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ハルと言えば一、カズと言えば春
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「キス、して良い?」
「どうしたの?いつも聞かないのに」
「ん?ここ外だし、はるちゃんが嫌なら我慢する」
「えぇっ!そんなのズルい」
「どうして?」
「だって…僕だって同じ気持ちだし…我慢しなきゃって」
「はるちゃん可愛い。じゃあ、ちょっとだけ」
「うん」
触れる唇は少しカサカサしていて、リップを買ってあげようかと思う。でも、俺の持ってるのは自分で稼いだ金じゃない。親からもらう小遣いを貯めただけだ。部活ばっかの中学時代、無駄遣いはしなかった。たまにファストフードに行ったり、マンガ本やゲームを買う程度。趣味もない。
俺もバイトしようかな。はるちゃんに言うと怒られた。
「もしかしてさ、僕のため?」
「あ、…うん」
「ダメだよ。かずくんが自分の欲しい物とか、自分の将来のためにバイトしたいなら別だけど、部活もあるし、僕は嫌だ、そんなの」
「ごめん。ごめん、はるちゃん…。怒らないで?ちょっと思っただけ。俺に経済力があったらなって。経済力って言っても、今はバイトが精々だけどさ。高校生だから仕方ないけど…。大学にも行くつもりだし。でも、将来は…って」
「うん、怒ってないよ?気持ちは嬉しい。でも、負担にはなりたくない」
「うん、わかってる」
「一緒に…僕も考えるからさ、一緒に、ね?」
「俺、焦ってるんだ。二人の事、父さんたちに言ったらどうなるんだろう……って」
「言うの?」
「嫌か?」
「……怖い。もう、会うなって言われたら、どうして良いかわからない。離れたくない…」
「俺も…」
膝に乗ったまま肩に頭を付けて抱きつく力を強くする。
「あっ、かずくん!」
「ん?」
「ここ、一番上だよ!」
「おぉ、ホントだ」
周りに高い建物はなく、遠くまで見える。太陽の光を反映して水面が綺麗だ。その光を反射してはるちゃんの瞳もキラキラしてる。
キスをした。さっきの触れるだけのキスではなく、不安を取り去るように舌を絡めた。
手を繋いで二人きりになれた箱から出た。観覧車から降りる時、係りの人のニヤニヤとした視線にサムズアップで答えておいた。
観覧車から降りると、その手は自然と離れてしまった。しかし、次にどこに行くかを決めると再び何の躊躇いもなく重なる。
周りを気にしなくて良いのははるちゃんのお陰だ。顔はもともと可愛くて、アクセサリーがなくっても髪が短くても、菜月さんのユニセックスな服だけで男同士には見えなくなる。
はるちゃんは細い。ガリガリとかじゃないけど、腰や手足がすらりとしなやかで……。
おっと、いけない。
邪な俺の下半身が反応しかけたじゃないか。こんな太陽降り注ぐ親子連れがいっぱいの遊園地では似合わないだろ。
ボートに乗り込み池を進む。ここは観覧車とは違い周りには小さな子どもがいっぱいいる。キャッキャとはしゃぐ声が池に響く。必死になってペダルを漕いでたり、足が疲れたのか飽きたのか父親にボートを任せもっと早くと言ってたり、それぞれアヒルボートを楽しんでる。隣のはるちゃんも始終笑顔でペダルを漕ぐ。
「僕、このボート初めてだ」
「そうなんだ。俺は何回目だろ」
「また来ようね」
「楽しい?」
「うん。他の遊園地もあまり行ったことないけど、かずくんと一緒が嬉しいから」
ここは乗り物などは個別に料金が発生するけど、遊園地の入園料は無料だ。ほぼ電車賃だけのお手軽デート。オマケに地元から離れているから知り合いに出会うことも少ない。ただ、遊園地の乗り物は高校生には楽しくない。のんびりとここで寛ぐのも良いけど、今度はネズミの国にでも行きたいな。それは大学生になってからかな。
アヒルボートを満喫した後、弁当を食べた芝生に戻った。もう一度シートを敷いて二人並んで座る。ボート乗り場にあった自販機で買った缶コーヒーをカコンと開けた。はるちゃんには甘いの、俺は微糖の缶コーヒーで乾杯。
「あの約束、どうする?」
「あの、って?」
「ほら、今日どこに行くかって話の時に」
「あっ、うん」
途端に下を向き手をモジモジさせる。その手に手を重ね包むように握った。しばらく考えて、意を決したように俺の顔を見て頷いた。
