ざまぁ担当の男たちが『アホの子』すぎて自滅ばかりするから、何もしてないのに『最凶の悪役令嬢』にされてるんですけど?

フーラー

文字の大きさ
23 / 29
第3章 腕はいいけど思い込みが激しい鍛冶職人、マヌケット

3-2 鉱山の使用許可を口実に、デートに誘うようです

しおりを挟む
「鉱山の立ち入り許可?」


アンジュは屋敷で、外交官のセドナから話を聞いて驚いたような表情を見せた。


「ああ。マヌケットって知ってるか?」
「マヌケットさん? ……確か、ノワールさんの従兄弟でしたっけ?」
「ああ、よく覚えているな」
「よく彼女が自慢していましたので……」
「そういや、アンジュはよくノワールと話をしていたもんな……」

そうアンジュは少し表情を暗くする。

武道大会で勝利して以降、アンジュは「最凶の悪女」として名前が知られるようになった。
また土地をいくらか割譲してもらったこともあり、カイカフルの家の社会的地位も高まっていた。

そのこともあり、社交界に顔を出す場面も増えたアンジュは、必然的にノワールとも顔を合わせる機会が増えていた。


……だが、彼女は顔を合わせるたびに自慢話をしてマウントを取ることが目立った。
その中でも、秀麗な容姿と類まれな鍛冶技術と彫金技術を持つ従兄弟のマヌケットのことは、元婚約者のアホードと並んでよく聞かされていたので、嫌でもその名は覚えていた。


「何でも、大陸では有数の鍛冶職人と話を聞いています……。確か、私のこの指輪もそのマヌケットさんが作ったんですよね?」

そういうと、アンジュはアホードから受け取った指輪を懐から取り出して見せた。
当然だがノワールのために作られた指輪ではサイズが合うわけないので、ペンダントのように首からぶら下げている。



「とても綺麗な細工ですよね? 正直、マヌケットさんには、一度お会いしたいと思っていました」

それを聞いて、少し安心したような表情をセドナは見せる。

「それならよかった。それでさ。あいつがいうにはさ。アンジュのところにある鉱山で取れる鉱石が欲しいってことらしいんだ」
「あれ、そうなんですか?」


アンジュは現在もカイカフルの養女として内政業務を行っている。
当然、自領の生命線でもある鉱山についても情報を集めていたが、そのような話は初耳だった。

セドナも不思議そうにうなづく。


「ああ。……正直、あの鉱山には目新しい鉱物はないよな。普通の銅鉱石しかなかったと記憶しているけど……」
「セドナさん、私の領地のことなのによくご存じですね」
「そりゃ、外交官だからな。鉱山の採掘物なんて大事なこと、忘れるわけにはいかないよ」


そういいながら、セドナは少し考えるような表情を見せたあと、ニヤリと笑う。


「……わかった……そういうことか……」
「え?」
「きっとさ、マヌケットはアンジュのことが気になってるんだよ!」
「えええ? ……そんなこと、あるんでしょうか?」


アンジュはそう驚いた表情を見せた。

元来お気楽な性格のアンジュは恋愛についても奥手だった。
また、容姿も悪くはないが『悪役顔』ということもあり、元の世界でも周りから告白されるようなこともなかったアンジュは、そういわれて顔を赤らめた。


「けどさ、そう考えれば納得するんだよ。多分マヌケットはさ。鉱山の立ち入り許可を口実に、アンジュに会いたいと思ってるんだって思うんだ」
「そ、そうですか……?」
「あいつ、地元じゃ有名なイケメンだからな。それなのに今日まで浮いた噂もない奴だから、面白いかもな」


マヌケットも同様にあまり異性に対して積極的に関わるタイプではない。
そのため、セドナも面白そうに笑って見せる。


「まあ、本当にアンジュの鉱山にある鉱物が目当てって可能性もゼロじゃないけどな。……それで、鉱山への立ち入りはどうする?」
「なるほどね。話は聞いたよ、セドナ」


そういうと、隣の部屋からカイカフルが出てきた。
どうやら今までずっと交渉事を行っていたのか、少し疲れた表情をしている。


「カイカフルさん?」
「あのノワールの従兄弟ってのは気に入らないけど……。マヌケットからは悪い噂は聞かないしね。別にうちの鉱山に入るのは構わないよ。ただし……そうだね、あんたとアンジュの付き添いがあればって条件付きでね」
「俺も付き添うのか?」
「ああ。あんたがついてりゃ、安心だからね」


セドナの付き添いも必要というのは、万一マヌケットがアンジュに良からぬことを企んでいる時のことを考えたのだろう。

中立な立場の外交官がいれば、アンジュに狼藉を働くことも出来ない。
また、セドナは社交的な半面、ある事情から極端なほど他者に性的関心を持たないことも、彼を選んだ理由なのだろう。

セドナもその提案に了承した。


「しょうがないな。それじゃ、早速返事を書いてもらっていいか?」
「お安い御用さ。日程が決まったら、教えてくれるかい? ……最近忙しくってさ。あまり私の方はそっちに関われそうもないけどね」


悪役令嬢アンジュに対して周囲が持つ『幻想』のせいで、周辺の貴族が『ご機嫌伺い』に来る機会が増えている。

これによってカイカフルの領地は急速に力を増しているが、それに伴って、行わなければならない雑務も増えている。

彼女は簡単に『鉱山への立ち入りを許可する』という手紙をしたためるとセドナに手渡す。

「それじゃよろしく」
「ああ、任せてくれ」


そういってセドナは出ていった。


「フフフ、アンジュも恋人が出来るのかねえ……」
「な、か、カイカフルさん! そんなにからかわないでくださいよ!」

実際にはカイカフルも彼とアンジュを引き合わせるのが楽しみなのだろう、そう嬉しそうな表情を見せた。


「アハハ! ……けど、マヌケットの奴、顔も性格も凄くいいって聞くからねえ……。後、彫金の技術も凄いから、収入も悪くないって聞いてるんだよ」
「そうなんですね。じゃあ、やっぱりお付き合いしたほうが良いですか?」


そうアンジュがいうと、カイカフルは少し驚いたような表情を見せる。


「いや、あんたは好きにしてくれて構わないよ。最近は領地も大きくなったし、別に政略結婚にあんたを使わなくても問題なさそうだからね」
「あ、そうなんですね……」
「ま、当日に備えて素敵な洋服を作っとくからさ。……楽しんできなよ?」
「はい、ありがとうございます!」


アンジュは、奥手な性格だが恋愛そのものに興味がないわけではない。
また、マヌケットが『類まれな美貌の持ち主』と聞いたことも大きい。アンジュは少し楽しそうに返事をした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした

タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

処理中です...