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番外編ー5 篤紀の酔っ払い記念日
03
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腕を俺の首に絡め、見つめる瞳は欲情してた。
「どした?」
「聡史が…」
「俺が?何かした?」
「女の人に…優しかった」
「えっ?」
なんだよ?そんな訳ない。
「いつ?」
「練習終わって片付けてる時」
「ああ…」
重い荷物を持ってるのを手伝っただけ。
「違うよ?」
「わかってる…でも」
嫌だったんだ。ごめんね。って鎖骨辺りに触れる唇にぞくりとする。
裸で抱き合う…。
熱いシャワーを浴びて上気した肌がピンクに染まる。
堪らない。
そんな些細なことに嫉妬する篤紀も、ピンクの肌も。
素早く二人の身体を洗い、身体中にキスをする。
六時ギリギリに集合場所に着いた。勿論篤紀も一緒。
あれから、俺は理性で色気漂う篤紀を野郎に見せたくない一心で耐えた。
それでなくても俺の側にいると笑顔が甘くなる。
俺のだぞ。
居酒屋に入り、席に案内されると一番奥に篤紀を座らせた。
隣に誰も座らせたくない。
飲み放題のコース料理は大皿に盛られてくる。俺たちの席は四人分。次々に運ばれてくる料理を小皿に甲斐甲斐しく…前に座った先輩の分も取り分ける。
失敗した。
松本と岸井を前に座らせるんだった。
そんなことしなくて良いと大きな声で言えないじゃないか。いつもよりデレた先輩が鬱陶しい。
だから、俺のだって。
酔わないって信じてる篤紀は飲むペースは早くないけど、結構飲んでる。
「飲みすぎたよ?」
「平気」
再会した時のどこか俺を遠ざけるような言い方じゃない。
今にも抱きつきそう?
あれ?
酔ってる?
こんな大勢人がいるのに、目の前にも先輩がいるのに篤紀はさっきから俺の膝に手を乗せてる。
料理を取り分けたり、注文したり、食べたりする時は両手はテーブルの上だけど、直ぐに俺の膝に戻る。
それは無意識なのか?
そっと手を重ねると嬉しそうな顔で「へへっ」っと笑う。
可愛すぎだろ。
やっぱり酔うんじゃないか。
二人でウチ飲みする時は大体量を決めてるから勿論酔わない。この一年何度かこんなふうにみんなで飲んだ。段々表情が柔らかくなるから、この場に慣れてきたのかと思ってた。
酔った篤紀を誰かに見られたくないけど、俺の側で安心しきってる篤紀は可愛い。
「うおっ、篤紀?」
俺の肩に頭を乗せて甘えてくる。
「ダメ?」って上目遣いで聞くなよ。
ダメじゃないよ。
ダメじゃないけど、みんなには見せたくない。
「安達、可愛いな」
「やっ、先輩。やめてくださいよ」
「そうですよ。やめてくださいよ、伊藤さん」
やっぱり酔ってるよ。
篤紀は普段こんなふうに先輩に話しかけない。
「もう、見ないで下さい」
「聡史?ダメだよ」
腕に抱きつくようにして俺を見る。
「何がダメなんだ?」
「僕だけ見てて」
内緒話は囁く声が耳を擽り、内容は心を鷲掴みにした。
もう喋るな。
「先輩、飲んでますか?」
「おお、岸井…松本は?」
「聡史?僕はここだよ?僕がいればいいでしょ?松本君がいいの?嫌だ…」
「篤紀…」
腕だけじゃなく腰に抱きつくように腕を回してくる。
「安達先輩…篤紀先輩どうしちゃったんすか?」
「酔ってる」
「えっ?強いですよね?顔に似合わずめちゃ、強いんですよね?」
「そうなんだけど…」
「岸井君…」
「は、はい。何っすか?」
「ごめんね…聡史は僕のなんだ」
「おお…めちゃデレてますね。先輩には敵わないけど、可愛いっすね。篤紀先輩、大丈夫です。安達先輩は篤紀先輩のですよね?」
「そうなんだ。へへっ」
ダメだ。
「岸井、帰るわ。後、頼む」
誰にも隣に座らせたくないと一番奥に座ったのも失敗だ。みんなに話しかけてる。
笑顔で。
「僕の聡史がお世話になってます」
END
「どした?」
「聡史が…」
