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ヒューメニア戦争編
第106話 魔神竜レオンハルト ーヴィダルー
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影に飲み込まれたレオンハルトは山のように巨大な竜の姿となり、半狂乱のまま戦場のあらゆる者達を蹂躙し始めた。
その姿はまるで……。
魔神竜そのものだった。
「純粋なる力の集合体。これがレオンハルトの切り札か」
デモニカが腹部からフレイブランドを引き抜き、大地へと突き刺した。それと同時に彼女の傷口に火が灯り、消し炭となって傷が再生する。
「クシル。一般兵を連れて逃げろ。敵味方問わずな」
「承知しましたヴィダル様」
フェンリル族のクシル達が戦場を駆け巡り、兵士達へと呼びかけた。
「皆引け! 我らがいてはデモニカ様達の邪魔となる! ヒューメニア兵も死にたくなければここから去れ!」
クシルの声にヒューメニア兵士達も次々と武器を捨てて逃げ出した。
「愚か者どもが!!」
魔神竜が黒炎を発射する。
大地へ直撃したブレスは爆風を巻き起こし、逃走しようとしたヒューメニア兵達を一瞬にして吹き飛ばした。
「はははははははは!! もう貧弱な部下などいらん! このまま貴様らを根絶やしにしてやるるらるるはらるららははははは!!」
執念だけで動いている。魔神竜の力を利用していたはずが、力に飲み込まれたか……。
「デモニカ。以前魔神竜を仕留めた魔法を頼めるか?」
「ああ」
デモニカが手をかざすと、レオンハルトの頭上に一筋の光が差し込む。
「破滅の地獄火」
魔法名と共にレオンハルトの体が蒸発する。
しかし……。
「真の魔神の力を手にした私を殺すことはできん!!」
何も無い空間で猛烈な速度で魔神竜が再生し、再びその姿を現した。
「ハハははハハハはははは!! もはや私に恐れる物は何も無い!!」
「殺すことは叶わぬ……か」
デモニカがその手を見つめる。
「ちょ、ちょっとヴィダル? あんなのどうやって倒すの?」
レオリアが心配そうな顔で袖を掴んだ。
「今考えている」
「か、考えている……って」
「らしくないですよレオリア。ヴィダルはいつも私達を導いてくれたではないですか。今回もきっと、大丈夫」
フィオナが戸惑うレオリアを落ち着かせるように笑みを浮かべる。
「……そうだよね。僕、デモニカ様の魔法が効かなくて焦ってたみたい。ヴィダルのこと信じるよ!」
レオリアが俺を見つめる。それに答えるようにその頭を撫でた。
「其方の知恵……我らに貸してくれ」
デモニカの期待に応えるように思考を巡らせる。
そうだ。俺の役割は考え、皆を勝利へ導くこと。その為にデモニカ達と共に魔王軍を作って来たんじゃないか。
俺達血族の者ならば、必ずヤツを倒せるはずだ。
「まずはヤツの動きを封じる。フィオナは混沌の使者を展開しヤツの動きを阻害しろ」
「分かりました」
「レオリアとデモニカ様は左右からの挟撃を。俺に観察する時間をくれ」
2人が頷きレオンハルトへと向かう。
それを見届けたフィオナは召喚魔法「混沌の使者」を唱える。
空中から複数の目玉を持つ異形の存在が現れ、魔神竜の周囲を漆黒の空間に変化させた。
「何をやっている貴様ら!!」
「……っ!?」
黒炎を発射しようとした竜の顔を、フィオナが召喚魔法の力を駆使して狙いを逸らす。吐き出された黒炎が爆音と共に草原の地形を変えた。
「以前の魔神竜よりもずっと強力です! 何回防げるか……」
「全てを防がなくて良い。ヤツが攻撃を仕掛ける一瞬だけに集中しろ」
「はい」
「円環煌舞!!」
「渦巻く地獄火」
デモニカとレオリアが魔神竜へと攻撃を放つ。
「ぐわああああはははははは!! 無駄だ!」
魔神竜の両腕か吹き飛び、瞬時に再生する。
魔神竜を観察し、弱点を探す。
元の魔神竜に見られた宝玉は見られない。瞬時に蒸発させても復活する。完全に不死の存在か。だが……レオリアに斬られた右腕だけ再生が遅いように見える。
「デモニカああああ!!」
魔神竜がデモニカへと拳を放つ。
「地獄炎」
魔法名と共にレオンハルトの腕が吹き飛ばされる。しかし、再び復活しその拳を伸ばした。
「死ねえええええぇぇぇ!!」
その手がデモニカを捉えようとした刹那。
空間が歪み、レオンハルトの腕を切断した。
「何!?」
驚愕の表情を浮かべた魔神竜を螺旋が貫く。
その螺旋は周囲に激流を帯びていた。
「が、あああああああ!!」
螺旋に絡め取られ、魔神竜の体が粉微塵に吹き飛ばされる。
