ざまぁ担当の男たちが『アホの子』すぎて自滅ばかりするから、何もしてないのに『最凶の悪役令嬢』にされてるんですけど?

フーラー

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第2章 チート級の戦闘力を持つけど、婚約破棄されて国を出る男『アホード』

2-2 チートで最強になっても、飽きる気持ちは分かる

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一方こちらは、ノワールの領地の中央部に位置する城の訓練場。


「うりゃあああ!」
「うわあああ!」


一人の青年が、雄たけびとともに剣を振りぬくと、周囲にいた兵士たちが勢いよく吹き飛ばされた。


「次、来い!」
「ああ、いくぞ!」


そういって次々に襲ってくる兵士たちに対して、その男は軽々と斬り伏せていく。

「いっててて……」
「アホードさん、マジで強いっすね……」


……無論練習用の剣なので兵士たちは大きなケガはない。
兜越しでもダメージは大きいのだろう、頭を抑えながら兵士はそう答える。


「あはは! そうかな……。まあ、君たちが弱すぎるだけだと思うけどね」
「だろうな……。やっぱり転生者は違うな」
「そういわれると傷つくな。僕は君たちよりずっと努力してきただけだからね」
「まったくだな。……俺たちも頑張んねえと……」


アホードと言われた、この生意気な男は、オロロッカと同様『転生者』だ。

ただしオロロッカと異なるのは、アホードはこの世界のゲームをやりこんでおり、原作知識を十分に携えていたことだ。

彼はまず、この世界で転生するなり『効率的な能力アップ』の方法を幼少期から試していた。
そのため、現在この大陸では、彼の右に出る剣士はいないほどの実力者にまでなっている。


その後もアホードはしばらく兵士たちに『稽古をつける』という名目で弄んだあと、退屈そうにあくびをして剣を納めた。


「はあ、まあこんなものかな。君たちは弱いんだからさ、もう少し頑張って修行しておきなよ」
「くそ……次は勝ってやるからな、アホード……」


彼は平民の出身ながら今の『近衛兵』としての地位を剣才で勝ち取ったことを誇りに思っていた。

……と同時に、自分が『努力を重ねて今の地位を築いた凡人』と思い込んでいる。
実際には、


・平民でありながらも、兵士として成り上がれる出世コースのある世界
・自分を現在の年まで飢えることなく十分な栄養を与えてくれた両親
・事実上人生2週目という精神年齢の高さによる有利
・何より原作知識を用いた『効率的な能力アップの方法』

など、環境に恵まれた結果でしかないのだが。


「それじゃ、僕はこれで帰るよ。後片付けは宜しくね」
「はい……くそ、アホード……いつか追い抜いてやるからな!」
「だよな! よし、俺たちも負けらんねえ! やるぞ!」
「おう! いつか負かして、びっくりさせてやろうな、あいつのこと!」


そういいながらも、兵士たちは追加の特訓メニューを自らに課した。

……この世界の男性は基本的に頭が悪い。
だがその分、まっすぐな性格をしているものが多いのが特徴だ。

そのため、アホードのように嫌味な性格でも嫌われないのも、彼にとって恵まれた環境なのだが、それに本人は気づいていなかった。





「はあ……退屈だな……」


アホードは自分に用意された個室に戻ったあと退屈そうにため息をつく。

そもそも、チート能力など持っても楽しいのは最初だけだ。
周りが自分よりも圧倒的に弱いキャラばかりだった場合、そんな相手を蹂躙してもつまらないのだろう。


「強くなりすぎたな、本当に……」

彼の能力はすでに『本作のゲームにおけるラスボスを倒せるレベル』にまでなっていた。
そのため、どんな相手と戦っても歯ごたえを感じないくらいだった。


「けど、勉強はしたくないし、しても意味ないからなあ……」


また、彼はこの世界の男性の御多分の漏れず、頭が悪い。
そのため勉強は好きではないうえ、そもそも平民である彼がどんなに努力しても国政には関われない。


「もっと強い相手を探すのかなあ……けど……なあ……」


彼がこの世界に来て一番楽しかったのは、手ごわい敵と戦うことだった。
自分の持つあらゆる能力や魔法を駆使して、相手を倒す。そんな毎日を過ごしていた頃が一番楽しかった。

