90 / 108
ヒューメニア戦争編
第90話 蠢く勇者 ーメリーコーブ司祭ジグルドー
しおりを挟む
——海竜人の国、メリーコーブ。
「司祭ジグルド様。ヒューメニアの使者がやって来ました!!」
「分かっておる。いかほどの兵力を率いて来た?」
「それが……人間の部隊だけでは無いのです。獣人、ハーピー、フォンリル族にわ、我が同士まで部隊に加わっております」
「なんだと!? ヤツらの軍は人間しかおらぬはずだ!」
「そ、そのはずですが……」
クソ。ヤツらめ、完全に舐め腐りおって。何が「交渉をしたい」だ。完全に力で脅す気では無いか!
しかし、させぬ。やらせはせぬ。我らにはまだ秘宝がある。一突きで月をも砕くと言われる神殺しの槍『ヴェドグラ』が。我が海竜人種の勇者グランダルが残した伝説の武器。
それさえあれば……勝つことはできぬとも、消して負けん。
側に控える屈強な戦士……ベリウスがその槍を携えていた。
「ヴェドグラは? 使いこなせるようになったのか?」
「はっ。完全に我が物となりました」
「頼むぞ戦士ベリウス。お前の弟ガイウスは失態を犯した挙句殺された。残されたお前は必ずやこのメリーコーブの未来を導くのだ」
「分かっております」
巫女が消え、未だ新たな巫女も生まれぬ我らにはなんとしても生き残るしか道は無い。
「ヒューメニアに取り込まれる訳にはいかぬ。なんとしても……」
◇◇◇
ヒューメニアの代表と言うレオンハルトという男を会談の間へと通し、向かいへと腰をかける。レオンハルトの後には護衛と思われる獣人の兵士が着いていた。
「戦士同席の会談とは、暖かいお出迎えありがとうございます」
「軍を率いて来た貴国には言われたくはない。ヒューメニアのやり方はこのようなものであったのか?」
「現国王アレクセイ様はお若いですから。今までの我が国と同じとは思わないで頂きたい」
「……古代ヒューメニアは全ての国を統一していたと聞く。過去の栄光を求めるつもりか?」
「ふふ。ヒューメニアこそこの世に生まれた原初の国。そして我ら人間こそが原初の種族。他種族を支配する権利を有すると考えております」
「……その発言は我らを愚弄するものだが、意味が分かって言っているのか?」
「はい」
レオンハルトが突然、醜悪な笑みを浮かべる。
「我らに従え下等なトカゲ共。巫女を無くした貴様達にもはや存在価値など無い」
「き、貴様……!? なぜ巫女のことを……!?」
「隠しているつもりだったのか? 血気盛んな貴様達が領土侵犯をピタリと止めた。何も無いと考える方が愚かだろう」
「くっ……!」
ベリウスが声を潜ませ耳打ちして来る。
「司祭様。如何致しましょう?」
「この男を、捕えよ。大臣クラスの役職ならば人質として機能するだろう。この場を乗り切ることが先決だ」
「はっ」
クソ。これで戦争に発展するかもしれぬ。なんとか周辺国に援軍を取り付けねば……。
「答えは決まったのか?」
レオンハルトが声を発した瞬間、ベリウスがヴェドグラを構え技を放った。
「水神激流突!」
技と共に聖槍ヴェドグラから水の刃が放たれる。その巨大な刃がレオンハルトの護衛を捉えた瞬間——。
レオンハルトが小さな声で呟いた。
「武装召喚」
ヤツの手に燃え盛る剣が握られる。
「神殺しの槍ヴェドグラか懐かしい……」
「貴様……何を言って」
レオンハルトが剣を振るうと、放たれていた水の刃が一瞬にして蒸発した。
「なんだと!?」
「この程度の使い手ではグランダルが泣くだろうな」
レオンハルトがテーブルを蹴り飛ばし、こちらへと飛び込んで来る。
「司祭様!!」
ベリウスがレオンハルトの放った一閃を受け止める。しかし、斬撃の名残は消える事なく、ベリウスの体に深い傷を付けた。
「ぐうううっ……そ、その剣は……」
「ふふ。貴殿の物と同じ。『神殺しの剣』フレイブランド。しかし、1つだけ違うのは……」
レオンハルトがベリウスを叩き伏せ、他の戦士達へと技を放つ。
「獄炎舞斬」
「伏せて下さい!!」
ベリウスの叫びに咄嗟に身を屈める。頭上を掠めた炎の刃が戦士達を焼き尽くし、周囲に苦しみもがく声が響き渡った。
「な、なんだこの技は!? こんな物見たことが無いぞ!?」
「ふふふ。当たり前だ小僧。私を誰だと思っている」
笑を浮かべたレオンハルトが私の顔を掴む。
「ぐっ……!?」
「長い付き合いになるだろうから教えておいてやる。私は魔神竜を封印した『勇者の1人』。レオンハルト・ベリル・アドラー。貴様達とは生まれた時代も、知識も、その全てが違う」
「ば、バカな……人間がそのように長く生きることなどできるはずがない」
「それは貴様には関係ない」
レオンハルトが笑みを消し、狂気を帯びた瞳を向ける。
戯言だと思いたい。しかし、完全に使いこなされた神殺しの武器に、見たことのない技……それがレオンハルトの言うことが真実だと告げていた。
「さぁ選べ。従うか。根絶やしか。新たな世界への選別を受け入れろ」
わ、我々はなんとしても生き残らねば……。
「司祭ジグルド様。ヒューメニアの使者がやって来ました!!」
「分かっておる。いかほどの兵力を率いて来た?」
「それが……人間の部隊だけでは無いのです。獣人、ハーピー、フォンリル族にわ、我が同士まで部隊に加わっております」
「なんだと!? ヤツらの軍は人間しかおらぬはずだ!」
「そ、そのはずですが……」
クソ。ヤツらめ、完全に舐め腐りおって。何が「交渉をしたい」だ。完全に力で脅す気では無いか!