「なんで魔神竜がこんな所に?」
「ちっ。なんだよコイツ。めんどくせぇ」
黄金の髪を靡かせた女戦士と大剣を背負ったハーピーが大地へと舞い降りた。
「すごいじゃん2人とも!」
レオリアがナルガインとザビーネへ駆け寄る。
「はは。これが効いたみたいだな」
ナルガインが古代文字の描かれた槍を担ぐ。
「戦った戦士の武器だ」
粉微塵となった魔神竜は、ゆっくりとだがその体を再生させていく。
先程まで見せていた驚異的な再生力。それを曇らせたのはナルガインが「聖槍ヴェドグラ」を装備していたからだったか……。
確かにレオリアの攻撃にも兆しがあった。さすが神殺しの武器という訳か。魔神竜に対して特化している。
しかしそれでも殺すには至らない。ヤツを倒す術は……。
大地に刺さった聖剣フレイブランドを見つめる。
クラウソラス、グラム、ヴェドグラ、そしてフレイブランド。これらの力を同時に……いや、再生を遅くしたとして1日その動きが封じられるかどうか。
いや、待て……。
この4本があれば他にもできることはあるんじゃないか?
後は何処にの問題だけクリアできれば……。
「フィオナ。混沌の使者を使って混沌世界への門を開くことはできるか?」
「混沌の使者は混沌世界の住人。召喚魔法を解除し、彼が元の居場所に変える瞬間は混沌世界への門が開いています」
よし。混沌世界を場所にすれば実行できるぞ。
「聞いてくれみんな。ヤツを倒す方法を思い付いた」
血族の者達が俺を見る。
「4本の聖剣。そして、フィオナの召喚魔法を使い、魔神竜となったレオンハルトを封印する——」
◇◇◇
数刻後。魔神竜の体は復元し、レオンハルトの意識も戻った。
「よくも……やってくれたな……!?」
復活と同時に魔神竜がその口を開く。
「許さん! 許さんぞ貴様らああああああ!!」
最大の威力を誇るブレス攻撃でこの草原ごとデモニカ達を消し飛ばそうと魔神竜が構える。
その視線の先にデモニカと血族の者達。しかし。彼ら攻撃を放たれようとしてなお微動だにしなかった。
「なんだ? なぜ攻撃を避けようとしない?」
魔神竜の瞳に彼らが映る。
双剣を持つ獣人。
聖槍を携える女戦士。
聖大剣を構えるハーピー。
そして。
炎を纏う聖剣を向ける、魔王。
「神殺しの武器!? ま、まさか!?」
「そのまさかだレオンハルト。貴様が犯した宿業と共に永遠を彷徨うが良い」
デモニカがフレイブランドを空へ掲げる。
「混沌の使者よ。貴方の世界へと帰りなさい」
銀髪のエルフがそう告げると、不定形の精霊が空を裂き、上空に裂け目が現れる。混沌世界が現れた。
「女神の力を奪った武器達よ。その力を持って魔神竜を封印せよ」
それは、かつて魔神自身が聞いた言葉。
魔王となった今でも、その記憶の中核に残る屈辱の記憶。
それを今、女神エスタを貶めた仇敵へと放った。
裂け目に光が放たれ、強烈な風が巻き起こる。
「や、やめろ!! 私は! 私はあああああああ!?」
魔神竜となったレオンハルトは、その風に抗う事ができず、裂け目へと吸い込まれていく。
「あああ"あアああ"ああああァァァああああ!?」
断末魔を上げながら裂け目へと体を吸い込まれる魔神竜。
その体を飲み込まれ、邪悪な竜となった勇者が封印されていく。
そして、その体全てが裂け目へと吸い込まれた。
その場にいた全員が勝利を確信した次の瞬間—。
「デモニカあああああ!! 貴様だけでも道連れにしてやるぞ!!!」
突然裂け目から巨大な腕が伸び、デモニカへと迫る。
「……っ!?」
封印の儀式により聖剣を持つ者達は身動きが取れない。
召喚魔法も混沌世界へのゲートの役割によって力を使い果たしている。
誰もがデモニカを守れないと感じたその時。
1人の男がデモニカを突き飛ばした。
「ヴィダル!?」
デモニカの瞳にヴィダルが映る。彼女の代わりに魔神竜へと捕らえられた男が。
彼が何かを言おうとした瞬間。
混沌世界への門は閉じられ、魔神竜もろとも煙のように消えてしまった。
その姿はまるで……。
魔神竜そのものだった。
「純粋なる力の集合体。これがレオンハルトの切り札か」
デモニカが腹部からフレイブランドを引き抜き、大地へと突き刺した。それと同時に彼女の傷口に火が灯り、消し炭となって傷が再生する。
「クシル。一般兵を連れて逃げろ。敵味方問わずな」
「承知しましたヴィダル様」
フェンリル族のクシル達が戦場を駆け巡り、兵士達へと呼びかけた。
「皆引け! 我らがいてはデモニカ様達の邪魔となる! ヒューメニア兵も死にたくなければここから去れ!」
クシルの声にヒューメニア兵士達も次々と武器を捨てて逃げ出した。
