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ハーピオンの略奪者編
第82話 死よりも重い罰 ーヴィダルー
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ハーピオンを後にした俺達は魔王国を経由して、再びホークウッド村へと戻った。
「チビ達!!」
「じいちゃあん!」
バジンガルが幼い孫達をしっかりと抱きしめる。
「お前達……よく無事で……何かされなかったか?」
「ううん。みんな閉じ込められただけだよ」
「そうか……良かった。本当に……」
他の子供達は何も言わずバジンガル達を見つめていた。そんな様子を見て、レオリアが悲しげな顔をする。
「そっか。他の子達は家族が……」
「のうヴィダル。妾達にはできることは無いのか?」
イリアスが俺の袖を掴む。彼女はメリーコーブでの辛い記憶は失っているはずだが、何か感じる所があるのかもしれないな。
「皆聞いてくれ」
子供達とバジンガルが俺を見つめる。
「皆の今後は俺達が支えよう。しかし、恨みや悲しみまで癒してやることはできない。復讐を望むならこの首謀者の女は置いていこう」
捕えていたザビーネを皆の前へ跪かせる。
バジンガルが子供達へと話の趣旨を伝える。しかし、子供達は誰も復讐の道を選ばなかった。
「その女を……殺した所で、誰の家族も帰って来ない。その女の処遇はお前さん達に任せるよ」
「カカカッ。ぬるいこと言ってんじゃ、ねぇ
……ぞ」
虫の息のザビーネが声を上げる。
「殺せよ……こんなのはただの恥晒しだ……」
「お前さんは分かっておらんようだな」
バジンガルがザビーネの顔を覗き込む。
「この子達が優しいんだ……そして強い。お前さんよりもずっとな」
彼は、涙ながらに続けた。
「だがな! ワシはあの子達ほど強くはなれない! 息子を返せ! 嫁を返せ! 妻を返せ! なぜ……なぜ……老いぼれのワシではなく他の家族が……っ!?」
バジンガルが、俺の肩を掴む。
「ヴィダルさん……っ! どうか…どうか……この女に後悔を……! 死よりも重い罰を! どうか……」
脳裏に蘇る。馬車の中で家族のことを話すこの老人の姿が。とても楽しそうで、幸せそうで……それは決して無くしてはいけない物だったと思えた。
「俺がこの女に味合わせる。己の罪の重さをな。だから、貴方は子供達を」
「分かっておる……分かっておるよ……」
「おじさん。後は僕達に任せてね」
バジンガルは、子供達を連れて焼け残った家へと歩いて行った。
「これから大変じゃの。村の再興もせねばいかんし」
「イリアス。デモニカ様への報告後、お前の部隊はこの村の復興を頼む。孤児院のような形になるかと思うが……」
「任せておくのじゃ! 妾があの子達を見守ってやろうぞ!」
胸を張るイリアスは、以前よりも少し大人に見えた。
……。
「さて。ザビーネ」
「……んだよ」
「お前には死よりも重い罰を背負って貰う」
「はぁ? 偽善者かよ」
「いや、言葉のままの意味だ」
懐から小瓶を取り出す。
デモニカの再生の火が入った小瓶を。
「まずは5回ほど死んで貰う」
「テメェ……何言ってやが」
最後まで言わせず、ザビーネの翼へ火を灯す。
「な!?」
彼女は翼を払い、火を消そうとする。
「無駄だ。その火はお前を焼き尽くすまで決して消えはしない」
「クソっ! 消えねぇ!」
ザビーネが火を消そうとのたうち回る。しかし、火は一向に消えず、徐々に全身へと渡っていく。
「あ、あああ"ああ"ああ"あああああ、熱い熱い熱いああぁぁぁ!?」
ザビーネの断末魔の悲鳴が辺りに響く。
