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ハルが咲く、向日葵と笑顔カズ知れぬ

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リビングに戻ると兄さんが帰っていた。大学生は曜日により出かける時間も帰る時間もまちまちみたいだ。今日はバイトもないのか珍しくリビングで寛いでる。
兄さんがいるからか母さんの態度はいつもと同じだった。多少緊張していたのに拍子抜けって感じ。

母さんの見ていないところで、はるちゃんと顔を合わせて苦笑いする。





兄さんにははるちゃんとの事は報告済み。

ふぅん……
興味がないのかそんな感想だった。

『可愛かったのはなっちゃんだっけ?上の子。大人しそうな感じの』
『いぃや!大人しいのははるちゃんだった』
『いやいや、お前と走り回ってたじゃないか?』

ああ、そうかもしれない…。この家で、狭い廊下を走ってたな。

『今の写真とかないのか?』
『あるけど…』
『何だよ?』
『ちょっかい出すなよ』
『出さねぇよ』

ほらとスマホの写真を見せると『うっ』とまる。

『何だよ?』
『俺の好み、ど真ん中…』
『なっ!ダメだからな!』
『わかってるよ』
『ホントかよ』





はるちゃんと兄さんは今日が初対面だ。初対面は変かな?再会後初?はるちゃんにも兄さんの写真は見せてある。別の緊張が俺を襲う。はるちゃんはその写真を見ても悠太くんは随分変わったねと俺の写真を見た時とは違った感想だった。それが実物を見たらどう変わるか?

俺が初めて菜月さんに会う時に会わせたくないと言った気持ちが良く分かる。俺の顔がはるちゃんの好みなら、兄さんも好きになる可能性があるってことだ。俺と兄さんは似ている。そして三歳差は埋められなくて、高校生と大学生では何もかもが違う。兄さんの方が背が高く、体つきもがっしりしてて、頼り甲斐がある。誰かにどちらかを選べと言ったら、そりゃ兄さんを選ぶだろう。今の俺じゃ太刀打ちできない。どうしよ…。母さんの手前はるちゃんと手を繋ぐわけにもいかない。

「あっ、悠太くん…ですよね?」
「おっ、はるちゃんか!」
「やめてくださいよ、ちゃんなんて。これでも高校生なんですから」
「そうだな。じゃあ、はるくん…な」

俺の心配を知らないはるちゃんは、兄さんとの初対面を無事終えていた。

直樹にならどうする?
これがはるちゃんに対する俺の態度のバロメーターだ。

ハグは…しない。ヘッドロックは…する。つまり、少しの触れ合いは許される。普段、送っては…いかない。けれど、今日は特別だ。直樹が攫われたら、きっと落ち着くまで背中くらいさすり続けるだろうし、送っていく…だろ?色々考えて、『よし!言い訳なんてしないで自然に送ってくからと言おう!』と心の中で結論付けた。

「はるちゃんそろそろ帰るって」

いつもの下校時間になり、台所に立つ母さんに声をかけた。決めていたセリフを言う前に、笑顔の母さんがはるちゃんの手を握る。

「まだ、不安よね?一登に送らせるから。いつでも遊びに来てね。日曜日に約束してたわよね?待ってるから」

拍子抜けする。

「じゃ、行ってくるから」
かずも気を付けて」
「おう!」

ニヤつかないように頬を引き締める。

「おばさんどうしたんだろ?」
「さあ?でも、良いじゃん。明後日、来るだろ?」
「うん…。来て良いって言ってくれたからね。でも、かずくんの部屋には行かない方が良いかな?」
「俺、考えたんだ。直樹ならって」
「坂口くん?」
「そう。直樹なら俺の部屋で一日中ゲームしてる時もあったけど、リビングで借りてきたDVDずっと見てた時もある。だから、絶対二人きりにならないとか決めない方が良いと思うんだ」
「かずくん…それは都合良くない?僕は二人きりにならない方がいいと思う。特に、かずくんの部屋には行かない方が良い」
「…はるちゃん?」
「怖いんだ。反対されたらどうしようって。それなら友だちとしてでも良いからずっと側にいたい」
「ありがと、嬉しい。…俺、兄さんに会わせたくなかったんだ」
「?…どうして?」
「はるちゃんがゆう兄の事好きになったら困るから」
「そんな!絶対、ないから!」
「うん。もう、そんな心配はしない。でも、ゆう兄とは二人きりにならないで?」
「ならないと思うけど。どうして?」
「そりゃ、俺のはるちゃんだから」
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