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story1「私たちは、地球に引きこもっている」
シャチ娘、ヤツメギャルの下着を盗撮した疑いで身柄確保!?
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敵地へ急がんと泳ぐシャチ少女の前に現れ、不当な身柄確保を試みてきた八つ目のウナギ……の、少女。
シャチ娘は抵抗するものの、巨大化したヤツメウナギの屈強さには歯向かえず。
元々ハイパワーな種族であるヤツメウナギ。それが人間サイズとなり、しかも手足までもを得ているのだから、もう無難な存在であるはずがない。
ヤツメウナギ娘の腕に胴体をつかまれ、なすすべもなく海上へと連行されゆくシャチ。
大げさな水しぶきとともに、二人の頭が水上から飛び出した瞬間、
「おいこらド変態シャチ娘! 今、あぁしのパンツ盗撮しようとしたね!?」
ヤツメ娘がセキを切る勢いで怒鳴った。それは当然、超音波ではなく、口から噴出した叫び。
「なんのこと? 私はここに用事があって」
シャチは、このような状況においてもなお透明な肉声で、必死の弁明を試みるも、ヒートアップしたヤツメウナギは聞く耳持たず。
「あーあーあー、マぁジ最悪。用事って盗撮のことかよ? 〈アレさえ撮れれば〉とか言ってたの、あぁしにハッキリ届いてんだよ!」
「違う! それはそこのマンsっ」
釈明のため、タワーマンションのほうを指差そうとするも、その事情を初対面の相手に話すことはできない。
慌てて話を止めたが、よりによって“マン”で言葉を切ったのは不味かった、とシャチは即座に後悔する。
「あ? そこのマンってなんだよ!? そこのマンって! あぁしのステキなカラダがそんなに恋しいか!」
本人が言う通り、このヤツメ娘はとても魅力的だった。
いわゆるギャルであり、細く描かれた眉、けばけばしいまでの『つけま』、下着がギリギリ隠れる程度のミニスカート、それに銀色のツインテール……王道中の王道といえる。
加えて、セーラー服の襟は黒、そのラインは銀色、その上に着たセーターは濃いグレーであるため、ファッションも完全にヤツメウナギの配色となっている。
それだけに、もみあげからツインテールにかけて左右に七個ずつ並んだ髪飾りが、なんの不自然さもなく溶け込んでいた。
黒髪に三つ編みに眼鏡……というシャチ娘とは好一対といえるだろう。
シャチからスマホを強奪し、
「おら、ハッキリ撮れてんじゃんか! あぁしのパンツが!」
画面を見せつけてくる。
そこには、下着というより、なぜか見慣れた標識が映っているようだった。
黄色い三角形の中央に、大きくビックリマークが書かれた、アレだ。
「あれ? 標識が映ってる」
「あーめんどくさー」
少し引いたコマを一時停止すると、それはヤツメウナギの穿いた下着の模様であることが判明。
「へぇ。変わった柄」
マイペースかつ低テンションなシャチ少女は、今の状況も忘れ、無意識のうちに話題を脱線させる。
ヤツメウナギは、その変拍子に呑まれそうに……
「でしょ。結構気に入ってんだ~ってハナシ逸らしてんじゃねぇし」
……なったものの、寸でのところで回避。
「とにかく私、盗撮なんかしてないから。帰ってよ」
「あんたみたいな女の敵を野放しにするわけにいかにゃーだ。ったく、せっかく念願の“女しかいないセカイ”になったってのに、こんな目に遭うんじゃやってらんねぇ」
そこで、シャチの真顔がよりシリアスな暗みを帯びた。
「私、そういう“女の敵”と戦う立場だから。今だってこうやって……」
その先を言いたいけれど、それは、ここで突然伝えるには、あまりにも重い衝撃を持つ内容であり……。
「意味わかんなーい」
シャチをつかんだまま、ヤツメウナギはそっぽを向く。
「ねえヤツメウナギさん、話だけでも」
面倒な茶番のおかげで、シャチは忘れ切っていた。
……ここが事実上の敵地であるということを。
パーカーのフードに照りつける、太陽からの熱いアプローチが、ふっと何者かによって遮られる。
刹那、目の前のヤツメウナギが、ふいに顔色を変えた。
「ちょっ……なんでオトコが生き残ってんだよ!?」