火はやがて炎となり、彼女を飲み込む。どれだけもがき苦しもうとも決して弱まることなく焼き尽くした。
そして、消し炭のようになった皮膚がパラパラと崩れ、新たな肉体が現れる。
「はぁ……はぁ……」
肩で息をするザビーネへともう一度火を見せる。
「な、なんだよ!?」
「お前はこれから死を数度体験し、生まれ変わる。そして、俺の精神拘束を持ってさらなる苦痛を味わって貰う」
「やめ、ろ……やめ」
「お前は無抵抗の村の者を殺した。そして、俺はその生き残りの者から復讐を頼まれた。決してやめはしない」
「あ!? ああ"ああ"ぁぁ!?」
ザビーネが炎にもがき苦しむ。息も出来ず、解放されれば再び火を灯される。書き換えが終わるまで終わらない。そんな地獄。死を許されない罰。
甲高い女の声が空へと昇っていく。
ザビーネの悲鳴は日が落ちるまで続いた。
◇◇◇
最後の火が消えた後、ザビーネの瞳を覗き込んだ。
「これが最後の仕上げだ」
血族の眼へと変異したザビーネの瞳を見据え魔法名を告げた。
「精神拘束」
俺の瞳から伸びた鎖は、真っすぐ彼女の瞳へと繋がった。
「う"、ううぅぅぅぅぅ!?」
「ザビーネ。お前へ再生の火によりお前か失ったもの。1つの感情を取り戻させた」
「うぅ……アタシは……ザビーネは……」
「そして、俺の精神拘束によりこれから血族の者からの許しが出るまで全てを恐れるようお前の人格へ命令を与える」
「がぁっ!? ぐ……っ!? い、嫌! やめてぇ!」
「無駄だ。お前はもう、以前のお前ではない」
「いや、いや"ああああぁぁぁ……」
ザビーネが涙を流しながら悶え苦しむ。
強制的に呼び戻された彼女の「罪悪感」により、今までの行い全てが彼女の心を傷付ける刃物となる。
俺の命令により全ての存在へと恐怖を抱く。
鎖が人一倍眩い光を放ち、彼女の瞳へ命令を刻み込んでいく。
これは罰。お前に奪われた者達が望んだ罰。
ハーピオンの女王、ザビーネ。
お前の罪は、俺達が利用する。
「チビ達!!」
「じいちゃあん!」
バジンガルが幼い孫達をしっかりと抱きしめる。
「お前達……よく無事で……何かされなかったか?」
「ううん。みんな閉じ込められただけだよ」
「そうか……良かった。本当に……」
他の子供達は何も言わずバジンガル達を見つめていた。そんな様子を見て、レオリアが悲しげな顔をする。
「そっか。他の子達は家族が……」
「のうヴィダル。妾達にはできることは無いのか?」
イリアスが俺の袖を掴む。彼女はメリーコーブでの辛い記憶は失っているはずだが、何か感じる所があるのかもしれないな。
「皆聞いてくれ」
子供達とバジンガルが俺を見つめる。
「皆の今後は俺達が支えよう。しかし、恨みや悲しみまで癒してやることはできない。復讐を望むならこの首謀者の女は置いていこう」
捕えていたザビーネを皆の前へ跪かせる。
バジンガルが子供達へと話の趣旨を伝える。しかし、子供達は誰も復讐の道を選ばなかった。
「その女を……殺した所で、誰の家族も帰って来ない。その女の処遇はお前さん達に任せるよ」
「カカカッ。ぬるいこと言ってんじゃ、ねぇ
……ぞ」
虫の息のザビーネが声を上げる。
「殺せよ……こんなのはただの恥晒しだ……」
「お前さんは分かっておらんようだな」
バジンガルがザビーネの顔を覗き込む。
「この子達が優しいんだ……そして強い。お前さんよりもずっとな」
彼は、涙ながらに続けた。
「だがな! ワシはあの子達ほど強くはなれない! 息子を返せ! 嫁を返せ! 妻を返せ! なぜ……なぜ……老いぼれのワシではなく他の家族が……っ!?」
バジンガルが、俺の肩を掴む。