「愚か者どもが!!」
魔神竜が黒炎を発射する。
大地へ直撃したブレスは爆風を巻き起こし、逃走しようとしたヒューメニア兵達を一瞬にして吹き飛ばした。
「はははははははは!! もう貧弱な部下などいらん! このまま貴様らを根絶やしにしてやるるらるるはらるららははははは!!」
執念だけで動いている。魔神竜の力を利用していたはずが、力に飲み込まれたか……。
「デモニカ。以前魔神竜を仕留めた魔法を頼めるか?」
「ああ」
デモニカが手をかざすと、レオンハルトの頭上に一筋の光が差し込む。
「破滅の地獄火」
魔法名と共にレオンハルトの体が蒸発する。
しかし……。
「真の魔神の力を手にした私を殺すことはできん!!」
何も無い空間で猛烈な速度で魔神竜が再生し、再びその姿を現した。
「ハハははハハハはははは!! もはや私に恐れる物は何も無い!!」
「殺すことは叶わぬ……か」
デモニカがその手を見つめる。
「ちょ、ちょっとヴィダル? あんなのどうやって倒すの?」
レオリアが心配そうな顔で袖を掴んだ。
「今考えている」
「か、考えている……って」
「らしくないですよレオリア。ヴィダルはいつも私達を導いてくれたではないですか。今回もきっと、大丈夫」
フィオナが戸惑うレオリアを落ち着かせるように笑みを浮かべる。
「……そうだよね。僕、デモニカ様の魔法が効かなくて焦ってたみたい。ヴィダルのこと信じるよ!」
レオリアが俺を見つめる。それに答えるようにその頭を撫でた。
「其方の知恵……我らに貸してくれ」
デモニカの期待に応えるように思考を巡らせる。
そうだ。俺の役割は考え、皆を勝利へ導くこと。その為にデモニカ達と共に魔王軍を作って来たんじゃないか。
俺達血族の者ならば、必ずヤツを倒せるはずだ。
「まずはヤツの動きを封じる。フィオナは混沌の使者を展開しヤツの動きを阻害しろ」
「分かりました」
「レオリアとデモニカ様は左右からの挟撃を。俺に観察する時間をくれ」
2人が頷きレオンハルトへと向かう。
それを見届けたフィオナは召喚魔法「混沌の使者」を唱える。
空中から複数の目玉を持つ異形の存在が現れ、魔神竜の周囲を漆黒の空間に変化させた。
「何をやっている貴様ら!!」
「……っ!?」
黒炎を発射しようとした竜の顔を、フィオナが召喚魔法の力を駆使して狙いを逸らす。吐き出された黒炎が爆音と共に草原の地形を変えた。
「以前の魔神竜よりもずっと強力です! 何回防げるか……」
「全てを防がなくて良い。ヤツが攻撃を仕掛ける一瞬だけに集中しろ」
「はい」
「円環煌舞!!」
「渦巻く地獄火」
デモニカとレオリアが魔神竜へと攻撃を放つ。
「ぐわああああはははははは!! 無駄だ!」
魔神竜の両腕か吹き飛び、瞬時に再生する。
魔神竜を観察し、弱点を探す。
元の魔神竜に見られた宝玉は見られない。瞬時に蒸発させても復活する。完全に不死の存在か。だが……レオリアに斬られた右腕だけ再生が遅いように見える。
「デモニカああああ!!」
魔神竜がデモニカへと拳を放つ。
「地獄炎」
魔法名と共にレオンハルトの腕が吹き飛ばされる。しかし、再び復活しその拳を伸ばした。
「死ねえええええぇぇぇ!!」
その手がデモニカを捉えようとした刹那。
空間が歪み、レオンハルトの腕を切断した。
「何!?」
驚愕の表情を浮かべた魔神竜を螺旋が貫く。
その螺旋は周囲に激流を帯びていた。
「が、あああああああ!!」
螺旋に絡め取られ、魔神竜の体が粉微塵に吹き飛ばされる。
「なんで魔神竜がこんな所に?」
「ちっ。なんだよコイツ。めんどくせぇ」
黄金の髪を靡かせた女戦士と大剣を背負ったハーピーが大地へと舞い降りた。
「すごいじゃん2人とも!」
レオリアがナルガインとザビーネへ駆け寄る。
「はは。これが効いたみたいだな」
ナルガインが古代文字の描かれた槍を担ぐ。
「戦った戦士の武器だ」
粉微塵となった魔神竜は、ゆっくりとだがその体を再生させていく。
先程まで見せていた驚異的な再生力。それを曇らせたのはナルガインが「聖槍ヴェドグラ」を装備していたからだったか……。
確かにレオリアの攻撃にも兆しがあった。さすが神殺しの武器という訳か。魔神竜に対して特化している。
しかしそれでも殺すには至らない。ヤツを倒す術は……。
大地に刺さった聖剣フレイブランドを見つめる。
クラウソラス、グラム、ヴェドグラ、そしてフレイブランド。これらの力を同時に……いや、再生を遅くしたとして1日その動きが封じられるかどうか。
いや、待て……。
この4本があれば他にもできることはあるんじゃないか?