ヤツメギャルは困惑した。なぜ、とうに滅んだはずの“人間の男”がここにいるのか。
あれよあれよという間にオトコはシャチの背後に密着。
「グェヘヘヘヘヘ」
ヒトのものとは思えぬ醜悪な笑いとともに、彼女の体を撫でまわしてきた。
シャチ娘は抵抗するものの、巨大化したヤツメウナギの屈強さには歯向かえず。
元々ハイパワーな種族であるヤツメウナギ。それが人間サイズとなり、しかも手足までもを得ているのだから、もう無難な存在であるはずがない。
ヤツメウナギ娘の腕に胴体をつかまれ、なすすべもなく海上へと連行されゆくシャチ。
大げさな水しぶきとともに、二人の頭が水上から飛び出した瞬間、
「おいこらド変態シャチ娘! 今、あぁしのパンツ盗撮しようとしたね!?」
ヤツメ娘がセキを切る勢いで怒鳴った。それは当然、超音波ではなく、口から噴出した叫び。
「なんのこと? 私はここに用事があって」
シャチは、このような状況においてもなお透明な肉声で、必死の弁明を試みるも、ヒートアップしたヤツメウナギは聞く耳持たず。
「あーあーあー、マぁジ最悪。用事って盗撮のことかよ? 〈アレさえ撮れれば〉とか言ってたの、あぁしにハッキリ届いてんだよ!」
「違う! それはそこのマンsっ」
釈明のため、タワーマンションのほうを指差そうとするも、その事情を初対面の相手に話すことはできない。
慌てて話を止めたが、よりによって“マン”で言葉を切ったのは不味かった、とシャチは即座に後悔する。
「あ? そこのマンってなんだよ!? そこのマンって! あぁしのステキなカラダがそんなに恋しいか!」
本人が言う通り、このヤツメ娘はとても魅力的だった。
いわゆるギャルであり、細く描かれた眉、けばけばしいまでの『つけま』、下着がギリギリ隠れる程度のミニスカート、それに銀色のツインテール……王道中の王道といえる。
加えて、セーラー服の襟は黒、そのラインは銀色、その上に着たセーターは濃いグレーであるため、ファッションも完全にヤツメウナギの配色となっている。
それだけに、もみあげからツインテールにかけて左右に七個ずつ並んだ髪飾りが、なんの不自然さもなく溶け込んでいた。
黒髪に三つ編みに眼鏡……というシャチ娘とは好一対といえるだろう。
シャチからスマホを強奪し、
「おら、ハッキリ撮れてんじゃんか! あぁしのパンツが!」
画面を見せつけてくる。
そこには、下着というより、なぜか見慣れた標識が映っているようだった。
黄色い三角形の中央に、大きくビックリマークが書かれた、アレだ。
「あれ? 標識が映ってる」
「あーめんどくさー」
少し引いたコマを一時停止すると、それはヤツメウナギの穿いた下着の模様であることが判明。
「へぇ。変わった柄」
マイペースかつ低テンションなシャチ少女は、今の状況も忘れ、無意識のうちに話題を脱線させる。
ヤツメウナギは、その変拍子に呑まれそうに……
「でしょ。結構気に入ってんだ~ってハナシ逸らしてんじゃねぇし」
……なったものの、寸でのところで回避。
「とにかく私、盗撮なんかしてないから。帰ってよ」
「あんたみたいな女の敵を野放しにするわけにいかにゃーだ。ったく、せっかく念願の“女しかいないセカイ”になったってのに、こんな目に遭うんじゃやってらんねぇ」
そこで、シャチの真顔がよりシリアスな暗みを帯びた。
「私、そういう“女の敵”と戦う立場だから。今だってこうやって……」
その先を言いたいけれど、それは、ここで突然伝えるには、あまりにも重い衝撃を持つ内容であり……。
「意味わかんなーい」
シャチをつかんだまま、ヤツメウナギはそっぽを向く。
「ねえヤツメウナギさん、話だけでも」
面倒な茶番のおかげで、シャチは忘れ切っていた。
……ここが事実上の敵地であるということを。
パーカーのフードに照りつける、太陽からの熱いアプローチが、ふっと何者かによって遮られる。
刹那、目の前のヤツメウナギが、ふいに顔色を変えた。
「ちょっ……なんでオトコが生き残ってんだよ!?」
ヤツメギャルは困惑した。なぜ、とうに滅んだはずの“人間の男”がここにいるのか。
あれよあれよという間にオトコはシャチの背後に密着。
「グェヘヘヘヘヘ」
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