔する。夜出かけて文句を言う親はいない。母親は夕方に濃い化粧をして出かけて行く。僕がアパートにいようがいまいが、そんなことはどうでも良いだろうし、知らないだろう。
毎回ご馳走になるのはいくらなんでも申し訳なくて、気が引けた。でも、コンビニでパンを買って持っていくと怒られ、お金を渡そうとしても断られた。
そうして、何度も直輝の部屋に通うようになり、最初触れるだけだったキスは、僕が慣れるに従って深くなった。
直輝に抱きしめられ、後頭部を大きな手で支えられて身動ぐことはできない。それは、勿論嫌じゃない。安心する。ドキドキもするけど、凄く癒される。そんな安心感で、全てを委ねてしまう。
「んっ…ぁっ、…っ…、な、お…」
「睦己…可愛い」
唇を舌先でなぞるように舐められて、まるで食べられてしまうかのようだ。
一頻り弄んで、満足したのか一旦離れ僕の顔を覗き込み、「ふふっ」と微笑んだ。その男らしい顔が好きだ。
「好きだよ」
「んっ、僕も…。僕も好き」
直樹の舌が口内にスルリと入り込む。歯列を順になぞり、コンプレックスである八重歯を執拗になぶる。
「やっ…」
やめて欲しくて嫌だと言おうとすると、開いた隙間から入った直樹の舌が僕の舌に絡む。
ザラリとした感触に身体が震えた。それを優しく抱きしめて、宥めてくれる。それでもキスは二人をつないだ。
いたずらな直輝の手が服の中に入る。肌理を確かめるように腹から脇腹を撫でる。その手が上に上がり胸に触れる。
「あっ…」
飾りだと思っていた今まで意味のなかった粒が、直輝の手により大事なものになった。しかし…。
「な、お…」
僕は男で、ふくよかな柔らかな胸はない。ぺったんこの楽しみのないそれに、申し訳なくなる。僕には大切な場所だけど、直輝にはそうではないだろう。
「ん?触るの嫌?」
「嫌じゃないけど…。直輝が嫌じゃないかな……と思ったから…」
「そんなことないよ?」
「だって、僕、男だから…」
「そんなの最初から知ってる。ほら、ここも……ここも触って良い?嫌じゃないなら、触るよ?良いよね?」
「うん…、触って…」
ここ…と言ったのは兆し始めた、ズボンに隠れた僕自身。上着ををはだけ、ズボンもずり降ろされて、直輝の視線に晒されていることが何故か恥ずかしい。男同士だ。なんてことない筈なのに。
「綺麗だね」
ポツリと呟かれた言葉は熱を孕んでいた。
そのことにゾクリと歓喜が湧き上がる。喜んでくれている。それは僕に勇気をくれた。
「なお、き…」
「ん?」
「僕だけ、は、いや…」
「そうか?じゃあ…」
身体を起こし、迷いなく服を脱ぐ。その速さに自分が脱いでとお願いしたにも関わらず、ドキドキする。心の準備がまだ…と、内心、直輝を責める気持ちもあるけれど、その逞しい肉体に惚れ惚れする。
僕にはない筋肉。
白い肌と焼けた肌。そのコントラストが部活での直輝を連想させる。
その中心にある屹立が雄々しく立ち上がっているのを見て嬉しくなる。
僕を見て、触れて反応してくれてる。
再びベッドへと倒され、キスをする。そのキスは首筋から鎖骨、更には胸へ。舌先で周りを刺激し、小さな粒に吸い付いた。
「ひゃん…」
思わず高い声が出て、慌てて口を手で塞いだ。
直輝の手は僕の固くなったモノを掴み、上下に擦る。耳元で直輝の興奮した荒い息遣いが聞こえた。先走りのヌチャっとした水音がやけに大きく耳に響き、恥ずかしさに直輝の身体にしがみつく。
先端の柔らかな所に執拗に指を絡め、上下に擦る。他人に触られたことのない場所は、いつも以上に敏感になっている。
「あっ、なお、き…イク、イクから、離して…ぁぁっ」
離してと言ったのに、更に強くされて呆気なく達してしまった。
「ごめん。手、汚して」
「睦己、可愛かった」
「ごめん、僕だけ…。あの、僕も触って良い?」
「触ってくれるの?」
「うん。触りたい」
「食べてないし、誰も待ってないよ」
「…?一人暮し?」
「言ってなかった?母親と二人だけど、夜の仕事だから」
「そっか…。じゃあ、良いよね。睦己が来るから二人分ってもう言ってるから」
「えっ?」
ほら、と手を引かれ部屋を出た。階段から一番近いドアを開けると先ほども嗅いだ良い匂いが鼻腔をくすぐる。
「わあ、美味しそう」
「あら、嬉しいこと言ってくれるね!」
「あっ、お邪魔してます。はじめまして、安村睦己と言います」
