上 下
19 / 54
ハルの次は夏、夏の次はカズ?

04

しおりを挟む
「なっちゃんが…お姉ちゃんだけど、かずくんを連れてこいって」
「えっ?俺?」
「うん」

確かに『相沢くん』って名前は出てたけど…。誰に借りたの、で相沢くんだろ?それだけの会話で何故会いに行くことになる?

「お姉ちゃんもかずくんの事『あいざわ  かずと』だって知ってるんだ。同じクラスだって教えたし……。ほら、服をもらったでしょ?その服に名前が書いてあって。僕、大きくなっても捨てられなくて…。今も一着だけ持ってるんだけど……あっ、ごめん」

何それ?感激!
俺がブルブル震えて嬉しさに耐えていると、はるちゃんが謝った。

「気持ち悪いよね…」
「ち、違う!嬉しいから!」
「ホント?」

ウンウンと何度も首を縦に振る。大きな声は出せない。

「だから、かずくんに会いたいって」
「わかった。明日、送って行くよ。その時に」
「ありがと」

一度抱きついて、胸にスリスリと額を擦り付けた。スマホのところまで戻り電話を再開する。

「あっ、なっちゃん、ごめん。……うん…明日、帰る時。…うん、…うん。じゃあ、バイバイ」

ありがととスマホを渡しながらごめんねと謝った。

「どうして謝るの?」
「だって、会うの嫌でしょ?」
「まあ、緊張するかもな。お母さんは?」
「お母さんは料理屋さんに勤めてて、夜は遅いんだ。だから家のことはだいたいお姉ちゃんがしてくれてて。携帯も持っていけって煩かったけど、何回も掛かってきたら困るから」

怖いんだよね…あははっと笑う。なんだ、掛かってくるのが嫌なだけで携帯電話は持ってるんだ。

「番号交換してくれる?」

今までも何度か連絡先を知りたいと思ったけど、教室で一度も出してるのを見たことがなかった。だから、もし持ってなかったらと思うと聞けなかった。

「良いよ。あっ、お姉ちゃんからかずくんに電話が入るかも…」
「何で?…あっ!今の、俺のって……はぁ…残ってるよな」
「ごめんね」

まさか本当に掛かってくることはないだろ。
無い、無い。
……多分。

消灯時間がきて、先生が一部屋ずつ確認のためにドアを叩く。

「藍川、大丈夫か?」

俺はまたしても1メートルほど布団を離すという作業をしてからドアを開けた。

「はい、大丈夫です。心配をおかけして申し訳ありません」
「いや、明日も無理せずにな。相沢、さっきは悪かったな」
「あっ、いえ。何もしてないってわかってもらえれば、それで」

最後に消灯時間だと告げて先生は出ていった。先生、疲れてたな。先生方には睡眠時間はないのだろうか?一晩中見張ってるのかな?部屋を抜け出したりする奴がいるのかもしれない。俺はこの部屋から出たくないけどね。もう一度布団をくっ付ける。

「はるちゃん、寝ようか?」

トイレを済ませ電気を消した。

「かずくん…」
「ん?」
「あの…」

布団の中から包帯に包まれた手が俺の腕に触れる。

「一緒に寝る?」

何て卑猥な言葉だろう。自分が発した言葉に煽られて下半身がズクっと熱を持つ。

「うん」

素直なはるちゃんに思わず説教したくなる。

コラコラ!危機感が足りないぞ?
口には出さないけど…。

俺は信用されてるんだ!
ここではダメだ!
場所もそうだし、何より付き合い出して直ぐに手を出したらダメだろ。

「こっち来る?」
「うん」

モゾモゾと動き枕を俺の枕の横に置く。大胆だ。俺だって布団をくっつけてたし、離れたくないとは思ってた。でも、ここまでするつもりはなかった。小さな布団では二人一緒には入れない。隙間がないように中央を重ね、はるちゃんが風邪をひかないように腕の中に閉じ込める。

「手、痛くない?苦しくない?」
「うん。平気」
「寒くない?」
「かずくんはなっちゃん以上の過保護だね」
「そうか?でも、今日調子悪かっただろ?また熱出たら困るから」
「ありがと。かずくん…好き」
「俺も…好きだよ」

暗闇で抱きしめる。

「はるちゃん、順番が違うけど……俺と付き合ってくれる?」
「僕で良いの?」
「はるちゃんが良い」

幼い日にした告白を再び口にする。

「嬉しい。ありがとう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

「誕生日前日に世界が始まる」

悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です) 凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^ ほっこり読んでいただけたら♡ 幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡ →書きたくなって番外編に少し続けました。

魔王の溺愛

あおい 千隼
BL
銀の髪が美しい青い瞳の少年。彼が成人の儀を迎えた日の朝すべてが変わった。 喜びと悲しみを分かち合い最後に選ぶのは愛する者の笑顔と幸せ─── 漆黒の王が心を許したのは人の子。大切な者と心つなぐ恋のお話。 …*☆*………………………………………………… 他サイトにて公開しました合同アンソロジー企画の作品です 表紙・作画/作品設定:水城 るりさん http://twitter.com/ruri_mizuki29 水城 るりさんのイラストは、著作権を放棄しておりません。 無断転載、無断加工はご免なさい、ご勘弁のほどを。 No reproduction or republication without written permission. …*☆*………………………………………………… 【公開日2018年11月2日】

処理中です...