後は何処にの問題だけクリアできれば……。
「フィオナ。混沌の使者を使って混沌世界への門を開くことはできるか?」
「混沌の使者は混沌世界の住人。召喚魔法を解除し、彼が元の居場所に変える瞬間は混沌世界への門が開いています」
よし。混沌世界を場所にすれば実行できるぞ。
「聞いてくれみんな。ヤツを倒す方法を思い付いた」
血族の者達が俺を見る。
「4本の聖剣。そして、フィオナの召喚魔法を使い、魔神竜となったレオンハルトを封印する——」
◇◇◇
数刻後。魔神竜の体は復元し、レオンハルトの意識も戻った。
「よくも……やってくれたな……!?」
復活と同時に魔神竜がその口を開く。
「許さん! 許さんぞ貴様らああああああ!!」
最大の威力を誇るブレス攻撃でこの草原ごとデモニカ達を消し飛ばそうと魔神竜が構える。
その視線の先にデモニカと血族の者達。しかし。彼ら攻撃を放たれようとしてなお微動だにしなかった。
「なんだ? なぜ攻撃を避けようとしない?」
魔神竜の瞳に彼らが映る。
双剣を持つ獣人。
聖槍を携える女戦士。
聖大剣を構えるハーピー。
そして。
炎を纏う聖剣を向ける、魔王。
「神殺しの武器!? ま、まさか!?」
「そのまさかだレオンハルト。貴様が犯した宿業と共に永遠を彷徨うが良い」
デモニカがフレイブランドを空へ掲げる。
「混沌の使者よ。貴方の世界へと帰りなさい」
銀髪のエルフがそう告げると、不定形の精霊が空を裂き、上空に裂け目が現れる。混沌世界が現れた。
「女神の力を奪った武器達よ。その力を持って魔神竜を封印せよ」
それは、かつて魔神自身が聞いた言葉。
魔王となった今でも、その記憶の中核に残る屈辱の記憶。
それを今、女神エスタを貶めた仇敵へと放った。
裂け目に光が放たれ、強烈な風が巻き起こる。
「や、やめろ!! 私は! 私はあああああああ!?」
魔神竜となったレオンハルトは、その風に抗う事ができず、裂け目へと吸い込まれていく。
「あああ"あアああ"ああああァァァああああ!?」
断末魔を上げながら裂け目へと体を吸い込まれる魔神竜。
その体を飲み込まれ、邪悪な竜となった勇者が封印されていく。
そして、その体全てが裂け目へと吸い込まれた。
その場にいた全員が勝利を確信した次の瞬間—。
「デモニカあああああ!! 貴様だけでも道連れにしてやるぞ!!!」
突然裂け目から巨大な腕が伸び、デモニカへと迫る。
「……っ!?」
封印の儀式により聖剣を持つ者達は身動きが取れない。
召喚魔法も混沌世界へのゲートの役割によって力を使い果たしている。
誰もがデモニカを守れないと感じたその時。
1人の男がデモニカを突き飛ばした。
「ヴィダル!?」
デモニカの瞳にヴィダルが映る。彼女の代わりに魔神竜へと捕らえられた男が。
彼が何かを言おうとした瞬間。
混沌世界への門は閉じられ、魔神竜もろとも煙のように消えてしまった。
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