「はい、こんばんは。こんな狭いとこだけど、ゆっくりしてってね。直輝は、またかよとしか言わないから、なんだか新鮮。いっぱい食べてね。足りなかったら言うんだよ」
最後の言葉は直輝に向けて、僕には笑顔でじゃあねと言って、仕事場である一階のお店に戻って行った。久しぶりにしっかりした夕飯を食べた。好きな人と一緒に食べると言うこととは別に、心がほんわか暖かくなった。
部活を始めた直輝と会うのは土曜と日曜の夕方から。たまに平日もお邪魔する。夜出かけて文句を言う親はいない。母親は夕方に濃い化粧をして出かけて行く。僕がアパートにいようがいまいが、そんなことはどうでも良いだろうし、知らないだろう。
毎回ご馳走になるのはいくらなんでも申し訳なくて、気が引けた。でも、コンビニでパンを買って持っていくと怒られ、お金を渡そうとしても断られた。
そうして、何度も直輝の部屋に通うようになり、最初触れるだけだったキスは、僕が慣れるに従って深くなった。
直輝に抱きしめられ、後頭部を大きな手で支えられて身動ぐことはできない。それは、勿論嫌じゃない。安心する。ドキドキもするけど、凄く癒される。そんな安心感で、全てを委ねてしまう。
「んっ…ぁっ、…っ…、な、お…」
「睦己…可愛い」
唇を舌先でなぞるように舐められて、まるで食べられてしまうかのようだ。
一頻り弄んで、満足したのか一旦離れ僕の顔を覗き込み、「ふふっ」と微笑んだ。その男らしい顔が好きだ。
「好きだよ」
「んっ、僕も…。僕も好き」
直樹の舌が口内にスルリと入り込む。歯列を順になぞり、コンプレックスである八重歯を執拗になぶる。
「やっ…」
やめて欲しくて嫌だと言おうとすると、開いた隙間から入った直樹の舌が僕の舌に絡む。
ザラリとした感触に身体が震えた。それを優しく抱きしめて、宥めてくれる。それでもキスは二人をつないだ。
いたずらな直輝の手が服の中に入る。肌理を確かめるように腹から脇腹を撫でる。その手が上に上がり胸に触れる。
「あっ…」
飾りだと思っていた今まで意味のなかった粒が、直輝の手により大事なものになった。しかし…。
「な、お…」
僕は男で、ふくよかな柔らかな胸はない。ぺったんこの楽しみのないそれに、申し訳なくなる。僕には大切な場所だけど、直輝にはそうではないだろう。
「ん?触るの嫌?」
「嫌じゃないけど…。直輝が嫌じゃないかな……と思ったから…」
「そんなことないよ?」
「だって、僕、男だから…」
「そんなの最初から知ってる。ほら、ここも……ここも触って良い?嫌じゃないなら、触るよ?良いよね?」
「うん…、触って…」
ここ…と言ったのは兆し始めた、ズボンに隠れた僕自身。上着ををはだけ、ズボンもずり降ろされて、直輝の視線に晒されていることが何故か恥ずかしい。男同士だ。なんてことない筈なのに。
「綺麗だね」
ポツリと呟かれた言葉は熱を孕んでいた。
そのことにゾクリと歓喜が湧き上がる。喜んでくれている。それは僕に勇気をくれた。
「なお、き…」
「ん?」
「僕だけ、は、いや…」
「そうか?じゃあ…」
身体を起こし、迷いなく服を脱ぐ。その速さに自分が脱いでとお願いしたにも関わらず、ドキドキする。心の準備がまだ…と、内心、直輝を責める気持ちもあるけれど、その逞しい肉体に惚れ惚れする。
僕にはない筋肉。
白い肌と焼けた肌。そのコントラストが部活での直輝を連想させる。
その中心にある屹立が雄々しく立ち上がっているのを見て嬉しくなる。
僕を見て、触れて反応してくれてる。
再びベッドへと倒され、キスをする。そのキスは首筋から鎖骨、更には胸へ。舌先で周りを刺激し、小さな粒に吸い付いた。
「ひゃん…」
思わず高い声が出て、慌てて口を手で塞いだ。
直輝の手は僕の固くなったモノを掴み、上下に擦る。耳元で直輝の興奮した荒い息遣いが聞こえた。先走りのヌチャっとした水音がやけに大きく耳に響き、恥ずかしさに直輝の身体にしがみつく。
先端の柔らかな所に執拗に指を絡め、上下に擦る。他人に触られたことのない場所は、いつも以上に敏感になっている。
「あっ、なお、き…イク、イクから、離して…ぁぁっ」
離してと言ったのに、更に強くされて呆気なく達してしまった。
「ごめん。手、汚して」
「睦己、可愛かった」
「ごめん、僕だけ…。あの、僕も触って良い?」
「触ってくれるの?」
「うん。触りたい」
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