しかし、させぬ。やらせはせぬ。我らにはまだ秘宝がある。一突きで月をも砕くと言われる神殺しの槍『ヴェドグラ』が。我が海竜人種の勇者グランダルが残した伝説の武器。
それさえあれば……勝つことはできぬとも、消して負けん。
側に控える屈強な戦士……ベリウスがその槍を携えていた。
「ヴェドグラは? 使いこなせるようになったのか?」
「はっ。完全に我が物となりました」
「頼むぞ戦士ベリウス。お前の弟ガイウスは失態を犯した挙句殺された。残されたお前は必ずやこのメリーコーブの未来を導くのだ」
「分かっております」
巫女が消え、未だ新たな巫女も生まれぬ我らにはなんとしても生き残るしか道は無い。
「ヒューメニアに取り込まれる訳にはいかぬ。なんとしても……」
◇◇◇
ヒューメニアの代表と言うレオンハルトという男を会談の間へと通し、向かいへと腰をかける。レオンハルトの後には護衛と思われる獣人の兵士が着いていた。
「戦士同席の会談とは、暖かいお出迎えありがとうございます」
「軍を率いて来た貴国には言われたくはない。ヒューメニアのやり方はこのようなものであったのか?」
「現国王アレクセイ様はお若いですから。今までの我が国と同じとは思わないで頂きたい」
「……古代ヒューメニアは全ての国を統一していたと聞く。過去の栄光を求めるつもりか?」
「ふふ。ヒューメニアこそこの世に生まれた原初の国。そして我ら人間こそが原初の種族。他種族を支配する権利を有すると考えております」
「……その発言は我らを愚弄するものだが、意味が分かって言っているのか?」
「はい」
レオンハルトが突然、醜悪な笑みを浮かべる。
「我らに従え下等なトカゲ共。巫女を無くした貴様達にもはや存在価値など無い」
「き、貴様……!? なぜ巫女のことを……!?」
「隠しているつもりだったのか? 血気盛んな貴様達が領土侵犯をピタリと止めた。何も無いと考える方が愚かだろう」
「くっ……!」
ベリウスが声を潜ませ耳打ちして来る。
「司祭様。如何致しましょう?」
「この男を、捕えよ。大臣クラスの役職ならば人質として機能するだろう。この場を乗り切ることが先決だ」
「はっ」
クソ。これで戦争に発展するかもしれぬ。なんとか周辺国に援軍を取り付けねば……。
「答えは決まったのか?」
レオンハルトが声を発した瞬間、ベリウスがヴェドグラを構え技を放った。
「水神激流突!」
技と共に聖槍ヴェドグラから水の刃が放たれる。その巨大な刃がレオンハルトの護衛を捉えた瞬間——。
レオンハルトが小さな声で呟いた。
「武装召喚」
ヤツの手に燃え盛る剣が握られる。
「神殺しの槍ヴェドグラか懐かしい……」
「貴様……何を言って」
レオンハルトが剣を振るうと、放たれていた水の刃が一瞬にして蒸発した。
「なんだと!?」
「この程度の使い手ではグランダルが泣くだろうな」
レオンハルトがテーブルを蹴り飛ばし、こちらへと飛び込んで来る。
「司祭様!!」
ベリウスがレオンハルトの放った一閃を受け止める。しかし、斬撃の名残は消える事なく、ベリウスの体に深い傷を付けた。
「ぐうううっ……そ、その剣は……」
「ふふ。貴殿の物と同じ。『神殺しの剣』フレイブランド。しかし、1つだけ違うのは……」
レオンハルトがベリウスを叩き伏せ、他の戦士達へと技を放つ。
「獄炎舞斬」
「伏せて下さい!!」
ベリウスの叫びに咄嗟に身を屈める。頭上を掠めた炎の刃が戦士達を焼き尽くし、周囲に苦しみもがく声が響き渡った。
「な、なんだこの技は!? こんな物見たことが無いぞ!?」
「ふふふ。当たり前だ小僧。私を誰だと思っている」
笑を浮かべたレオンハルトが私の顔を掴む。
「ぐっ……!?」
「長い付き合いになるだろうから教えておいてやる。私は魔神竜を封印した『勇者の1人』。レオンハルト・ベリル・アドラー。貴様達とは生まれた時代も、知識も、その全てが違う」
「ば、バカな……人間がそのように長く生きることなどできるはずがない」
「それは貴様には関係ない」
レオンハルトが笑みを消し、狂気を帯びた瞳を向ける。
戯言だと思いたい。しかし、完全に使いこなされた神殺しの武器に、見たことのない技……それがレオンハルトの言うことが真実だと告げていた。
「さぁ選べ。従うか。根絶やしか。新たな世界への選別を受け入れろ」
わ、我々はなんとしても生き残らねば……。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる