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小編 ゴブリン討伐
第86話 ゴブリン・セイジ ーヴィダルー
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ルナハイムに到着すると、フェンリル族のクシルが駆け寄って来た。
「ヴィダル様! 良くぞおいで下さいました!」
ルナハイムの長を再起不能の傀儡にして以降、クシルを実質的なリーダーとして取り立てた。そのせいか、クシルは俺達血族の者を信奉している節がある。
「跪かなくてもいい。いつも律儀だなクシルは」
「いえ、今回は我らの失態でお呼びしたようなもの……本当に申し訳ございません」
クシルの元へ他のフェンリル族達も集まっていき、皆一様に膝をついた。
「な、何だか申し訳ないですぅ~」
困惑して俺の背中に隠れるザビーネ。そんな彼女を見てクシルは不思議そうな顔をした。
「その両の眼……新たな血族の方ですか?」
「幹部では無いがな。ザビーネ・レムスと言う」
『レムス』の2つ名があることでクシル達から感嘆の声が上がる。どうやら彼らの中で血族の者は相当な強者と捉えられているようだ。
「ザビーネ様! 我らフェンリル族の為にお越し頂き、感謝致します!」
「ふえぇ!? やめて下さい! ザビーネに頭下げないで下さいぃ!」
ザビーネが正座で何度も頭を下げる。その様子を見てクシル達は顔を見合わせた。
「あ、あれ……?」
「こういう女性だ。皆、普通に接してやってくれ」
以前のザビーネからは考えられない反応。精神の書き換えを強くしすぎたか……その割になんと言えば良いのか、馴染んでいるような気もする。
書き換えした割に自然というのか……謎だな。
◇◇◇
ルナハイムのギルドへ入ると、クシルがその中の一角、広いテーブルへと地図を広げた。
「ゴブリン達の出現地点はこの3ヶ所です。出現地点を結ぶとイーヴェの森から現れているとしか考えられないのです」
「イーヴェの森か。あそこは毒素が多い。ゴブリンなど住み着けないはずだが?」
「そのはずです。我らも迂回する地域です。しかし……現れました。何故なのか、どの経路から現れたのか、全く分かりません」
クシルがギルドの依頼書3枚をボードから剥がす。そこにはゴブリン駆除のクエスト依頼とこれまでの被害内容が書かれていた。
「お恥ずかしい話ですが、この3回の襲撃で被害を出してしまったのです。ゴブリン達はとにかく予想外の場所から現れ、連携も取っているものですから……作戦を考えている者がいるとしか……」
「ざ、ザビーネ賢いゴブリンなんて見た事ないんですけどぉ……つ、強くないですよね?」
ザビーネの表情が徐々に青ざめていく。
「ザビーネさんの言う通りです。我々も何故なのか頭を抱えるばかりで……」
「いや、稀にだが知能が高い者が生まれることがある。その名は『ゴブリン・セイジ』……ゴブリンの賢者という意味だ」
「ご、ごごごゴブリン・セイジ!? なんですかそれはぁ!?」
顔を引き攣らせたザビーネがテーブルを叩く。ざわついていたギルド内に彼女の声が響き渡り、冒険者達が一斉にザビーネを見る。
「……ふえぇ~」
視線を一身に受けたことで彼女は顔を真っ赤にして丸くなった。
「と、とにかく……強いんですよね? ザビーネは強い相手と戦うのはちょっと……」
突如現れ、棲家の分からないゴブリン。それを一掃する方法を取るか。
まずはゴブリン・セイジの能力をザビーネに伝えておく必要があるな。
彼女は怯えるかもしれないが彼女の『中の者』に情報共有した方がいい。
「ゴブリン・セイジは味方の統率、攻撃魔法の使用が行える。レベ……いや、強さに比例して扱う作戦の複雑さも変わる」
「む、無理ですぅ……」
「中でも闇属性の魔法を得意とする。高威力の深淵破に気を付けろ。術者によっては即死級の威力を発揮することもある魔法だ」
「即死ぃ!?」
「心配するな。対処法は簡単だ。闇属性魔法はタメの時間が長い。その間に発動を防げばいい」
「ひいィィ!! 死にたない死にたくないぃ!!」
ザビーネは頭を抱えてテーブルに突っ伏していた。
……完全に怯えさせてしまったな。
まぁいい。ヤツらの居場所に辿り着く為にはこの方が都合が良いからな。
「クシル。次の貨物輸送はいつだ?」
「はい。ちょうど明日の朝の便があります。こちらから仕掛けるのですか?」
「そうだ。急ぎの貨物はあるか?」
クシルが貨物リストをパラパラとめくり、あるページで手を止めた。
「エルフェリア行きの物が数件ございます」
「分かった。そちらは予備の馬車で別ルートを進め。俺達は通常の交易ルートの馬車へ乗り込む。」
「え? それだと警備を2つに割かねばなりませんが……」
「俺達の方は2人で大丈夫だ。馬車夫には傀儡のアンデッドを使う。クシル達はそちらの馬車護衛に全力を尽くせ」
「よ、よろしいのですか?」
「問題無い。ゴブリン達の棲家を突き止め壊滅させる」
「ヴィダル様すごい自信ですぅ~」
「何を言っている。お前がやるんだ」
「ふぇ? ザビーネが?」
「そうだ」
「ゴブリンの棲家を見つけて」
「そうだ」
「壊滅させるのですか?」
「そうだ」
「ふ、ふええええぇぇぇ!?」
「ヴィダル様? ザビーネさんが怯えておりますが大丈夫なのでしょうか……」
「問題無い。俺達に任せておいてくれ」
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 誰かぁぁぁぁぁ!?」
