神亡き世界の異世界征服

三丈夕六

文字の大きさ
67 / 109
復活の厄災編

第67話 もう1つの暗躍 ーフィオナー 

しおりを挟む
「おぉ!? 海面を滑ってるようじゃの! 速いぞキュオちゃん!」

「キュオンッ」

 ディープドラゴンの背に乗り、私とイリアス。そしてイリアスの側近3名はハーピオンに向かうことになった。

「なんですかそのキュオちゃんという名前は?」

「レオリアから聞いたのじゃ。キュオンと鳴くからキュオちゃんじゃと」

「……酷いセンスね。これからハーピオンに入るのですから、そのような恥ずかしい名では呼ばぬように」

「キュルルル……」

「キュオちゃん悲しそうなのじゃ」

「ぐ……っ!?」

 私が悪いのか?

 レオリアめ、ヴィダルのテイムしたドラゴンならばもっと崇高な名前を付けるべきでしょう。キュ……キュオリスとか。

 水を切りながら進んで行くとやがて断崖と建造物が合わさった一帯が見えて来た。

「あれがハーピオンかぁ。ところで、わらわ達は何をするのじゃ?」

「貴方は何もしなくていいです。擬態魔法で我らの眼さえ通常の目にしてくれるだけで。後は私が」

「ふぅん。フィオナは随分ヴィダルに信用されとるのじゃなぁ」

「信用? 当たり前です。魔王国で頭脳労働はヴィダルに次いで私の役目なの」

「ふ~ん。で? 何をするのじゃ?」

「……生意気な子供。ヴィダルから頼まれたことは2つ。ハーピー共を遺跡へと向かわせること。もう1つはヒューメニアで人身売買が行われていることを教えるのです」

「人身売買ぃ?」

「えぇ。ハーピオンが歴史上最も嫌う行為。これを利用します」

「よく分からんがフィオナのお手並み拝見と行こうかの~」

 イリアスが座り、ユラユラと足を振る。

「ほら、偉そうなことを言っていないで擬態魔法ディスガイズをかけなさい。貴方と部下達もエルフに擬態するように」

「のじゃ~」

 イリアスが擬態魔法をかけていくと、その姿は一瞬にしてエルフの少女となった。3人の部下達も同様にエルフの姿となり、エルフェリアの使者団の様相となる。

「お主の眼にもかけるのじゃ」

 イリアスが手をかざすと、私の目も以前のものと同じになる。

 ……ヴィダル。私は貴方の期待に応えて見せます。絶対に。



◇◇◇

「ディ、ディープドラゴン……!?」
「襲って来たりしないんだろうな……!?」
「ドラゴンのテイムなんてできるのかよ……」

 門を潜った時からハーピー達が恐れおののく。

 ふふ。ヴィダルの言った通り。ディープドラゴンを連れて来るだけでエルフェリアの権威は何倍も示すことができますね。

 事前に使い魔を送っていたことを伝える。すると程なくして案内のハーピーが現れた。

「どうぞこちらへ」

 案内のハーピーについて石畳みの道を歩いて行く。イリアスがキョロキョロと辺りを見回した。

「ほぉ~ハーピオンの奴らは女は人間に似ておるが男はまんま鳥じゃの」

「我が種族ハーピーには女性しかおりません。家族を構成するのは彼らのような鳥人種のバードマンや人間の男性ですね」

 案内役のハーピーが答えると、イリアスは戸惑ったような顔をした。

「な、なんだか背徳的な感じがするの……」

 イリアスをたしなめながらさらに進む。やがて一際大きな建物へと案内された。

 案内役のハーピーが大きな扉の前で立ち止まる。

「こちらの奥でリイゼル様がお待ちです」

「リイゼル? 女王様に謁見させて頂けると思ったのですが……」

「それはリイゼル様が判断致します。中へ入れるのはお1人のみ。代表の方は中へ」

「しょうがないの。がんばるのじゃぞフィオナ~」

 大きく手を振るイリアスに見送られて部屋へと入る。中には大きなテーブルが1つ。そして、その奥には女の私ですら息を呑むほどの美貌を持つハーピーが座っていた。

 彼女がその翼を指した先へと座る。

「お初にお目にかかる。私の名はリイゼル。一応この国では序列2位に位置している。ディープドラゴンを連れての入国とは、エルフは随分傲慢なのだな」

「いえ、我らの国より貴国を訪ねるには海路の方が都合が良かったものですから」

「ふん。そういうことにしておこう。エルフェリアが我が国へと何用か?」

「女王様へお伝えしたいことがございます」

「まずは言ってみなさい。その上でお伝えするか見定めよう」

 落ち着けフィオナ。ヴィダルの言っていたことを思い出せ。相手の表情を見ながら、こちらのペースへ引き込むように……。

「ナイヤ遺跡をご存知ですか?」

「もちろん知っているが」

「あの中に何が封印されているかも?」

「……我が国の伝承では近づくと災いが起きるということだけは」

「エルフェリアの文献にはこう記されています。あの場所にはいにしえに封印されし魔神竜が封じられていると」

「魔神竜? 初耳だな。それで? それが何か?」

「ヒューメニアがその魔神竜の封印を解こうとしております」

 リイゼルの眉がわずかに動く。

「彼の国がそのようなことをする意味が理解できないな。わざわざそのような危険を犯すことなど」

「こうは考えられませんか? 魔王国が現れたことに動揺したヒューメニアは、古代の竜の力を得ることで魔王国へ対抗しようとしたと」

「……」

 リイゼルが黙る。ここであの「話」を出すか。

「ヒューメニアは隠蔽体質を持つ国。極秘に魔神竜の力を得ようと考えても不思議ではありません」

「なぜそう言い切れる?」

「彼らが人身売買・・・・を行っていることはご存知ですか?」

「何?」

 明らかに嫌悪感を示す顔。やはり彼女達の歴史認識は未だ変わっていないのか。

「疑われるのならば密偵を送り込めばよろしいでしょう? それでハッキリしますから」

「……そこまで自信のある発言か」

「話を戻します。彼らがその力を使って現状解決・・・・をした後に目を向けて下さい」

「つまり、ヒューメニアが魔王国を打破した後は我らの国へ攻め込むと?」

「おっしゃる通りです」

「にわかには信じがたいが……」

「信じるか否かは貴国にお任せ致します」

 悟られないように息を吸う。

「しかし」

 ヴィダルから教えて貰っていた交渉法を使う。「意思決定者ではない者」を動かす為の方法を。

「リイゼル様があるじへと報告せず・・・・、魔神竜がヒューメニアの手へと渡った場合は……どうなるかお分かりですね?」

 リイゼルが顔をしかめる。私の言葉の意味を反芻はんすうしているのだろう。

「私を脅すか」

「いえ、そのようなことは。ただ、御身を案じたまでのこと」

「分かった。その話……私から女王様へ伝えよう」

「聞き届けて頂きありがとうございます」


 ふぅ。良かった。「主に仕える者を動かすにはその判断の重さを突きつけてやれば良い」ヴィダルが教えてくれたおかげだ。

 ディープドラゴンを引き連れることで「竜をテイムできる」という事実を暗にハーピオンへと伝える。その上でのヒューメニアの魔神竜への動き……その情報を知った女王の決断は容易に想像できる。

 ヴィダルは普段こんなことを考えながら人を動かしているのか。


 すごいな。あの人は……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...