「ヴィダルさん……っ! どうか…どうか……この女に後悔を……! 死よりも重い罰を! どうか……」
脳裏に蘇る。馬車の中で家族のことを話すこの老人の姿が。とても楽しそうで、幸せそうで……それは決して無くしてはいけない物だったと思えた。
「俺がこの女に味合わせる。己の罪の重さをな。だから、貴方は子供達を」
「分かっておる……分かっておるよ……」
「おじさん。後は僕達に任せてね」
バジンガルは、子供達を連れて焼け残った家へと歩いて行った。
「これから大変じゃの。村の再興もせねばいかんし」
「イリアス。デモニカ様への報告後、お前の部隊はこの村の復興を頼む。孤児院のような形になるかと思うが……」
「任せておくのじゃ! 妾があの子達を見守ってやろうぞ!」
胸を張るイリアスは、以前よりも少し大人に見えた。
……。
「さて。ザビーネ」
「……んだよ」
「お前には死よりも重い罰を背負って貰う」
「はぁ? 偽善者かよ」
「いや、言葉のままの意味だ」
懐から小瓶を取り出す。
デモニカの再生の火が入った小瓶を。
「まずは5回ほど死んで貰う」
「テメェ……何言ってやが」
最後まで言わせず、ザビーネの翼へ火を灯す。
「な!?」
彼女は翼を払い、火を消そうとする。
「無駄だ。その火はお前を焼き尽くすまで決して消えはしない」
「クソっ! 消えねぇ!」
ザビーネが火を消そうとのたうち回る。しかし、火は一向に消えず、徐々に全身へと渡っていく。
「あ、あああ"ああ"ああ"あああああ、熱い熱い熱いああぁぁぁ!?」
ザビーネの断末魔の悲鳴が辺りに響く。
火はやがて炎となり、彼女を飲み込む。どれだけもがき苦しもうとも決して弱まることなく焼き尽くした。
そして、消し炭のようになった皮膚がパラパラと崩れ、新たな肉体が現れる。
「はぁ……はぁ……」
肩で息をするザビーネへともう一度火を見せる。
「な、なんだよ!?」
「お前はこれから死を数度体験し、生まれ変わる。そして、俺の精神拘束を持ってさらなる苦痛を味わって貰う」
「やめ、ろ……やめ」
「お前は無抵抗の村の者を殺した。そして、俺はその生き残りの者から復讐を頼まれた。決してやめはしない」
「あ!? ああ"ああ"ぁぁ!?」
ザビーネが炎にもがき苦しむ。息も出来ず、解放されれば再び火を灯される。書き換えが終わるまで終わらない。そんな地獄。死を許されない罰。
甲高い女の声が空へと昇っていく。
ザビーネの悲鳴は日が落ちるまで続いた。
◇◇◇
最後の火が消えた後、ザビーネの瞳を覗き込んだ。
「これが最後の仕上げだ」
血族の眼へと変異したザビーネの瞳を見据え魔法名を告げた。
「精神拘束」
俺の瞳から伸びた鎖は、真っすぐ彼女の瞳へと繋がった。
「う"、ううぅぅぅぅぅ!?」
「ザビーネ。お前へ再生の火によりお前か失ったもの。1つの感情を取り戻させた」
「うぅ……アタシは……ザビーネは……」
「そして、俺の精神拘束によりこれから血族の者からの許しが出るまで全てを恐れるようお前の人格へ命令を与える」
「がぁっ!? ぐ……っ!? い、嫌! やめてぇ!」
「無駄だ。お前はもう、以前のお前ではない」
「いや、いや"ああああぁぁぁ……」
ザビーネが涙を流しながら悶え苦しむ。
強制的に呼び戻された彼女の「罪悪感」により、今までの行い全てが彼女の心を傷付ける刃物となる。
俺の命令により全ての存在へと恐怖を抱く。
鎖が人一倍眩い光を放ち、彼女の瞳へ命令を刻み込んでいく。
これは罰。お前に奪われた者達が望んだ罰。
ハーピオンの女王、ザビーネ。
お前の罪は、俺達が利用する。
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