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ハルは桜が散れば、物のカズにも入らないのでしょ?

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会議室には俺たちが出て行った時の倍くらいの人数が集まっていて、入ると視線を感じる。

ここに来てようやく川崎たちが見ていてくれて良かったと思った。先生に誤解されたままなのはさっき聞いたからかなりヤバいことはわかったけど、入学して直ぐに変なレッテルを貼られたままなんて俺、死ぬ。はるちゃんの誤解を解きたいってレベルの話じゃなかった。

「川崎、見ててくれてサンキューな」
「おう、中島は辛いだろうけど、自業自得だな。なんかおとなしそうで、可愛い感じだったのに、がっかりだ」
「何?お前、狙ってたの?」
「ちがっ…」
「そう言や、俺たちのクラスによく来てたよな?中島が目当てだったのか?」

はるちゃんばかり構ってたから違うのは知ってるけど、色んな牽制をしとかないとな。何か言いたげな川崎を置いてはるちゃんの隣に座る。

「心配かけてごめん。信じてくれる?」
「うん」

それでも悲しそうな顔は、今直ぐに抱きしめて…キスして…不安を取り除いてやりたい。俺がもっとはっきり言えば良かったのか?でも、きつく拒絶したつもりなのにな。

「藍川は行かなかったのか?」

川崎が付いて来て俺とはるちゃんの間に無理やり座ろうとする。腰を持ってはるちゃんから離し、俺の横に座らせた。

「おまっ、何?」
「何って?はるちゃんの隣は俺の場所だから」
「!……はるちゃん?」

川崎にはこれで十分じゃないかな?『はるちゃん』と呼ばれるのを嫌がってたはるちゃんが、笑顔で恥ずかしそうにしてるのをマジマジ見てる。軽く睨み、膝を叩いた。

睨んだ顔のままで人差し指を口に当てる。所謂『シー』だ。俺がやっても可愛くないけど、はるちゃんが笑ってくれたから良しとしよう。

「お前ら、いつから?」

頭をペシっと叩きもう一度人差し指を口に持っていこうとすると、はるちゃんが満面の笑みを川崎に向け人差し指を口の前で立てる。

「川崎くん…シーだよ」

なんて可愛いんだ。川崎の顔が心なしか赤い気がするけど、無視だ。はるちゃんは少し機嫌が直ったのか笑顔も見られて良かった。

川崎が鬱陶しい。けれど、今回の恩人で同じ部活に入る予定だから無碍にはできない。小さな声で幼馴染で、さっきそれがわかったと教えた。驚きながらも俺も狙ってたのにと呟いた。物騒な声は聞かなかったことにする。なんとなくわかってた。ことあるごとにはるちゃんを構いに来るから。藍川が気になるだけだったその時の俺はどうすることもできなかった。今なら、その髪に触れる手を掴んで放り投げられる。

うん。川崎には言っといて良かった。

最後の組みが会議室に入る頃には大きな会議室は人で溢れ、ガヤガヤと煩い声が響いていた。中島がそこに居るかはわからないけれど、正直どうでも良かった。無事に全員が帰って来たことと、明日の予定を簡単に伝えて順番に自分たちの部屋へと引き上げる。入り口に近い、後から到着した人から立ち上がる。俺たちは最後の方だ。


「本当に…本当に何もなかったの?」

二人で部屋に戻り、ドアを閉めるとはるちゃんが暗かった。疑ってるわけじゃないんだよと手を握る。

「そんなにしたら、痛いだろ?」
「あっ…」

急に手を掴まれたからか驚いた顔が可愛い。

「かずくんは…本当は女の子の…」
「はるちゃん…」

最後まで言う前に抱きしめた。俺とはるちゃんの胸の間にある手。その手の怪我が痛くないように強くはなくいつでも解けてしまいそうな腕。でも、離しはしない。今離したりしたら誤解されてしまう。

「さっきも言ったよね。はるちゃんが大好き」
「だって僕…男だし。きっと、明日になったら…勘違いだったって思うかも…」
「俺、はるちゃんが男の子だって知ってたって言ったよね。はるちゃんが引っ越してすぐだよ?それでも、こうしてずっと覚えてたし、今も好き。男の子のはるちゃんがずっと好きだった」
「本当に?」
「嘘なんか言わない。そうだ!約束しよう」
「約束?」
「もう桜は散ったから、来年、お花見しよう。はるちゃんの春だよ。再来年も、その先も、ずっと」
「お花見?」
「うん。勿論、映画見たり、遊園地行ったり、いっぱい一緒に」
「一緒?」
「そう、一緒。これからずっと…」

やっと笑顔を見せてくれたはるちゃんにキスをした。
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