「行く」
気持ちは一緒。一方通行じゃない。
「どうしたの?いつも聞かないのに」
「ん?ここ外だし、はるちゃんが嫌なら我慢する」
「えぇっ!そんなのズルい」
「どうして?」
「だって…僕だって同じ気持ちだし…我慢しなきゃって」
「はるちゃん可愛い。じゃあ、ちょっとだけ」
「うん」
触れる唇は少しカサカサしていて、リップを買ってあげようかと思う。でも、俺の持ってるのは自分で稼いだ金じゃない。親からもらう小遣いを貯めただけだ。部活ばっかの中学時代、無駄遣いはしなかった。たまにファストフードに行ったり、マンガ本やゲームを買う程度。趣味もない。
俺もバイトしようかな。はるちゃんに言うと怒られた。
「もしかしてさ、僕のため?」
「あ、…うん」
「ダメだよ。かずくんが自分の欲しい物とか、自分の将来のためにバイトしたいなら別だけど、部活もあるし、僕は嫌だ、そんなの」
「ごめん。ごめん、はるちゃん…。怒らないで?ちょっと思っただけ。俺に経済力があったらなって。経済力って言っても、今はバイトが精々だけどさ。高校生だから仕方ないけど…。大学にも行くつもりだし。でも、将来は…って」
「うん、怒ってないよ?気持ちは嬉しい。でも、負担にはなりたくない」
「うん、わかってる」
「一緒に…僕も考えるからさ、一緒に、ね?」
「俺、焦ってるんだ。二人の事、父さんたちに言ったらどうなるんだろう……って」
「言うの?」
「嫌か?」
「……怖い。もう、会うなって言われたら、どうして良いかわからない。離れたくない…」
「俺も…」
膝に乗ったまま肩に頭を付けて抱きつく力を強くする。
「あっ、かずくん!」
「ん?」
「ここ、一番上だよ!」
「おぉ、ホントだ」
周りに高い建物はなく、遠くまで見える。太陽の光を反映して水面が綺麗だ。その光を反射してはるちゃんの瞳もキラキラしてる。
キスをした。さっきの触れるだけのキスではなく、不安を取り去るように舌を絡めた。
手を繋いで二人きりになれた箱から出た。観覧車から降りる時、係りの人のニヤニヤとした視線にサムズアップで答えておいた。
観覧車から降りると、その手は自然と離れてしまった。しかし、次にどこに行くかを決めると再び何の躊躇いもなく重なる。
周りを気にしなくて良いのははるちゃんのお陰だ。顔はもともと可愛くて、アクセサリーがなくっても髪が短くても、菜月さんのユニセックスな服だけで男同士には見えなくなる。
はるちゃんは細い。ガリガリとかじゃないけど、腰や手足がすらりとしなやかで……。
おっと、いけない。
邪な俺の下半身が反応しかけたじゃないか。こんな太陽降り注ぐ親子連れがいっぱいの遊園地では似合わないだろ。
ボートに乗り込み池を進む。ここは観覧車とは違い周りには小さな子どもがいっぱいいる。キャッキャとはしゃぐ声が池に響く。必死になってペダルを漕いでたり、足が疲れたのか飽きたのか父親にボートを任せもっと早くと言ってたり、それぞれアヒルボートを楽しんでる。隣のはるちゃんも始終笑顔でペダルを漕ぐ。
「僕、このボート初めてだ」
「そうなんだ。俺は何回目だろ」
「また来ようね」
「楽しい?」
「うん。他の遊園地もあまり行ったことないけど、かずくんと一緒が嬉しいから」
ここは乗り物などは個別に料金が発生するけど、遊園地の入園料は無料だ。ほぼ電車賃だけのお手軽デート。オマケに地元から離れているから知り合いに出会うことも少ない。ただ、遊園地の乗り物は高校生には楽しくない。のんびりとここで寛ぐのも良いけど、今度はネズミの国にでも行きたいな。それは大学生になってからかな。
アヒルボートを満喫した後、弁当を食べた芝生に戻った。もう一度シートを敷いて二人並んで座る。ボート乗り場にあった自販機で買った缶コーヒーをカコンと開けた。はるちゃんには甘いの、俺は微糖の缶コーヒーで乾杯。
「あの約束、どうする?」
「あの、って?」
「ほら、今日どこに行くかって話の時に」
「あっ、うん」
途端に下を向き手をモジモジさせる。その手に手を重ね包むように握った。しばらく考えて、意を決したように俺の顔を見て頷いた。
「行く」
気持ちは一緒。一方通行じゃない。
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