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ハルに思う、その全てがカズ限りない気持ちだと
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「母さん、俺。お願いがあるんだ」
『何?今どこよ』
「今から病欠で学校に電話して?」
早足で歩きながら電話する。
『熱でも出たの?元気だったけど?』
そりゃそうさ。朝からモリモリ食べて、弁当と間食用のパンとおにぎりを鞄に入れている。そんな食欲旺盛な息子が家を出て半時間も経たない内に、それも電話で病欠って変に思うのは当たり前だ。
自分で電話しても良かったけど、外の喧騒は伝わるだろうし、何より後から家に連絡が入る方がヤバい。
「後で話すから、お願い」
『何かあったのね?』
「うん」
『それは一登にとって大切なことなの?学校で勉強するよりも価値があることなの?』
「大切!」
『わかった』
「ありがとう」
『その代わり、後で理由を教えてね』
俺のただならない声に押されたのか、嘘の片棒を担ぐのに同意してくれた。
アパートまでの道は何度も立ち止まり影になっている所や、脇道を見る。怪しいと思えばどこだって怪しく思える。でも、はるちゃんはどこにもいなかった。
「緑さん!はるちゃんは?」
チャイムを鳴らすのももどかしく、ノックと共にドアを開けた。緑さんは朝食を食べている。
「なっ、そんなに落ち着いて!はるちゃん、いないんですよ!」
「今から、車貸してもらうの。腹が減っては何とやらってね。一登くんは朝ごはん食べた?」
「行き先に心当たりがあるんですね?」
「車の中で話すわ。あなたも来るんでしょ?」
「勿論!」
ゆっくりと朝食を食べる緑さんを見て、何をして良いかわからない。出されたコーヒーも喉を通らず、ただイライラと口に消えていくトーストを睨んだ。ピンポンと軽快な音がして来客を告げる。
「は~い」
どうやら車を貸してくれる人がキーを持ってきてくれたようだ。
「ありがと、夜には返せるから。ごめんね」
「気にすんなって。事故だけは気をつけろよ」
「うん。ありがと」
玄関先で用事を済ませ食事を再開する。すぐに食べ終わり食器をシンクに置いて、俺を見た。
「コーヒー、飲まないの?」
「あっ、いただきます」
満足そうな顔で微笑むと、食器を洗い始めた。冷めたコーヒーを一気に飲んで、急いでコップを持っていく。
「ごちそうさまでした」
「制服は目立つわね。ズボンはそのままで…これなら着れるかしら?」
誰のか知らないけど、大きな薄手のグレーのパーカーを貸してもらい制服を脱いでそれを着た。
「菜月と春彦の父親はね、三年前に死んだのよ」
「えっ?離婚って聞きましたけど?」
「ちゃんと話してるんだね。春が父親の事をどう思っているか、聞いたことないからさ……」
車に乗り込み約十分で高速道路に乗った。軽自動車のエンジンが唸り、順調に進んで行く。迷いなく辿る道は通り慣れた道なのか、ナビを設定することもなく、標識をキョロキョロと見る様子もない。
「あの時、死んだなんて二人に言って、最後に会いに行きたいと言われたら…わたしが耐えられないと思った。だから、離婚なら…。会ってない時間は長いからね。春彦なんか父親の記憶はほとんどないと思うわ。だから、素直に信じてくれたの」
淡々と語られる内容ははるちゃんの行方不明と関係しているのか、まだ俺にはわからない。ただ、緑さんの辛さだけが言葉から伝わる。
「あなたに言っても仕方ないけど、二人の父親は無茶苦茶な奴だった。そして、その弟はもっと酷い。ううん、その男こそが元凶なの。でもまさかこんな大胆なことするなんて思ってなかった」
「弟?」
「そう、菜月と春彦の叔父にあたる人よ」
「その叔父さんがはるちゃんを?」
「恐らくね…それしか考えられない。わたしのせいよ。油断してたわ…。多分、菜月を狙ったんだと思うのよ。でも、あの子、外では気を張っててね。それに、あの通り気が強いから、隙がないのよね。でも、春彦はのんびり屋さんで」
緑さんも心配していたようだ。
「俺が…」
「一登くんのせいじゃないわ」
「いえ!俺が迎えに行ってたら。四、五分早く家を出れば迎えに行けるのに」
「春が来なくていいって言ったんでしょう?」
「はい…、でも…」
「最初は一緒に通学してなかったんでしょ?それに、部活が始まってからは一緒に帰ってないじゃない。朝で良かったのよ。もし、朝が無理なら帰りにって、夕方に攫われたらこうして探し始めるの、もっと時間がたってたわ」
それはそうかもしれない。
でも、でも……。