その後、飛び回るザビーネをフェンリル族の戦士10名がかりで捕縛。なんとか馬車に乗せることで作戦は決行されることとなった。
「ヴィダル様! 良くぞおいで下さいました!」
ルナハイムの長を再起不能の傀儡にして以降、クシルを実質的なリーダーとして取り立てた。そのせいか、クシルは俺達血族の者を信奉している節がある。
「跪かなくてもいい。いつも律儀だなクシルは」
「いえ、今回は我らの失態でお呼びしたようなもの……本当に申し訳ございません」
クシルの元へ他のフェンリル族達も集まっていき、皆一様に膝をついた。
「な、何だか申し訳ないですぅ~」
困惑して俺の背中に隠れるザビーネ。そんな彼女を見てクシルは不思議そうな顔をした。
「その両の眼……新たな血族の方ですか?」
「幹部では無いがな。ザビーネ・レムスと言う」
『レムス』の2つ名があることでクシル達から感嘆の声が上がる。どうやら彼らの中で血族の者は相当な強者と捉えられているようだ。
「ザビーネ様! 我らフェンリル族の為にお越し頂き、感謝致します!」
「ふえぇ!? やめて下さい! ザビーネに頭下げないで下さいぃ!」
ザビーネが正座で何度も頭を下げる。その様子を見てクシル達は顔を見合わせた。
「あ、あれ……?」
「こういう女性だ。皆、普通に接してやってくれ」
以前のザビーネからは考えられない反応。精神の書き換えを強くしすぎたか……その割になんと言えば良いのか、馴染んでいるような気もする。
書き換えした割に自然というのか……謎だな。
◇◇◇
ルナハイムのギルドへ入ると、クシルがその中の一角、広いテーブルへと地図を広げた。
「ゴブリン達の出現地点はこの3ヶ所です。出現地点を結ぶとイーヴェの森から現れているとしか考えられないのです」
「イーヴェの森か。あそこは毒素が多い。ゴブリンなど住み着けないはずだが?」
「そのはずです。我らも迂回する地域です。しかし……現れました。何故なのか、どの経路から現れたのか、全く分かりません」
クシルがギルドの依頼書3枚をボードから剥がす。そこにはゴブリン駆除のクエスト依頼とこれまでの被害内容が書かれていた。
「お恥ずかしい話ですが、この3回の襲撃で被害を出してしまったのです。ゴブリン達はとにかく予想外の場所から現れ、連携も取っているものですから……作戦を考えている者がいるとしか……」
「ざ、ザビーネ賢いゴブリンなんて見た事ないんですけどぉ……つ、強くないですよね?」
ザビーネの表情が徐々に青ざめていく。
「ザビーネさんの言う通りです。我々も何故なのか頭を抱えるばかりで……」
「いや、稀にだが知能が高い者が生まれることがある。その名は『ゴブリン・セイジ』……ゴブリンの賢者という意味だ」
「ご、ごごごゴブリン・セイジ!? なんですかそれはぁ!?」
顔を引き攣らせたザビーネがテーブルを叩く。ざわついていたギルド内に彼女の声が響き渡り、冒険者達が一斉にザビーネを見る。
「……ふえぇ~」
視線を一身に受けたことで彼女は顔を真っ赤にして丸くなった。
「と、とにかく……強いんですよね? ザビーネは強い相手と戦うのはちょっと……」
突如現れ、棲家の分からないゴブリン。それを一掃する方法を取るか。
まずはゴブリン・セイジの能力をザビーネに伝えておく必要があるな。
彼女は怯えるかもしれないが彼女の『中の者』に情報共有した方がいい。
「ゴブリン・セイジは味方の統率、攻撃魔法の使用が行える。レベ……いや、強さに比例して扱う作戦の複雑さも変わる」
「む、無理ですぅ……」
「中でも闇属性の魔法を得意とする。高威力の深淵破に気を付けろ。術者によっては即死級の威力を発揮することもある魔法だ」
「即死ぃ!?」
「心配するな。対処法は簡単だ。闇属性魔法はタメの時間が長い。その間に発動を防げばいい」
「ひいィィ!! 死にたない死にたくないぃ!!」
ザビーネは頭を抱えてテーブルに突っ伏していた。
……完全に怯えさせてしまったな。
まぁいい。ヤツらの居場所に辿り着く為にはこの方が都合が良いからな。
「クシル。次の貨物輸送はいつだ?」
「はい。ちょうど明日の朝の便があります。こちらから仕掛けるのですか?」
「そうだ。急ぎの貨物はあるか?」
クシルが貨物リストをパラパラとめくり、あるページで手を止めた。
「エルフェリア行きの物が数件ございます」
「分かった。そちらは予備の馬車で別ルートを進め。俺達は通常の交易ルートの馬車へ乗り込む。」
「え? それだと警備を2つに割かねばなりませんが……」
「俺達の方は2人で大丈夫だ。馬車夫には傀儡のアンデッドを使う。クシル達はそちらの馬車護衛に全力を尽くせ」
「よ、よろしいのですか?」
「問題無い。ゴブリン達の棲家を突き止め壊滅させる」
「ヴィダル様すごい自信ですぅ~」
「何を言っている。お前がやるんだ」
「ふぇ? ザビーネが?」
「そうだ」
「ゴブリンの棲家を見つけて」
「そうだ」
「壊滅させるのですか?」
「そうだ」
「ふ、ふええええぇぇぇ!?」
「ヴィダル様? ザビーネさんが怯えておりますが大丈夫なのでしょうか……」
「問題無い。俺達に任せておいてくれ」
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 誰かぁぁぁぁぁ!?」
その後、飛び回るザビーネをフェンリル族の戦士10名がかりで捕縛。なんとか馬車に乗せることで作戦は決行されることとなった。
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