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story1「私たちは、地球に引きこもっている」
ヤツメギャルの強さがチート過ぎて異能バトルが成立しない件
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凄むヤツメに対し、低テンションな敵二人、という構図。
「うっわ、めんどくさー。さすがウチらのボスを撃った悪女って感じー」
スナメリはあくび。
「うちら食用魚じゃないから捕獲禁止ー」
クモヒトデは被り物の先っぽをいじっていた。
「あんたら何もんだよ? そこのタワマンに住んでる女の飼い犬か」
どうせ素直には答えないだろうと踏んでの、諦め節にも似たヤツメの問い。
けれど予想に反して、二人はいたって愚直に、かつ交互に回答してくるのだった。
「私たちは!」
「私たちはっ」
「世界崩壊前の」
「素晴らしき文明を取り戻すため」
「力を合わせ」
「正々堂々と戦う」
そして二人合わせて、
「「『カセキ反乱軍』でぇーす!」」
とユニゾン。すかさずヤツメに、
「いや運動会かよ」
と突っ込まれていた。
ヤツメはさらに、「てか、“化石”だって。自分で認めちゃってんの草ぁ」と付け加える。
彼女やシャチ子にとって、崩壊前の世界に未練を残す女など、ただの化石でしかないのだろう。
「…………」
シャチ子のほうは、ただヤツメの背後で固まっているしかなかった。
自分とヤツメ、同じ引きこもり少女だったというのに、どうしてこれほどまでに違いが出ているのか。
一体、“一介の引きこもり少女”に何が起これば、このような戦闘能力を手にした上、銃まで扱うような海鮮娘が出来上がるのか。
もしや、元々その筋の家の娘……? カイセン娘ならぬ、ゴクセン娘!?
シャチ子の勘ぐりをさえぎるように、ヤツメは敵へ向かって好戦的な笑顔を投げる。
「それってどーせ、“協力してくれたら世界の半分あげるよ”的な勧誘受けたんでしょ? お前らのことなんか、全部まるっとお見通しなんだよ」
「それゴクセンのほうじゃないよ」
仲間の言葉に違和感を覚えるシャチ子。
一方、敵二人は顔を見合わせて騒ぎ出した。
「ちょっ何でコイツが加積様との会話知ってんの?」
「えっ盗聴されてたぁ?」
これはつまり、ヤツメが冗談で言った状況が、悪サイドにおいてリアルに起こっていたということだろう。
また、ミスXの名が加積であることが判明した。
「ガチでそう言われたのか!? ボスともども単純な奴らぁ。あぁしら元は引きこもりなんだから、世間知らずなわけよぉ。悪い奴の勧誘に騙されやすい性質なんだって」
あぁしら……そう。“お前ら”ではないのである。
拡張された同族嫌悪は、下手な差別心や排他性よりも恐ろしい火種となる。
私は、嫌な予感を覚えた。
それが伝わってか、はぁー……ヤツメがアンニュイな溜息を吐いた。
その一瞬の隙を逃さず、
「ツキヌキっ!」
クモヒトデの指が目にも止まらぬ速さでヤツメの喉元めがけて伸びる! が、
「甘いわッ!」
即座にヤツメの銃が火を吹き、ヒトデの指は撃ち抜かれた。
「いっったたぁあぁあっ!」
鮮血を噴き出す指が、よろよろとクモヒトデ本人のもとへ還ってゆく。
どうやら彼女の場合、全身というよりは両手がクモヒトデの特性──柔軟で変幻自在な腕──を宿しているようだ。
こうしたタイプの進化を遂げている娘もいるのかと、シャチ子とヤツメはしばし愕然としていた。
ドン、と湿った床をヤツメが踏み鳴らす。
「あんた今、あぁしとシャチ子を同時にブッ刺して、海鮮おでんみたいなザマにしようとしたね?」
ヤツメの強烈なイロニーも、今の敵二人の元へは到達しない。
「クモちゃん! ああっ、クモちゃぁーんっ!」
スナメリの悲痛な叫びと、
「うぅ……ぅあぁあ」
クモヒトデの傷ましいあえぎ。
スナメリの目がヤツメに憎しみのギラつきを向けた。
「あんたタダおかないよ? 加積様の腕を撃っただけじゃなく、クモちゃんの指までっ」
ヤツメは指で銃を振り回して遊ぶ。
「はー、アレ腕に当たったのかー。へーそりゃ残念無念。心臓か頭かに当たってりゃ良かったのにねぇ」
「ちくしょーめぇー!」
食ってかかってこようとするスナメリに、ヤツメは早口の忠告を……
「あんたの大事なクモちゃん、こんな腐った場所じゃ、傷口からバイキン入って破傷風不可避だよん? 帰って手当てしなくていいのぉ?」
「くッ……」
スナメリは歯を食いしばりつつ、もだえるクモヒトデの肩を抱いて、元来たエスカレーターへ入って行った。
「クモちゃん大丈夫ぅ? 海水、しみない?」
「おんなじくらい……痛いだけ」
それはそのとおりであり、海水フレンドリーとなった彼女らは、地上にいようと海中にいようと、傷の痛みに変わりはないのである。
ヤツメはワンピースをハンガーラックに戻すと、先ほど衝撃でクモヒトデが腰から落とした魚雷砲を持ち上げる。
「エネミーからの武器ドロップ~! 基本中の基本って感じぃ」
そうしてシャチ子に振り向くも、彼女はただうつむいて呆然としているのみ。
「…………」
ヤツメはシャチ子の真ん前までゆく。
「おい、武器を手に入れたんだよ、あぁしらは。これであいつらブチのめしてやろ?」
「…………」
「うっわ、めんどくさー。さすがウチらのボスを撃った悪女って感じー」
スナメリはあくび。
「うちら食用魚じゃないから捕獲禁止ー」
クモヒトデは被り物の先っぽをいじっていた。
「あんたら何もんだよ? そこのタワマンに住んでる女の飼い犬か」
どうせ素直には答えないだろうと踏んでの、諦め節にも似たヤツメの問い。
けれど予想に反して、二人はいたって愚直に、かつ交互に回答してくるのだった。
「私たちは!」
「私たちはっ」
「世界崩壊前の」
「素晴らしき文明を取り戻すため」
「力を合わせ」
「正々堂々と戦う」
そして二人合わせて、
「「『カセキ反乱軍』でぇーす!」」
とユニゾン。すかさずヤツメに、
「いや運動会かよ」
と突っ込まれていた。
ヤツメはさらに、「てか、“化石”だって。自分で認めちゃってんの草ぁ」と付け加える。
彼女やシャチ子にとって、崩壊前の世界に未練を残す女など、ただの化石でしかないのだろう。
「…………」
シャチ子のほうは、ただヤツメの背後で固まっているしかなかった。
自分とヤツメ、同じ引きこもり少女だったというのに、どうしてこれほどまでに違いが出ているのか。
一体、“一介の引きこもり少女”に何が起これば、このような戦闘能力を手にした上、銃まで扱うような海鮮娘が出来上がるのか。
もしや、元々その筋の家の娘……? カイセン娘ならぬ、ゴクセン娘!?