だが、今ではレベルが上がりすぎて、どんな敵でも相手にならないため、今の彼にはただの作業でしかなかった。

それでも国を出ずに留まっていたのは、勿論理由がある。
しばらくベッドでゴロゴロしていると、突然ドアが開いた。


「おい、アホード!」
「え? ……あ、セドナじゃん」


外交官のセドナは、アホードとも親友である。久しぶりに彼にあえて、少し嬉しそうな表情を見せる。


「どうしたんだ、今日は?」
「久しぶりにお前の顔が見たくてな。……それと、ノワールの奴にお前を呼んで来いって言われたんだよ」


アホードは、現在ではその剣の腕を見込まれてノワールと婚約関係にある。
その言葉を聴いて、アホードは跳ねるように飛び起きた。


「うそ、ノワールが来たの!? やったあ、すぐに行くよ!」
「あはは、お前も相変わらずだな。それじゃ、俺はこれで帰るよ」
「ああ!」


アホードはセドナに挨拶をする時間も惜しいとばかりに、階段を駆け降りていった。



「ノワール! 久しぶり! 来てくれて超うれしいよ!」
「ええ……。久しく顔を出していなかったからね、アホード」


冷静な表情で伝えるノワールに対して、アホードは満面の笑みで出迎えた。

彼は『戦乙女』のような強いタイプの女性が好みであり、ノワールのことはまさにストライクだった。

彼が国を出なかったのは、彼女と婚約できたからでもある。
アホードはノワールに出会うたびに嬉しそうに笑う。


「それで、今日はどうしたの、ノワールは?」
「ああ、ちょっと頼みたいことがあるの……」
「頼みたいこと?」


「そうだ。剣の天才であるあなたにしか頼めないことよ?」


「天才、か……フフフ、そ、そりゃそうだよね! なんでもいってよ! ノワールのためなら、何でもやるから!」


『天才』と言われて気をよくしたノワールは、ニコニコと笑いながら髪をかきあげた。
ノワールはそんなアホードに呆れながら尋ねる。


「お前も、アンジュという小娘のことは知っている?」
「え? うん、最近この世界に来た転移者のことだよね?」
「そう。……あいつを一度、叩き潰す必要があると思うのよ。それで今度あいつをぶちのめしてほしいの」


だが、アホードはその発言に難色を示す。

「え、でも……兵士でもない女の子を傷つけるのは、良くないよ……」


だが、そんな様子を見て、ノワールは笑みを浮かべる。


「気持ちは分かる。……だが、奴は転移者。……恐るべきチート能力を持っているとしたら?」
「う……」


自分と同じ『原作知識』を持つ強敵と戦える。
そのことに、アホードは魅力に感じた。そして、ダメ押しとばかりににやりと笑ってノワールは呟く。


「……よし、こうしましょ。この戦いに、もしも勝利した場合……」
「場合?」


ごくり、と唾を飲むアホード。
そんな彼に、ノワールは耳元でささやく。


「あなたとデートしてあげる。……それと、ほっぺたにキスもしてあげる!」



「うおおおおおおおお!」

それを聴いて、大声で叫ぶアホード。


……彼は、転移前は男子校に通っていたこともあり、女性に対して免疫がない。
加えてそもそもが奥手であり、オロロッカのように『奴隷少女』を買いたいという考えは、発想自体出てこなかったのだ。

そのため、彼はノワールに完全に心を奪われている。
ノワールにそういわれて顔を真っ赤にしながらも叫ぶ。


「わかったよ、ノワール! その仕事、是非やらせて! お願い!」
「そういってくれると思ったわ。さすがは我が婚約者だ。誇りに思うよ?」


ノワールは作り笑顔を見せながら、彼にそう笑って見せる。


「よっし! じゃあ今からまた訓練を開始するから! 楽しみにしててね!」
「ええ、頼んだからね。私の愛しい婚約者さん?」


彼女のお世辞にまんまと載せられたアホードは、そういって訓練場に戻っていった。



……彼は本章の最後で、アンジュとの戦いに負けたことで婚約破棄をされ、この国を出ていく運命なのだが。
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