可愛くなった妹に追いつくための、お兄ちゃんのイケメン化計画

フーラー

文字の大きさ
上 下
3 / 4

妹の学費を稼ぐために働く兄を妹は嫌うのか?

しおりを挟む
「スバル、ずいぶん嬉しそうじゃんか?」
「ハハハ、マヒロには分かるか」

それから翌週、仕事帰りにスバルはマヒロから呼び止められた。

「まあ、今日は給料日だしな。なにか欲しいものでもあるのか?」
「え? あ、そう言うわけじゃないんだけどさ」
「じゃあどうしてそんなに楽しそうなんだ? ……あ、貯金が目標額に達したとかか?」
「お、さすがマヒロ、よくわかったな! ミツキが大学に進学するための費用が目標額になったんだよ。これだけあれば、ミツキに奨学金借りさせないで行かせることが出来ると思ってな」
「へえ……。お前、本当に偉いな」
「別に、俺が好きでやってることだから、別にすごくはねえよ」
「じゃあさ、折角だし今日は一杯奢ってやろうか? こないだ素敵なバーを見つけたから行ってみたくてさ」
「……ああ、悪い! ミツキの夕食、今日まだ作ってないからさ。早く帰んないといけないんだ」
「あ、そうか? ……ところで妹とは最近どうなんだ?」
「ああ、そうだ。……それなんだけどさ、聞いてくれよ!」


そう言うと、スバルは悲しそうな表情でつぶやいた。

「あれから眉毛も整えたしさ、見た目もよくなったろ、俺?」
「ああ、写真でも見せてもらったけど、すげー変わったよな、お前」
「だろ? なのに、ミツキは相変わらず全然褒めてくれないんだよなあ……」
「へえ……」
「最近は試合だけじゃなくて授業参観とかも来ちゃダメ、保護者会も大事な奴以外は来ないでって言われて……」
「うーん……お前、何したんだ? 本当にミツキに嫌われてるな……」
「そうなんだよなあ……。やっぱり、俺みたいな低学歴の男が学校にかかわるのは、恥ずかしいとかなのかな……」
「そんな嫌な妹だったら、見捨ててうちの寮にでもはいりゃ良いじゃんか。なんならうちのアパートに泊めてやろうか?」
「……いや、もう少しだけ頑張ってみるよ。……とりあえず見た目だけでもかっこよくしておこうと思うんだ。他に直すところってあるか?」
「え? ……まあ、あるにはあるけど……」
「なんだよ?」
「……ぶっちゃけ、お前の普段着ってずっと同じもの着てるだろ?」
「え……まあな」

普段は作業着を着ているため、あまり周囲から指摘されることが無い。
その為、スバルは少し意外そうな表情を見せた。

「ひょっとして、普段出かけるときも、その普段着で出かけてるのか?」
「……ああ、そうだよ」
「じゃあ、それは直した方が良いよな。服は……そうだな、今度一緒に買いに行かねえか? お前、センス悪そうだし」
「うっせーよ、バーカ。……けど、確かにお前がついてってくれた方が良いな?」
「だろ? ま、ばっちり見繕ってやるよ。お礼は今度飯おごってくれたらいいから」
「さっきと言ってること、逆じゃねえか……。まあいいや、じゃあちょうど明日は週末だしバイトも休みだから、その日でどうだ?」
「勿論構わねえよ。じゃあ約束な!」

そう言うと、スバルはミツキに親し気な笑みを向け、帰途に就いた。



その翌日の夜。

スバルは洋服の入った紙袋を見つめながら、嬉しそうに鍋をかきまぜていた。

「へへへ、良い服買えたな、しかも思ったより安かったし……」

マヒロが選んでくれた洋服はスバルにとってもセンスが良いと感じるものであった。
実際に店員からも『お似合いです!』と言われていた。もちろんそのことがリップサービスであることは分かっているが、スバルにとっては嬉しいものであった。

「はやくミツキに見せたいとこだけどな……」

鼻歌を歌いながらミツキのための夕食を準備するスバル。
そしてしばらくすると、玄関のドアが開く音が聞こえた。

「ただいま、お兄ちゃん……」
「ああ、おかえり、ミツキ……」

その日は県大会の決勝戦だった。
だが、スバルはその口ぶりからミツキが試合に敗北したことを感じ取った。

「……お疲れ様、ミツキ。頑張ったんだな」
「……うっさいよ、お兄ちゃん」
「お風呂沸いてるから、入って来いよ。……それと今日はビーフシチューとチーズパンだから、一緒に食おう、な?」
「うん……」

手製のデミグラスソースを用いたこのビーフシチューはミツキの大好物だ。
勝っても負けても最大限の労いになるようにと考えてスバルが前から用意していたものである。
そう言うと、ミツキは荷物を部屋に置きに行った。

(この服を見せるのは、別の日にしようか……)

そう思いながら、スバルは自室に置いた新しい服を思い出しながら思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

処理中です...