一時間ほど走り高速を下りた。ここから三十分程ではるちゃんたちの父親の実家があるらしい。叔父さんは今その家に一人で住んでいる。
『何?今どこよ』
「今から病欠で学校に電話して?」
早足で歩きながら電話する。
『熱でも出たの?元気だったけど?』
そりゃそうさ。朝からモリモリ食べて、弁当と間食用のパンとおにぎりを鞄に入れている。そんな食欲旺盛な息子が家を出て半時間も経たない内に、それも電話で病欠って変に思うのは当たり前だ。
自分で電話しても良かったけど、外の喧騒は伝わるだろうし、何より後から家に連絡が入る方がヤバい。
「後で話すから、お願い」
『何かあったのね?』
「うん」
『それは一登にとって大切なことなの?学校で勉強するよりも価値があることなの?』
「大切!」
『わかった』
「ありがとう」
『その代わり、後で理由を教えてね』
俺のただならない声に押されたのか、嘘の片棒を担ぐのに同意してくれた。
アパートまでの道は何度も立ち止まり影になっている所や、脇道を見る。怪しいと思えばどこだって怪しく思える。でも、はるちゃんはどこにもいなかった。
「緑さん!はるちゃんは?」
チャイムを鳴らすのももどかしく、ノックと共にドアを開けた。緑さんは朝食を食べている。
「なっ、そんなに落ち着いて!はるちゃん、いないんですよ!」
「今から、車貸してもらうの。腹が減っては何とやらってね。一登くんは朝ごはん食べた?」
「行き先に心当たりがあるんですね?」
「車の中で話すわ。あなたも来るんでしょ?」
「勿論!」
ゆっくりと朝食を食べる緑さんを見て、何をして良いかわからない。出されたコーヒーも喉を通らず、ただイライラと口に消えていくトーストを睨んだ。ピンポンと軽快な音がして来客を告げる。
「は~い」
どうやら車を貸してくれる人がキーを持ってきてくれたようだ。
「ありがと、夜には返せるから。ごめんね」
「気にすんなって。事故だけは気をつけろよ」
「うん。ありがと」
玄関先で用事を済ませ食事を再開する。すぐに食べ終わり食器をシンクに置いて、俺を見た。
「コーヒー、飲まないの?」
「あっ、いただきます」
満足そうな顔で微笑むと、食器を洗い始めた。冷めたコーヒーを一気に飲んで、急いでコップを持っていく。
「ごちそうさまでした」
「制服は目立つわね。ズボンはそのままで…これなら着れるかしら?」
誰のか知らないけど、大きな薄手のグレーのパーカーを貸してもらい制服を脱いでそれを着た。
「菜月と春彦の父親はね、三年前に死んだのよ」
「えっ?離婚って聞きましたけど?」
「ちゃんと話してるんだね。春が父親の事をどう思っているか、聞いたことないからさ……」
車に乗り込み約十分で高速道路に乗った。軽自動車のエンジンが唸り、順調に進んで行く。迷いなく辿る道は通り慣れた道なのか、ナビを設定することもなく、標識をキョロキョロと見る様子もない。
「あの時、死んだなんて二人に言って、最後に会いに行きたいと言われたら…わたしが耐えられないと思った。だから、離婚なら…。会ってない時間は長いからね。春彦なんか父親の記憶はほとんどないと思うわ。だから、素直に信じてくれたの」
淡々と語られる内容ははるちゃんの行方不明と関係しているのか、まだ俺にはわからない。ただ、緑さんの辛さだけが言葉から伝わる。
「あなたに言っても仕方ないけど、二人の父親は無茶苦茶な奴だった。そして、その弟はもっと酷い。ううん、その男こそが元凶なの。でもまさかこんな大胆なことするなんて思ってなかった」
「弟?」
「そう、菜月と春彦の叔父にあたる人よ」
「その叔父さんがはるちゃんを?」
「恐らくね…それしか考えられない。わたしのせいよ。油断してたわ…。多分、菜月を狙ったんだと思うのよ。でも、あの子、外では気を張っててね。それに、あの通り気が強いから、隙がないのよね。でも、春彦はのんびり屋さんで」
緑さんも心配していたようだ。
「俺が…」
「一登くんのせいじゃないわ」
「いえ!俺が迎えに行ってたら。四、五分早く家を出れば迎えに行けるのに」
「春が来なくていいって言ったんでしょう?」
「はい…、でも…」
「最初は一緒に通学してなかったんでしょ?それに、部活が始まってからは一緒に帰ってないじゃない。朝で良かったのよ。もし、朝が無理なら帰りにって、夕方に攫われたらこうして探し始めるの、もっと時間がたってたわ」
それはそうかもしれない。
でも、でも……。
一時間ほど走り高速を下りた。ここから三十分程ではるちゃんたちの父親の実家があるらしい。叔父さんは今その家に一人で住んでいる。
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