「俺が?何かした?」
「女の人に…優しかった」
「えっ?」
なんだよ?そんな訳ない。
「いつ?」
「練習終わって片付けてる時」
「ああ…」
重い荷物を持ってるのを手伝っただけ。
「違うよ?」
「わかってる…でも」
嫌だったんだ。ごめんね。って鎖骨辺りに触れる唇にぞくりとする。
裸で抱き合う…。
熱いシャワーを浴びて上気した肌がピンクに染まる。
堪らない。
そんな些細なことに嫉妬する篤紀も、ピンクの肌も。
素早く二人の身体を洗い、身体中にキスをする。
六時ギリギリに集合場所に着いた。勿論篤紀も一緒。
あれから、俺は理性で色気漂う篤紀を野郎に見せたくない一心で耐えた。
それでなくても俺の側にいると笑顔が甘くなる。
俺のだぞ。
居酒屋に入り、席に案内されると一番奥に篤紀を座らせた。
隣に誰も座らせたくない。
飲み放題のコース料理は大皿に盛られてくる。俺たちの席は四人分。次々に運ばれてくる料理を小皿に甲斐甲斐しく…前に座った先輩の分も取り分ける。
失敗した。
松本と岸井を前に座らせるんだった。
そんなことしなくて良いと大きな声で言えないじゃないか。いつもよりデレた先輩が鬱陶しい。
だから、俺のだって。
酔わないって信じてる篤紀は飲むペースは早くないけど、結構飲んでる。
「飲みすぎたよ?」
「平気」
再会した時のどこか俺を遠ざけるような言い方じゃない。
今にも抱きつきそう?
あれ?
酔ってる?
こんな大勢人がいるのに、目の前にも先輩がいるのに篤紀はさっきから俺の膝に手を乗せてる。
料理を取り分けたり、注文したり、食べたりする時は両手はテーブルの上だけど、直ぐに俺の膝に戻る。
それは無意識なのか?
そっと手を重ねると嬉しそうな顔で「へへっ」っと笑う。
可愛すぎだろ。
やっぱり酔うんじゃないか。
二人でウチ飲みする時は大体量を決めてるから勿論酔わない。この一年何度かこんなふうにみんなで飲んだ。段々表情が柔らかくなるから、この場に慣れてきたのかと思ってた。
酔った篤紀を誰かに見られたくないけど、俺の側で安心しきってる篤紀は可愛い。
「うおっ、篤紀?」
俺の肩に頭を乗せて甘えてくる。
「ダメ?」って上目遣いで聞くなよ。
ダメじゃないよ。
ダメじゃないけど、みんなには見せたくない。
「安達、可愛いな」
「やっ、先輩。やめてくださいよ」
「そうですよ。やめてくださいよ、伊藤さん」
やっぱり酔ってるよ。
篤紀は普段こんなふうに先輩に話しかけない。
「もう、見ないで下さい」
「聡史?ダメだよ」
腕に抱きつくようにして俺を見る。
「何がダメなんだ?」
「僕だけ見てて」
内緒話は囁く声が耳を擽り、内容は心を鷲掴みにした。
もう喋るな。
「先輩、飲んでますか?」
「おお、岸井…松本は?」
「聡史?僕はここだよ?僕がいればいいでしょ?松本君がいいの?嫌だ…」
「篤紀…」
腕だけじゃなく腰に抱きつくように腕を回してくる。
「安達先輩…篤紀先輩どうしちゃったんすか?」
「酔ってる」
「えっ?強いですよね?顔に似合わずめちゃ、強いんですよね?」
「そうなんだけど…」
「岸井君…」
「は、はい。何っすか?」
「ごめんね…聡史は僕のなんだ」
「おお…めちゃデレてますね。先輩には敵わないけど、可愛いっすね。篤紀先輩、大丈夫です。安達先輩は篤紀先輩のですよね?」
「そうなんだ。へへっ」
ダメだ。
「岸井、帰るわ。後、頼む」
誰にも隣に座らせたくないと一番奥に座ったのも失敗だ。みんなに話しかけてる。
笑顔で。
「僕の聡史がお世話になってます」
END
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十六夜さま
拙い文章にお付き合いいただき、ありがとうございます。
すれ違いって、じれじれで、ドギドキしたりしますよね
ちょっとマイナス思考の二人ですが、見守って頂けると嬉しいです
感想をありがとうございました
最後まで、よろしくお願いしますm(_ _)m