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ハルと言えば一、カズと言えば春

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遊園地から駅への道沿いにあるテニスコートでは試合が行われているみたいだ。朝はまだ人がまばらだったコートからは、応援の声が途切れることなく聞こえてくる。

『約束』のために地元に戻る。ここは田舎町で、そんなホテルは車で入る人が多いのか駅前ではなく駅から少し離れた道沿いにある。

健全なスポーツを見ながら、しかし、二人の頭の中はあの大きなベッドが横たわっている。もう少し先に進む…俺の提案にはるちゃんはコクンと頷いてくれた。
その無邪気さに本当にわかっているのだろうかと心配になる。俺も調べたさ、男同士のこと。はっきり言ってしまえば俺は童貞だ。付き合った女の子とキスはしたけど、その先にはいけなかった。良いわよと匂わす子もいたけど、俺がその気にならなかった。直樹にヘタレと揶揄からかわれても、頑張れと励まされてもダメなものはダメだった。

でも、はるちゃんには身体中触りたいし、舐めたいし、挿入りたい。こんなに手を繋ぎたいと思ったのもはるちゃんだけ。世間の恋人たちはよく人前でイチャつけるなと冷めた目で見ていたけど、俺は今はるちゃんの腰に腕を回し身体を密着させてる。歩き辛いっての。でも、例え歩き辛くても離れたくないんだ。

電車の中でも手を繋ぎ、ピタリと寄り添い座っている。これからのことを思うと会話は少なく、お互い緊張しているのがわかる。その沈黙は不愉快なものではなく、信頼し二人の間にたゆたゆ想いが揺れている。

地元へ近づくとその距離は少し離れた。知り合いに見られたらはるちゃんだとわかってしまうかもしれない。

「行くよ」
「うん」

前の時と同じでまだ明るい裏路地。角を曲がる前に、俯いたはるちゃんを隠すように肩を抱いた。ほんの十メートルほどを足早に歩く。

部屋に入ると荷物を落としどちらともなくキスをした。キスをしながらお互いの服を脱がせる。Tシャツの首を抜く時に離れた唇は、磁石がくっ付くように再び重なった。

首筋を舐め、耳を甘噛みする。

「ま、待って。僕、汗いっぱいだよ?シャワー…ね?シャワー行こ?」
「嫌だ」

駄々っ子のように首を振り、はるちゃんから離れない。

「汚いから、お願い」
「はるちゃんが汚いわけない。大丈夫だよ」
「でも…他は何でも言うこと聞くから、ね?」

あまりに真剣に言われて少し冷静さを取り戻す。お互い全裸で、もう少しではるちゃんをベッドに押し倒すところだった。
前回同様抱き上げ浴室へと急ぐ。

「ここでは洗うだけな。俺が洗うから」

性急に言うと頷いてくれた。時折漏れる吐息を聞き流し…いや、下半身は反応するけど…、全身を洗ってゆく。シャワーヘッドを手渡し自分で泡を流してもらった。その間に俺の身体を洗う。髪を洗っているとやたらとシャワーが当たる。薄っすら目を開けるとはるちゃんはイタズラでもしているようにこちらにヘッドを向けていた。

「は、はるちゃん?」
「ん?僕も洗いたかったのに…だから、流してあげる」

俺の焦りを鎮めるように笑顔で攻撃を仕掛けてきた。

「春彦、好きだよ」

イタズラ真っ最中のはるちゃんを抱きしめた。

「!…かずくん?」
「はるちゃんはきっと俺がなんて呼んでも良いって言ってくれると思うけど『ちゃん』って呼ぶの、女の子だと思って言ってないからね」
「うん…わかってるよ?他の誰かなら『ちゃん』って呼ばれるの嫌だけど、かずくんだけ…。お母さんとなっちゃんにも呼ばないでって言ってるよ?かずくんだけの呼び名だから。でも、かずくんに春彦って呼ばれるの……好き。ドキドキした」

タオルで全身を拭いて、手を引いてはるちゃんをベッドへ誘導する。息を奪うような激しいキスをしたらはるちゃんから力が抜けた。トロンとした瞳は全てを俺に預けてくれている。

「ぁっ、ぁっ、んっ、ゃっ…」

意味をなさない喘ぎ声が絶え間なく漏れる。口が閉じられないから飲み込めないのだろう、唾液がたらりとこぼれ落ちた。

どこを慣らし、どんなふうに準備するかをはるちゃんは正しく理解していた。自分でも触ろうとして、怖気付いてやめたらしい。良かったよ。例えそれがはるちゃんの指だってそこに触れるのは俺が一番が良い。

「はるちゃん、春彦、好きだよ。気持ち悪いよね。ごめんね。もうちょっと、もうちょっとだけ。我慢できる?」

感じる場所があるらしいのでそこを探しているのだけど、なかなか見つからない。もう今日は諦めようと思った時、はるちゃんの声が変わった。

「ひゃ…ああっ、あっ…」
「ここ?ここ感じる?」
「わ、わかん、ない…」
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