シャチ子の勘ぐりをさえぎるように、ヤツメは敵へ向かって好戦的な笑顔を投げる。
「それってどーせ、“協力してくれたら世界の半分あげるよ”的な勧誘受けたんでしょ? お前らのことなんか、全部まるっとお見通しなんだよ」
「それゴクセンのほうじゃないよ」
仲間の言葉に違和感を覚えるシャチ子。
一方、敵二人は顔を見合わせて騒ぎ出した。
「ちょっ何でコイツが加積様との会話知ってんの?」
「えっ盗聴されてたぁ?」
これはつまり、ヤツメが冗談で言った状況が、悪サイドにおいてリアルに起こっていたということだろう。
また、ミスXの名が加積であることが判明した。
「ガチでそう言われたのか!? ボスともども単純な奴らぁ。あぁしら元は引きこもりなんだから、世間知らずなわけよぉ。悪い奴の勧誘に騙されやすい性質なんだって」
あぁしら……そう。“お前ら”ではないのである。
拡張された同族嫌悪は、下手な差別心や排他性よりも恐ろしい火種となる。
私は、嫌な予感を覚えた。
それが伝わってか、はぁー……ヤツメがアンニュイな溜息を吐いた。
その一瞬の隙を逃さず、
「ツキヌキっ!」
クモヒトデの指が目にも止まらぬ速さでヤツメの喉元めがけて伸びる! が、
「甘いわッ!」
即座にヤツメの銃が火を吹き、ヒトデの指は撃ち抜かれた。
「いっったたぁあぁあっ!」
鮮血を噴き出す指が、よろよろとクモヒトデ本人のもとへ還ってゆく。
どうやら彼女の場合、全身というよりは両手がクモヒトデの特性──柔軟で変幻自在な腕──を宿しているようだ。
こうしたタイプの進化を遂げている娘もいるのかと、シャチ子とヤツメはしばし愕然としていた。
ドン、と湿った床をヤツメが踏み鳴らす。
「あんた今、あぁしとシャチ子を同時にブッ刺して、海鮮おでんみたいなザマにしようとしたね?」
ヤツメの強烈なイロニーも、今の敵二人の元へは到達しない。
「クモちゃん! ああっ、クモちゃぁーんっ!」
スナメリの悲痛な叫びと、
「うぅ……ぅあぁあ」
クモヒトデの傷ましいあえぎ。
スナメリの目がヤツメに憎しみのギラつきを向けた。
「あんたタダおかないよ? 加積様の腕を撃っただけじゃなく、クモちゃんの指までっ」
ヤツメは指で銃を振り回して遊ぶ。
「はー、アレ腕に当たったのかー。へーそりゃ残念無念。心臓か頭かに当たってりゃ良かったのにねぇ」
「ちくしょーめぇー!」
食ってかかってこようとするスナメリに、ヤツメは早口の忠告を……
「あんたの大事なクモちゃん、こんな腐った場所じゃ、傷口からバイキン入って破傷風不可避だよん? 帰って手当てしなくていいのぉ?」
「くッ……」
スナメリは歯を食いしばりつつ、もだえるクモヒトデの肩を抱いて、元来たエスカレーターへ入って行った。
「クモちゃん大丈夫ぅ? 海水、しみない?」
「おんなじくらい……痛いだけ」
それはそのとおりであり、海水フレンドリーとなった彼女らは、地上にいようと海中にいようと、傷の痛みに変わりはないのである。
ヤツメはワンピースをハンガーラックに戻すと、先ほど衝撃でクモヒトデが腰から落とした魚雷砲を持ち上げる。
「エネミーからの武器ドロップ~! 基本中の基本って感じぃ」
そうしてシャチ子に振り向くも、彼女はただうつむいて呆然としているのみ。
「…………」
ヤツメはシャチ子の真ん前までゆく。
「おい、武器を手に入れたんだよ、あぁしらは。これであいつらブチのめしてやろ?」
「…………」
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